外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が8月25日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。福島第一原発の処理水放出について解説した。
原発の処理水、8月24日から海への放出を開始
福島第一原子力発電所にたまる処理水について、東京電力は政府の方針に基づき、基準を下回る濃度に薄めた上で、8月24日午後1時ごろに放出を始めた。放出完了には30年程度という長期間が見込まれる。
飯田)初回は17日間で7800トンあまりが放出されます。
宮家)コロナ禍の前に福島第一原発を見学する機会がありましたが、当時も既にタンクがたくさんあって、「そろそろ限界なのです」という話を伺いました。しかし、話を伺えば伺うほど、トリチウムは基本的に自然界にもあるものですから、取り除けないのは仕方ないことなのです。
処理水放出はいつかはやらなければならないこと ~政治家が政治判断で行う
宮家)ALPS処理水は、いずれ出さなければいけない。科学的根拠もあるし、各国みんなやっていることですから、科学的に反対できる人はいないと思います。
飯田)そうですね。
宮家)もちろん心配する人もいますし、風評被害が出るのは大変なことです。いくら「放水はどうですか?」と聞かれても、賛成できる人は少ないでしょう。特に漁業関係の方は心配ですからね。
飯田)風評被害が出た場合は。
宮家)いつかはやらなければいけないけれど、政治家が政治判断で行う必要がある。そして菅総理(当時)が決断され、岸田総理の時代にその時期がきたということです。
態度を変え、理解を示す韓国
宮家)言い方が難しいのですが、私はこの処理水を飲めばいいのではないかと思っています。実際に「飲ませて欲しい」と頼んだのだけれど、いろいろな不純物があるからダメだと言われました。
飯田)不純物があるから。
宮家)問題は「トリチウムがいかに安全か」ということですから、「不純物を取り除き、トリチウムを含んだものを飲ませてください」と言ったのですが、これも難しくて未だに飲めていません。でも、私は飲んでも平気だと思っています。
飯田)自然界にあるものだから。
宮家)韓国ですら態度を変えたのですよ。尹大統領は定期的なモニタリングを行うべしと言っていますが、我々もそう思っているわけです。日本の方がはるかに影響は大きいわけですから。
政治的譲歩が欲しいため日本に言い掛かりをつける中国 ~モニタリングをして常にトリチウム濃度を公表するべき
宮家)しかし、そこで中国が言い掛かりをつけてくる。科学的に見れば、中国の原発から出ている処理水の方がトリチウム濃度は高いぐらいです。「それにも関わらず、なぜ中国は科学的根拠もなく、あのような言い掛かりをつけてくるのか」と誰かに聞かれました。
飯田)なぜ中国はあのようなことを言うのか。
宮家)日本もそうですけれど、日中関係は現在のままでいいわけがないので、対話しなければいけない。しかし、彼らは前提条件なしに対話する気はないわけです。いまは日米韓がタッグを組んでいるので、中国は日本にもう少し譲歩させたい。政治的譲歩が欲しいから言い掛かりをつけ、「日本が降りるのだったら少し黙っていてやろうか」と言っているのです。
飯田)政治的譲歩が欲しいために。
宮家)そういう状況にまでなってきている。しかし、こんなことをやっていたら逆効果になりますよ。
飯田)逆効果に。
宮家)中国の人から輸入禁止にするを言われたので、私は「よく考えてごらん。そんなことをやれば、日本はますますアメリカや韓国と一緒になるから逆効果だよ」と話しました。
飯田)中国人の方に。
宮家)そう言ったら黙っていましたけれど、黙っても、禁輸はやめられないでしょう。墓穴を掘ることをわかった上で中国は文句を言ってくる。科学的根拠に基づき、IAEAが「安全だ」と言っているわけです。我々も漁業関係者の方々が言うように、とにかく透明性を持って、しっかりとモニタリングを行い、常に濃度を公表していく。それに尽きると思います。
中国が日本産水産物の全面禁輸を発表 ~これが日中関係にとっていいことなのか
飯田)中国政府は日本産水産物を全面禁輸すると発表しました。それに対して、岸田総理は即時撤廃を求めています。漁家の方々にとっては大変なことですよね。
宮家)正当な抗議であれば私も「なるほど」と考えますけれど、中国の批判は言い掛かりに近いものです。処理水の問題を過度に政治化することが、本当に日中関係にとっていいことなのか、彼らには考えてもらいたいですね。
中国の狙いは日米韓を分断すること
飯田)水産物を主要な産業にしている自治体はたくさんあります。「X」(旧ツイッター)などでも「いまこそ、ふるさと納税で日本が(福島を)支えましょう」と書かれています。
宮家)中国が政治的な動きとして何を狙っているかと言うと、日本国内に言い掛かりをつけ、日米韓を分断しようとしているのです。そうならないためにも、我々が自分たちで支えられる部分は支える必要があると思います。
飯田)かつて台湾がパイナップルを禁輸されて困ったときは、日本や世界が支えました。
宮家)泣き寝入りはいけません。理不尽なことを言ってくる人がいたら、戦えるときは戦わないといけないのです。
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