経済アナリストのジョセフ・クラフトが9月5日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。鈴木財務大臣が閣僚級会議を通じて取り組む考えを示したインボイス制度について解説した。
インボイス制度をめぐり、岸田総理大臣が鈴木財務大臣に「事業者目線で執行」するよう指示
岸田総理大臣は9月4日、鈴木財務大臣と消費税のインボイス制度をめぐり協議した。岸田総理は10月からの制度開始を前に、事業者に寄り添った対応を求めた。これに対し鈴木財務大臣は新たに設ける閣僚級会議などを通じて、政府全体で取り組んでいく考えを示した。
飯田)インボイス制度は、消費税の税額を正確に伝えるための制度とされており、中小の事業者も対象となります。
クラフト)「事業者目線で執行する」ということは、おそらく何らかの免除措置を考えるのだと思います。いまはまだマイナンバーへの不安、混乱が続いているなかで、さらにインボイス制度で不満が高まり、そこへガソリン価格の高騰など、いろいろな問題が入ってくると大変です。政権としては、それなりに対応する必要があります。
インボイス制度は10月から ~この時点での協議は「場当たり的な対応」と言われても仕方ない
クラフト)インボイス制度について、この時点で協議するというのは、よく言えば「耳を傾ける総理」、悪く言えば後手後手の「場当たり的な対応」という感じですよね。
飯田)10月から開始されます。
クラフト)売り上げが1000万円以下の小規模事業者(免税事業者)から税を取っていく形です。制度としては本来あるべき姿に持っていこうとしている一方で、これまで払っていなかった人からすれば「増税ですよね」という印象で、反発が高まっています。「この落としどころをどうするのか」という方向での閣僚会議ではないでしょうか。
インボイスを発行しなければ、取り引きを見直されるケースも
飯田)1000万円以下の事業者は免税事業者になるのですが、インボイスの発行が認められないので、彼らが払う分の税金は発注者がまとめて払う形になるのですね。
クラフト)そうですね。
飯田)そうなると発注が滞るのではないかなど、さまざま言われています。
いまからでは何らかの救済措置を設けるくらいしか対応できない
クラフト)小規模事業者にとっては人為的にも事務負担が増えることから、反発が出ています。本当は半年くらい前にやるべき話ですが、土壇場で行うとなると、おそらく何らかの救済措置を設けるしかないのだと思います。
飯田)インボイス制度が義務化されるのは2023年10月からです。「これまでに何とかできなかったのか?」と思いますよね。
クラフト)「どうしていまさらなのか?」と考えると、やはりインフレですよね。ガソリン価格など、さまざまなものの価格が高騰するなかで、家計から事業者、特に小規模事業者の負担が増しています。そのタイミングでインボイス制度が始まることになり、不満が募ったのではないでしょうか。
何らかの措置をいまから考える
飯田)政治的な部分で動いているということも考えられますよね。
クラフト)こういうことがあると、この最中に解散ということもできるのかなと思います。マイナンバーやインボイスを落ち着かせてから、政局がらみのことを考えていくのではないでしょうか。
飯田)ここから先、電子帳簿保存法の改正などがあると、事務負担が増えるものが重なってきますよね。
クラフト)しかも、小規模事業者へ全部しわ寄せがいくので、負担が集中してしまい、「不公平ではないか」という意見が出やすいと思います。
飯田)小規模事業者へ集中して。
クラフト)制度自体は間違っていないのですが、執行のやり方が唐突だったかも知れません。準備が足りなかったのではないでしょうか。少し先送りになるのか、免除措置を取るのか、何らかの措置をいまから考えるのではないかと思います。
行政と政治の違いが要因か
飯田)免除措置なり、これから予算的な措置になっていくのでしょうか?
クラフト)そうでしょうね。ここから徴収したところで、どのくらいの税収になるのかはわかりませんが、永田町では政治的に「そこまでリスクを取ってやるほどのものか」ということが議論されているのではないかと思います。
飯田)リスクを取ってまでやることかどうか。
クラフト)逆に霞が関では、「きちんと税収を取らないといけない」という議論で動いている。行政と政治で違いがあり、それが少しギクシャクしている要因かなと推測しますね。
飯田)霞が関では益税で「得しているではないか」と、それこそ消費税のシステムが始まったときから言われています。もう30年~40年の話ですよね。いまさらという感じが、霞が関ではあるのかも知れませんが。
クラフト)長く続けすぎましたよね。急に是正しようとしても、やはり負担に感じてしまいますので、どう治めていくのかが見ものです。
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