政策アナリストの石川和男が12月9日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送Podcast番組「石川和男のエネルギーリテラシー」に出演。政府のGX(グリーン・トランスフォーメーション)実行会議の委員を務める、国際環境経済研究所理事でU3イノベーションズ共同代表の竹内純子と再生可能エネルギーのあり方について議論した。
世界的な脱炭素社会や、SDGs持続可能な社会実現に向けた取り組みの中で普及が進む再生可能エネルギー。日本では国の政策の後押しもあって、大規模な太陽光発電所や風力発電所などの設置がこの10年で急速に進んだ。自然エネルギーを使い、環境にやさしいイメージがある一方、設置場所によって環境破壊や自然災害を誘発しているとして、開発を規制する動きも出ている。
番組ではまず再生可能エネルギーのコストについて議論。竹内は「再生可能エネルギーの電気はまだコストが高いので、高い値段で買い取ってあげましょうというのがFIT(フィット: 再生可能エネルギーの固定価格買取制度)という制度。その買取価格について、福島第一原発事故の後、“再エネを入れるためだったらコストの話なんてしている場合じゃない”みたいな、若干ヒステリックな状況の中で、買取価格が極めて高い値段で設定された」と指摘。当時のドイツやイタリアにおける太陽光発電のコストの約2倍の価格設定だったと語った。いずれ大きな問題になると指摘をしたが、当時は「再エネの悪口を言うのか!」と言われ「冷静な議論ができなかった」と振り返った。
そのうえで、高額な買取制度が「再エネバブル」を生み、急速に普及が進んだ結果、設置場所によっては森林破壊や自然災害を誘発する事態を招き、新たな設置を規制する動きにつながっていると指摘。竹内は「再エネにとっては、ものすごく不幸なこと。エネルギーはバブルを起こしてはいけない」と警鐘を鳴らした。
一方、今ではエアコンの稼働が少ない初夏や秋口など電力消費量の少ない時期の昼間は、地域によって「全電力の約5割~6割を再生可能エネルギーでまかなっている」(竹内)と明かしたうえで、問題は「そのくらい大きなプレーヤーが、夜になるとぱったりいなくなる。あるいは、雪が降るとぱったりと発電しなくなる」ことだと言及。石川は「再生可能エネルギーの普及に伴い、新設や更新が遅れがちな火力発電所などの安定電源の確保も重要だ」と述べた。
また、日本が「再エネ後進国だ」という報道が多いことについて石川は「日本の太陽光発電は中国、アメリカについで世界第3位の設備容量(パネルの数)。そこから作られる電気の量も世界第3位。国土面積あたりの太陽光パネルの設置容量はぶっちぎりのナンバー1」だと否定。政府のGX実行会議に出席する竹内も、国際的な再生可能エネルギー普及指標を挙げ、G7の中でも日本の再エネ普及は進んでいるとした。
石川は「エネルギーのリテラシーを上げるひとつのポイントは、公式統計をリサーチすること」と呼びかけ、公的な機関が発表する客観的データや統計に接することの重要性を説いた。
番組情報
政策アナリストの石川和男が、暮らしに欠かせないエネルギー問題の様々な“見方”を提起。
日ごろ、テレビや新聞などで報じられることが少ない専門家ならではの視点やデータを駆使して、歪んだ情報を正し、あなたのリテラシー向上をお手伝いします。
※2024年4月6日(土)までは『石川和男のエネルギーリテラシー』