ジャーナリストの須田慎一郎が10月23日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。半導体大手のキオクシアホールディングスと米ウエスタンデジタルとの経営統合について解説した。
半導体大手キオクシア、米ウエスタンデジタルとの経営統合に向け最終調整
半導体大手キオクシアホールディングスとアメリカの半導体メーカー・ウエスタンデジタル(WD)との経営統合の交渉で、三井住友銀行など3つのメガバンクと日本政策投資銀行が、計1兆9000億円の融資を確約したことがわかった。交渉は大詰めを迎えており、10月中の基本合意を目指している。
飯田)キオクシアは旧東芝メモリで、半導体の大手企業です。
三井住友銀行などが1兆9000億円前後の資金拠出
須田)単純な民間企業の経営判断というより、背景には国策も大きく影響していると思います。加えて、半導体分野に関しては言うまでもなく、経済安全保障、米中の対立などがあり、それを受けた国策があと押ししたということが色濃く見えています。
飯田)国策として。
須田)経営統合に関して言うと、キオクシアの抱えていた「2兆円近くの債務をどうするか」がポイントだったのですが、そこは三井住友銀行など、「継続して資金を出す」というところが出てきて、一気に進んだのだと思います。どんな分野でもそうですが、半導体事業には巨大な装置産業という側面が強くあり、新製品の生産ラインをつくる巨大な先行投資が必要になります。それを回収しつつ、次の投資に振り向けていかないと、どんどん遅れていってしまうので、やはり資金力が勝負になってくるわけです。規模が大きければ大きいほど、投資に向けてお金が出てくるわけですから、競争力を持つことになると思います。
アメリカの政府調達の分野では今後、「中国企業は関わっていない」という「認証」が必要に
飯田)統合が実現すれば、韓国の大手サムスン電子と肩を並べる規模になると言われていますが、特許などの部分はどうなのでしょうか? アメリカに抜かれてしまったりしないものですか?
須田)そこがポイントなのですが、フラッシュメモリの分野は開発をやっていますので、ポイントはやはり「生産体制が組めるのかどうか」というところです。サムスンと肩を並べると言っても、サムスンと対立関係になるわけではありません。「半導体については、日米韓で安定的に生産しましょう」というような流れなのです。これからキーワードとして出てくるのは「認証」という言葉です。
飯田)認証。
須田)これが何かと言うと、「我々がつくっている半導体に関しては安全です」ということです。もう少し踏み込むと、例えば「中国のものを使っていません。中国企業も関係していません。従って情報漏洩やハッキングのリスクはありません」と、自らの半導体が安全であることを証明する。「認証」と言うのですが、それがどうしても必要になってくるのです。
飯田)今後は。
須田)これを得ることが今後、アメリカの政府調達の分野では絶対的に必要になってくる。政府調達で必要になれば、アメリカの民間企業に対する提供でも必要になります。そのためには、完全に自分たちでつくるやり方が必要になるのです。
ハッキングなどの問題が起きたときは、認証した企業が全責任を負う
飯田)つくっていくプロセスも全部明らかにして「安全です」と言わないと、認証が取れないことになりますか?
須田)加えて、万が一問題が起きたときは、製造メーカーが全責任を負うのです。例えばハッキングにあったとしても、ハッキングした側に損害賠償を求めるのではなく、認証した企業に対して賠償責任を負わせる形になりますから、その辺りについてはしっかりしたものをつくらないといけません。
飯田)生産体制も第三国に出すというよりは、日本やアメリカでつくることになりますか?
須田)もちろんです。生産工場も含めて。
新たな雇用を生み出している半導体関連企業 ~観光業への人手不足の影響も
飯田)もし新しい設備投資がされるとなると、日本国内で雇用を生む可能性も大きいですか?
須田)熊本にある台湾積体電路製造(TSMC)の工場や、北海道の半導体工場などは……。
飯田)ラピダス。
須田)相当な雇用を生んでいて、むしろ人手不足になっています。それらの産業に対して、「どれだけ人手を出していくことができるのか」が今後、焦点の1つになると思います。
飯田)専門知識が必要になりますものね。九州では教育にも影響が出ていて、大学院大学をつくったり、高専を増やすなど、いろいろな形で影響があるようです。
須田)そこに留まることなく、生産管理はかなりオートマティックにされているので、それほど専門知識がなくてもいいのです。鹿児島でホテル勤務していた人がTSMCに転職するようなケースも出ているので、今度は観光業に対する影響が出てくるかも知れない。
人手不足によって、コロナ明けにも関わらずすべての部屋が空けられなかった鹿児島の「城山ホテル」
須田)「人材の流動性をどう確保していくのか」は悩ましいところです。
飯田)TSMCに行った方が給料が高いのであれば、TSMCに行くという人は当然、出てきます。
須田)特にコロナ禍で就業時間が減り、非正規雇用の人たちが大きく影響を受けたため、安定的な職場を求めて人材が流出する。鹿児島には有名な「城山ホテル鹿児島」がありますが、コロナが明けて観光客が戻ってきたときに、人手不足ですべての部屋が空けられなかったという状況があります。
飯田)そうなのですか?
須田)それくらい影響が出てきているのです。
番組情報
忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。