「つなぎ予算」が切れたあとアメリカはウクライナ支援を続けるのか 米下院議長にジョンソン議員選出

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慶應義塾大学教授で国際政治学者の細谷雄一が10月26日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。米議会の下院議長に選出されたマイク・ジョンソン議員について解説した。

「つなぎ予算」が切れたあとアメリカはウクライナ支援を続けるのか 米下院議長にジョンソン議員選出

※画像はイメージです

アメリカ議会、下院議長にマイク・ジョンソン議員を選出

約3週間不在が続いた米下院の新議長に共和党のマイク・ジョンソン議員が選出された。10月3日にケビン・マッカーシー議長が解任されて以降、共和党が選出した候補は4人目となる。

飯田)ようやく決まりましたね。

細谷)結局は共和党内で分裂しているなかでの妥協案で、「これ以上の空白を避ける」ということで合意したのだろうと思います。

2020年の大統領選でトランプ氏を支持

飯田)マッカーシーさんが解任されたのも、つなぎ予算をつくったけれど、ウクライナに対する支援などで共和党内で不満があった。この先はそちらの方に引っ張られることになるのでしょうか?

細谷)もともと、つなぎ予算は11月半ばまでで、それに反対してマッカーシー議長が引きずり降ろされたわけです。代わって選出されたマイク・ジョンソン議員はトランプ氏に近い、いわゆる「ディナイヤー」と呼ばれる、大統領選挙の結果を認めないという過激グループだったわけです。

つなぎ予算が切れたあと、アメリカがウクライナにどのような姿勢を示すのか

細谷)そういった意味では、来年(2024年)の大統領選挙に向けても、非常に不安が多い議事運営になります。そもそも下院議長は、大統領の継承順位が副大統領に次ぐ2位であり、下院の議事進行に対しても大きな権限を持っています。その議長がトランプ前大統領に近い立場ということで、今後の共和党内では分裂が重いものになると思います。

飯田)共和党の分裂が。

細谷)もう1つ、トランプ前大統領の周辺の人たちは、ウクライナ支援を続けることに反対の立場です。11月半ばにつなぎ予算が切れたあと、アメリカがどんな姿勢を示すかは、ウクライナ戦争の結果に大きな影響をもたらします。

ロシアは大統領選でバイデン大統領が負けるように選挙介入してくる

飯田)11月半ばということはAPECと重なりますが、外交にも影響はありますか?

細谷)バイデン政権は強くウクライナを支持する姿勢ですから、ロシアは年が明けると、バイデン大統領が負けるように選挙介入してくるでしょう。言い換えたら、もしも共和党候補がトランプ氏になれば、支持の方向で大規模なネットでの選挙介入をしてくると思います。

飯田)ロシアが。

細谷)一方、下院議長はトランプ前大統領に近い立場なので、つなぎ予算にはもともと反対の姿勢です。そう考えると、ウクライナのゼレンスキー大統領は今回の人事を不安に感じていると思います。

野心を持って、トランプ氏に寄る人と「次の政権では協力しない」ことを表明する元側近たち

飯田)他方、大統領選挙の結果を「認める、認めない」でトランプさんの陣営に入った人のなかには、司法取引を行って罪を認める人たちが何人か出てきています。仲間割れしているのでしょうか?

細谷)トランプ支持者たちも有罪にはなりたくないわけです。その一方で、今回の大統領選においては、共和党内のトランプ支持が40%以上であり、「トランプ氏が勝つのではないか」と考え、かなりの関係者が集まっていると思います。

飯田)野心を持つ人が。

細谷)「政権入りしたい、ポストが欲しい」と思う人もいるでしょうし、逆に自分が有罪になるのを避けるため、司法取引に応じる人もいるでしょう。もともとトランプ氏を支えていた、大統領補佐官であったマクマスター氏や、国防長官だったマティス氏など理性的な関係者たちは、「次の政権では協力しない」という立場を表明しています。

飯田)そうなのですね。

細谷)トランプ政権は、多くの人たちが懸念していましたが、特に外交・防衛政策ではよい成果をたくさん残したと思います。しかし、トランプ2.0、今回はどうでしょうか。外交・安保のプロが離れていったことが不安材料です。

ベストに近い人選 ~米大使に山田重夫氏、中国大使に金杉憲治氏

飯田)そんななかで、これはアメリカの大統領選挙を見ながら、ということになるのかも知れませんが、日本の駐ワシントン大使も含め、18人の大使人事が閣議で了承されました。アメリカの大使は山田さんに代わり、北京の駐在大使も垂さんから金杉さんに代わります。トランプ前大統領の時代は、佐々江さんがパイプづくりに尽力したということも報道されていますが。

細谷)これから駐米大使は極めて重要な役割になるでしょう。山田さんは政府担当の外務審議官で、現在の岸田政権を支える中軸にいらっしゃった方です。外務審議官はすべての外交案件に関係しますから、即戦力になります。しかも岸田総理とのパイプも強く、ウクライナにも同行されていました。

飯田)そうでしたね。

細谷)アメリカで岸田総理の意向を忠実に反映した形で、しかも、もともとアメリカに公使として駐在されていました。米政権の中枢の方々ともうまく接触できるだろうと思います。

飯田)次の政権とも。

細谷)難しいのは中国大使です。約7年ぶりのチャイナスクール出身ではない中国大使ですが、金杉さんは安倍政権の後半に、アジア大洋州局長として中国との関係を安定的にする上で、中国の幹部たちと調整してきた方です。中国側の人たちにも信頼感があると思います。重要な対米関係、対中関係に関しては、ベストに近い形の人選だったと思います。

ロシア大使には武藤顕氏

飯田)他に大使人事の注目点はありますか?

細谷)やはりロシアですね。

飯田)新任の大使ですね。

細谷)これから着任する武藤大使はロシアスクールですが、外務省のなかで最も重要なポストの1つである総合外交政策局の総務課長という、将来の次官候補がなるポストに就き、また、国家安全保障局では安全保障の重要なポストを担当しました。ロシアに対しては厳しい立場にいた方です。

飯田)厳しい立場だったのですね。

細谷)安倍政権の後半では、友好関係を重視しましたので、やや政権の方針とは違ったかも知れませんが、逆に言うと、いまロシアとの関係は難しい状態になっている。つまり、ロシアに対して厳しい態度を取らなければいけないということは、政権中枢の考えと符合しているのだと思います。国際社会もそういう潮流ですので、活躍されると思います。

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