ジャーナリストの須田慎一郎が9月22日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。米ホワイトハウスで行われたゼレンスキー大統領とバイデン大統領の首脳会談について解説した。
ウクライナ・ゼレンスキー大統領が米バイデン大統領と会談
ワシントンを訪問中のウクライナのゼレンスキー大統領は9月21日、ホワイトハウスでアメリカのバイデン大統領と首脳会談を行った。会談のなかでバイデン氏は、「ウクライナの主権と領土の一体性を尊重した永続的な平和を支持する」などと述べ、支援を続ける考えを強調した。
飯田)ゼレンスキー氏は支援への感謝を伝えた上で、「ウクライナと世界の利益につながる議論をしたい」と述べました。
戦争が長引いてしまい、各国の関心が薄れてきていることに危機感を持つウクライナ
須田)ウクライナサイドは、アメリカだけでなく、支援の継続に関して相当な危機感を持っているのだと思います。20日の国連演説を見ていても、聞いている聴衆が少なく、さほど熱気もありませんでした。
飯田)そうでしたね。
須田)「支援疲れ」というよりも、戦争が長引いてしまったことで日常になってしまい、関心が薄れてきた。それにウクライナサイドは相当、危機感を持っているのだと思います。
自国産穀物の輸出をめぐってポーランドなど近隣の東欧諸国との対立を深めるウクライナ
飯田)国連総会でのゼレンスキー氏の演説でも、「ロシアはあらゆるものを兵器として使ってくる」というような指摘がありました。ただ、勇み足もあって、穀物の輸出に関してポーランドが拒否していることを批判したら、ポーランド側が怒ってしまうなど、足並みの乱れも出ていますね。
須田)それに関して、ウクライナは世界貿易機関(WTO)に提訴する動きを見せています。
「北朝鮮と連携」という最大の「禁じ手」を行ったロシア ~相当追い込まれている証拠
須田)ロシアも相当追い詰められています。やはり北朝鮮と同盟関係を結ぶというのは、最大の禁じ手だと思います。場合によっては国連制裁を呼び込むことになりかねない。
飯田)そうですよね。
須田)そういう状況を見て、これまでロシアと連携する姿勢を示してきた南アフリカなどが、少しずつではあるけれど距離を置き始めている状況もあります。
飯田)ロシアが北朝鮮に近付くことで。
須田)両国にとって、ある意味で正念場となっています。この戦争は二国間だけで行っているわけではなく、いかに支援してくれる国を増やしていくかという、ある種の陣取り合戦になっていますから。
アメリカがウクライナへの武器支援に前のめりにならない2つの理由
飯田)アメリカ側の支援に関しても、ウクライナが求めていた地対地ミサイル「ATACMS」は今回、含まれていなかったと報じられています。
須田)要求されるものをすべて与えてしまうと、場合によっては第三次世界大戦の引き金を引きかねないという状況ですから、装備品に関しては極めて慎重になっていると思います。
飯田)第三次世界大戦のきっかけになりかねない。
須田)前のめりにならないもう1つの理由は、既に「し始めた」と言っても過言ではないと思いますが、米大統領選挙が本格化することもあります。バイデン大統領の再選戦略ですが、通常であれば現職大統領は強いけれど、高齢という最大のウィークポイントを抱えているだけに、 必ずしも「バイデン大統領盤石」というわけではありません。そういう意味でも、大統領選挙との兼ね合いも考えざるを得ないのだと思います。
飯田)ここから先は、アメリカの政治全体が内向きになっていくタイミングですか?
須田)現状、もう内向きになっているのではないでしょうか。
裁判費用が膨大に掛かり資金不足が懸念されるトランプ前大統領 ~中間層の動向がキャスティングボートを握る米大統領選
飯田)大統領選に向けて、全米自動車労組がストを打ちました。バイデンさんにとって、風向きが変わっている感じがありますか?
須田)民主党とバイデンさんにとって、労組は足元ですから、そこが反旗を翻してきたのは痛いだろうと思います。
飯田)対してトランプさんの方は、共和党の候補者討論会を欠席し、その代わりにデトロイトで組合員の人たちの前で演説するという話も出ています。
須田)ただ、トランプさんも起訴をいくつも受けるような状況になってきて、スーパーチューズデーの直前には、出廷を要請されかねない状況でもあります。
飯田)来年(2024年)の3月辺りですね。
須田)裁判費用も膨大に掛かっています。訴えられているのはトランプ大統領だけではなく、議会襲撃事件に関しては、関連している弁護士なども多く訴えられていますから、それをどこまで支えるのか……その辺りについては切り捨ての方向に動いているようで、資金が足りないのではないかと見られています。
飯田)そうなのですか。頻繁に寄付を募っていますが。
須田)その影響で「本当に戦えるのか」という問題もある。とは言っても、共和党のなかでは1強ですから、トランプ前大統領が大統領選挙に出てくることは間違いありません。
飯田)5割以上の支持があるとも言われています。
須田)しかし、アメリカには共和党支持でも民主党支持でもない中間層がいます。その動向がキャスティングボートを握っているのです。バイデン大統領も決め手に欠けているという状況のなかで、大混乱の大統領選挙になると思います。
高齢のバイデン大統領に訴追を抱えるトランプ前大統領 ~混沌とした状況が世界情勢にどのような影響を与えるのか
飯田)大統領選挙のたびに大混乱だと言われています。景気はいいのに、アメリカは大丈夫なのでしょうか?
須田)バイデン大統領が本当に出馬するのか、という問題にもなりかねない状況です。
飯田)健康問題やご高齢であることの関係ですか?
須田)本来であれば、それを補佐するカマラ・ハリス氏が出るのでしょうが、ほとんど機能していませんし、人気もありません。
飯田)輪をかけて人気がないという話がありますね。
須田)コンビでは史上最弱の候補になりかねないですね。とは言っても、トランプ前大統領は訴追というウィークポイントを抱えていますので、予想がつかない。まさしく混沌とした状況です。
飯田)どちらも。
須田)その不安定さが、世界情勢にどういう影響を与えるのか……。もちろんウクライナ情勢も含めて、大統領選挙の混沌がどんな影響を与えるのか、見極めなければいけないと思います。
ロシアも中国もそれぞれウィークポイントを抱えていて多弱の状況
飯田)大統領選挙が混沌としていると、工作するには好都合ではないですか?
須田)ただ、そうは言ってもロシアはロシア、中国は中国のウィークポイントを抱えているので、多弱の状況になっている感じがします。
飯田)ロシアはウクライナとの戦争があるし、中国では不動産バブルがはじけて経済が低迷し、手一杯かも知れない。
須田)その上、強攻策を打った結果、東南アジア諸国連合(ASEAN)を敵に回してしまうような状況になっていますから。
飯田)新しい地図を出したことですか?
須田)特にフィリピンは、前政権のドゥテルテ時代は親中でしたが、マルコス政権では一転して親米になり、新たな基地の提供も行われています。中国もこれまでのように強気ではいられないでしょう。
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