戦略科学者の中川コージが9月15日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。9月13日に行われた露朝首脳会談について解説した。
ロシアとの首脳会談、北朝鮮が成果を強調
北朝鮮は9月13日に開かれた金正恩総書記とロシアのプーチン大統領との首脳会談について、一夜明けた14日、「満足な合意と見解の一致をみた」として成果を強調した。なお両国の軍事協力の拡大の行方に関係国の関心が集まっているが、具体的な合意内容は明らかにしていない。
飯田)露朝首脳会談が行われました。東アジア全体の情勢にも影響を与えるのではないかと言われていますが、どうご覧になりますか?
中川)「当然、売買している」というなかでトップ同士が商談し、「大きいディールでまとめにいく」というのは自然な流れだと思います。特にこのニュース自体に驚くことはありません。
「中国とロシア」、「中国と北朝鮮」という2つのラインで考えていた中国は変数が増える ~外交的なコストが上がる中国
中川)ただ、この両国が関係を深めると、中国にとっては不確定要素が増えることになります。これまでは「中国とロシア」、「中国と北朝鮮」という別々のラインで考えていたのですが、両国がつながるとなると、中国からすれば変数が増えますよね。
飯田)そうですね。
中川)片方に関わったことが、別のパートナーにも影響するようになるので、中国としては計算が増えて大変になる気がします。
飯田)計算することが増える。
中川)日本側から見ると、変数が増えて中国側のコストが上がるのはいいことだと思います。
中国にとって北朝鮮とロシアは「餌付けされた小型狂犬」と「餌付けされた大型狂犬」のようなもの ~2匹が組み合わさると面倒
飯田)この2ヵ国は、両方とも中国と仲がいいし、3ヵ国でつるんでいるようなイメージもあります。露朝が仲よくなれば中国側に有利なのではと思いましたが、そんなこともないのですか?
中川)中国にとって、北朝鮮とロシアは「餌付けされた小型狂犬」と「餌付けされた大型狂犬」のようなものです。ウクライナ侵攻でロシアの外交力が弱まったという意味では、餌付けされた大型が中型になったようなものだと思います。
飯田)「餌付けされた小型狂犬」と「餌付けされた中型狂犬」。
中川)いずれにしても中国としては、いろいろな意味で「経済的に自分たちが餌を与える立場だ」ということです。でも、狂犬なのでよく嚙みついてくるのです。中国からすれば、それぞれ別の檻で飼っているならいいけれど、2匹が組み合わさるとちょっと面倒ですよね。
飯田)仲よくなって一緒になると。
中川)両方に嚙みつかれると面倒なところがあるので、そういう意味でも、両方とも狂犬なのですよ。
表面上は「強い絆」と言っても、お互いを信じてはいない
中川)表面上は「鉄の絆が」とか「赤い同盟が」などと言いますが、それは表面上だけで、両方ともまったく信じていないわけです。
飯田)お互いに信用していないのですか?
中川)よく噛んでくるし、北朝鮮がサイバーアタックを行う場合も、中国に偽装するわけです。中国としては「何をしているのだ?」という感じではないでしょうか。
飯田)「勝手にやるのはいいけれど、俺の名前を使うなよ」と。
中川)そういう感じですね。勝手にロケットを撃ってしまうし。
飯田)ロケットについても、こちらから見ると完全に連動しているように思えますが、そうではないのですね。
中川)表面上は鉄の絆を謳いながら、下では蹴り合っているのです。とは言っても、経済力が高まったので横並びの関係ではなく、あくまでも餌付けの関係であり、中国の方が上です。
飯田)昨今では。
中川)狂犬性のある2つの国に徒党を組まれると、中国としては変数が増えてしまう。そういう意味では、やりづらいと思います。
北朝鮮と中国、ロシアと中国の連動に若干のズレも
中川)北に対しては、共産党内の中央対外連絡部(中連部)という組織が基本的に対応し、それ以外では外交部がオフィシャルのラインを使います。ロシアに対してはオフィシャルのラインになります。
飯田)外交部のラインですね。
中川)一応、共産国ではないので。北に関しては中連部が比較的仲よくやっていたので、その辺りの権限は若干、ずれるところもあります。もちろん連動は取れていますし、両方が外交部、中連部と関係はあるけれど、原則的にはそういう形があるので、中国としては足元が揃わない事態も出てくると思います。
露朝を離間する工作はコストパフォーマンスも悪く、考えていない
飯田)今回、北朝鮮にロシアがミサイル技術などを渡すというような話が出ていますが、中国としては、それを「コントロールしたいけれど、できない」ということですか?
中川)もともとできない国同士でしたが、さらに揃ったので、よりできないのだと思います。
飯田)ここを離間させたり、手を突っ込んだりはしないのですか?
中川)北とロシアを、ということですか?
飯田)そうですね。
中川)離間工作は手間が掛かるわけです。利害があってこそ近付いているので、離間させるには、別のもので代替するなどの誘導が必要になります。
飯田)露朝を離間させるためには。
中川)例えば、彼らは日米の離間工作をします。「アメリカの軍事基地が日本にあることは、日本側の負担になっている」というように、アメリカへの反米意識を使って離間させようとしますが、そういう他のインセンティブを持ってこないとならない。要は「そこはいい状況ではないだろう」という状況を持ってこないといけないわけです。
飯田)離間させるためには。
中川)北とロシアに関しては、中国には離間させるための餌がないのですよね。相当コストが掛かることなので、簡単にはできないし、やってもメリットが多くない。コストパフォーマンス的にも、いま離間は考えていないと思います。
いまの朝鮮半島情勢を維持したい中国
飯田)朝鮮半島情勢をめぐって、北は露朝首脳会談の間にも弾道ミサイルを発射しています。中国は朝鮮半島全体をどうハンドリングしようとしているのですか?
中川)北と韓国の関係は、韓国側の政権によって「親北になったり、そうではなくなったり」というような現在の状態が、ある意味では中国にとってちょうどいいわけです。
飯田)現状が。
中川)この状態を継続させたい。だからこそ狂犬の北が嚙みついてきても、とりあえず民主主義、資本主義、「米帝」の防波堤として成り立っているところがあるので、飼っているのです。
飯田)防波堤として。
中川)いまはそういう状況ですが、韓国のファクターによって半島情勢が変わっていく。日米韓の結束などの影響を北が受けて、「軟化するのか、硬化するのか」というようなことがあるので、現状が変更されると、どちらにせよ中国にとってはよくないのだと思います。
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