東京大学先端科学技術研究センター専任講師の小泉悠が8月31日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。レギュラーガソリンの店頭価格が統計開始以降の最高値を更新したガソリン価格について解説した。
ガソリン価格が最高値を更新
経済産業省によると、レギュラーガソリンの全国平均小売価格(8月28日時点)は1リットル当たり185.6円と、1990年以降で最高値を更新した。一方、岸田総理は9月末までとなっている燃料価格の負担軽減策をめぐり、ガソリンの小売価格がリッター175円程度に抑えられるよう、補助金を拡充する方針を明らかにした。
飯田)原油の取引価格もある程度は高止まりしていますが、これはロシアの財政を潤してしまうのではないですか?
G7の経済措置などの影響で悪化するロシア財政 ~ガソリン価格が高騰しても「原油バブルの夢再び」とはなっていない
小泉)ただ、ご存知の通り、去年(2022年)の12月にロシア産原油に対する価格キャップ制がG7によって導入されています。
飯田)上限価格措置。
小泉)ですから、国際価格がどれだけ上がっても、基本的にロシアから出てくるウラル原油に関しては、一定以上の値段では買わないという方針になっています。これもいろいろな制裁措置のなかの1つで、「どれだけ効くのか」と見られていたのですが、少なくともロシア財政はこの影響でかなり悪化しています。
飯田)効いている。
小泉)一時期、ロシア財政は税収の半分以上がエネルギー資源由来でした。いまは4割以下ぐらいまで下がったと思いますが、依然として大きな収入源なので、価格が上がらないのはなかなか厳しいと思います。
購買力平価では世界第5位のロシア
小泉)本当であれば尻馬に乗って、2000年代のような原油バブルの夢を再び見たかったのだと思いますが、それができていない。ただ一応、購買力平価で見た場合のロシアのGDPは相対的に上がっていて、今年(2023年)の購買力平価では世界5位になったのですね。
飯田)そうなのですか?
小泉)これは世銀の推定なので、ロシアの我田引水ではありません。どういうメカニズムかはわかりませんが、おそらく他国との相対的な順位の問題なのだと思います。あとは、それでも原油が中国やインドにたくさん売れていることもあると思います。
2023年の第2四半期には、経済成長が再びプラスに回復したロシア ~制裁に音を上げて戦争を止めることはない
小泉)ものすごく儲かっているわけではありませんが、一応、現在までロシア経済はもってしまっている。特に今年の第2四半期には、ロシアの経済成長がまたプラスに戻ったのです。
飯田)プラスに。
小泉)この先ロシア経済がどうなっていくかは、エコノミストではないのでわかりませんが、そう簡単に制裁で音を上げて戦争を止めるわけでもなさそうな感じはしますね。
飯田)経済制裁は「効き方が読めない」と当時も言われましたが、やはりその部分はあるのですね。
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