原油の自主減産を継続するサウジアラビアの「苦しい事情」

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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が8月25日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。原油の自主減産を続けるサウジアラビアについて解説した。

原油の自主減産を継続するサウジアラビアの「苦しい事情」

政府専用機で来日したサウジアラビア王国のムハンマド・ビン・サルマン副皇太子=2016年9月1日午前、羽田空港 写真提供:産経新聞社

サウジアラビア、原油の自主減産を10月も継続する可能性

飯田)サウジアラビアが原油の自主減産を10月も継続する可能性が出てきました。

宮家)サウジアラビアも困っているのでしょうね。私が外務省に入ったころ、サウジの人口は約600万人だったのです。それがいまは3000万人を超えている。他方、サウジの原油生産量は、1日当たり1050万バレルくらいのままです。1200万バレル程度が最大ですが。

飯田)原油の生産量は。

宮家)実質的価値で言えば値段はそれほど大きく変わっているわけではないので、人口が増えれば一人当たりの所得は減ってしまいます。それでも金持ちだからまだ大丈夫なのですが。

これまでは「高すぎず、安すぎず」だったサウジアラビアの戦略 ~いまは「高め」にしようとしている

宮家)サウジアラビアの原油は世界一レベルの埋蔵量を誇ると言われています。しかし、あまり値段が高すぎると代替エネルギー開発が進み、もう石油はいらなくなってしまいます。

飯田)高いから。

宮家)いままでのサウジアラビアの戦略としては、あり余る埋蔵量の価値を最大化し、燃料として売り続けたい。売り上げ高全体、すなわち油価と埋蔵量を掛けたもの、を最大化するためには、値段は高すぎず、安すぎずの「そこそこ」がいちばんいいわけです。

飯田)高すぎず、安すぎず。

宮家)しかし、いまのやり方は間違いなく油価を高めにしようとしています。なぜかと言うと、昔のように少ない人口ではなく、今は人が増えている。イエメンで戦争もしているので、そこでもお金が掛かります。「脱石油の流れのなかで、サウジアラビアという王国を維持しなければならない」という強い使命感が、いまの皇太子にあることだけは事実です。

サウジアラビアのやり方に同調しないロシア ~産油国は必ずしも一枚岩ではない

宮家)そうは言ってもエネルギー価格、特に原油価格は水物です。産出量を減らせば値段が上がる時代もあるかも知れないけれど、いまロシアは必ずしもサウジのやり方に同調していません。だから今サウジはとても困っているのではないでしょうか。

飯田)ロシア産の原油もいろいろなところに……。

宮家)売っていますし、ブラックマーケットがありますからね。

飯田)それによって価格が下押しされているという話もあります。

宮家)ますますサウジは困るので、そうならないように何とか自分で減らしているのです。でも、前回のOPECプラス会合のときにはサウジが減産しようとしたけれど、ロシアはそれに乗らなかったと記憶しています。彼らは必ずしも一枚岩ではないのです。

飯田)産油国も。

宮家)その意味では要注意ですね。うまくいくかどうか……。苦しいサウジの状況は今後も続くのかも知れません。

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