ジャーナリストの須田慎一郎が9月22日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。日本銀行の金融政策決定会合について解説した。
日銀の金融政策決定会合
日本銀行の金融政策決定会合が、9月21日から2日間の日程で行われた。日銀の植田和男総裁は22日、金融政策決定会合後の記者会見で「粘り強く金融緩和を続ける必要がある」と述べた。
飯田)「政策正常化」という言葉がワードとして使われますけれども、「いままでは異常なのか?」という話ですよね。
須田)緊急避難策のようなものなのでしょうが、「出口戦略」と読み替えてもいいかも知れません。
長期金利が上昇したからと言って、必ずしも短期金利が上がってくるという状況ではない
飯田)足元では、10年物国債の金利が0.7%を超えました。前前回の会合でしたか、新しく「1%までは許容する」と打ち出しましたが、それを市場が試しているのでしょうか?
須田)どこまでが上限なのか。「1%まで」と言っているわけですから、「1%ギリギリまでいくのかどうか」というところだと思います。
飯田)結果的には、引き締めに近いのではないかという話になってしまいますね。
須田)一方では植田日銀総裁の持論として、本来の役割を考えると、どちらかと言えば日銀は短期金融の番人ですよね。
飯田)そうですね。
須田)やはり日銀の役割としては、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)になるのかどうかわかりませんが、日銀の政策で「長期金利を左右することはできない」という持論があります。これが上昇したからと言って、必ずしも短期金利が上がるという状況ではないと思います。
飯田)長短の金利に差が出てくるのですか?
須田)だからイールドカーブが立ち上がってくるという状況になるのでしょうけれど。
コロナ禍での「ゼロゼロ融資」を返すことができるのか ~回復しつつある企業業績が頭打ちになる可能性も
須田)一方で心配しなくてはならないのは、コロナ感染拡大を受け、コロナ禍のときにゼロ金利政策として、民間の金融機関においてゼロ金利での貸し出しを行いました。
飯田)無利子・無担保ですね。
須田)この返済がいよいよ始まるのです。しかし、企業の業績が回復したり、利益が蓄積されているわけではありませんから、果たして返済できるのかどうか……。
飯田)ゼロ金利で借りた金額を返すことができるのか。
須田)しかも金利が上昇していくことになると、かなり厳しい。ようやく回復しつつある企業業績が頭打ちになってしまう可能性もあります。経済全体を考ると、非常に難しい舵取りになるでしょう。
借り換えの問題もあり、景気自体をよくしていく必要がある ~日銀だけの力では出口戦略を迎えることはできない
飯田)返済期限がきてしまい、いきなり返済できない状態になると、借り換えを行う企業も多いと思います。借り換えのときは当然、金利がつく。しかし、この状況だと金利が思ったより高くなるかも知れません。
須田)そうですね。企業業績によっては、借り換え自体がスムーズに行えるのかどうかという問題もあります。
飯田)「貸しますけれど、本当に返せますか?」ということになってしまう。
須田)そう考えると、やはり景気自体をよくしなければなりません。日銀だけの力では、出口戦略を迎えられないのではないでしょうか。
財政政策として景気そのものにバックアップ体制を取り、企業業績も後押しする状況をつくり出さなくてはならない
須田)財政政策として、景気そのものにバックアップ体制を取り、企業業績も後押しする状況をつくり出さないとなりません。企業業績と言っても大企業ではなく、特に中小零細企業や小規模事業者に対する配慮が必要になると思います。
飯田)大企業を中心に、製造業などは輸出も好調ですし、空前の利益が出ています。その利益を下請けや関連企業への支払いに回せるかどうか。内部留保がかなり貯まっているという話も前々から言われていますけれど。
須田)なかには機械メーカーなどを中心に、下請けや協力企業に対し、別枠で利益配分しようという企業もないわけではありません。ただ、その辺りを意図的にしっかりやっている企業もそれほど多くはないのです。
飯田)意図的に行っている企業は。
須田)大企業の業績が回復しても、中小零細企業の業績回復は、まだ少し先なのかなと思います。しっかりと部品単価や手間賃・工賃を上げたり、取引単価を上げていかないと、業績は上昇しないでしょうから。
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