米軍が親イラン勢力へ報復攻撃 専門家が語る「最悪のシナリオ」とは

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明海大学教授で日本国際問題研究所主任研究員の小谷哲男氏が2月5日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。アメリカ軍による親イラン武装組織の拠点への空爆について解説した。

2日、米東部デラウェア州のドーバー空軍基地で、ヨルダンで犠牲となった米兵の遺体を出迎えるバイデン大統領(中央)(米東部デラウェア州)=2024年2月2日 EPA=時事 写真提供:時事通信

2日、米東部デラウェア州のドーバー空軍基地で、ヨルダンで犠牲となった米兵の遺体を出迎えるバイデン大統領(中央)(米東部デラウェア州)=2024年2月2日 EPA=時事 写真提供:時事通信

アメリカ軍がイランの支援を受ける武装組織の拠点を空爆

アメリカ軍は2月2日、イラクとシリアの領内にある親イラン武装組織の拠点を空爆したと発表した。1月28日にヨルダンの米軍基地が攻撃され、アメリカ兵3人が殺害されたことへの報復措置としており、中東地域の緊張が高まっている。

新行)アメリカが報復に踏み切りましたが、この状況をどうご覧になりますか?

小谷)2023年10月にイスラエルがハマスに対する殲滅作戦を行って以降、イラクやシリアに展開する米軍に対し、170回以上の攻撃が行われています。ですから、抑止を回復させて攻撃を抑えるのが最大の狙いだと思います。特に1月28日の攻撃では米兵3名が亡くなっていますので、「これ以上は米軍の犠牲を出せない」というバイデン政権の意向が働いていると思います。加えて2024年はアメリカ大統領選挙もあります。共和党側がイランあるいはイランの代理勢力への強硬な報復を主張するなか、バイデン政権としてもその声を無視できなかったのでしょう。

ジャーナリスト・須田慎一郎)イラン側も「アメリカとの直接交戦は望んでいない」と聞いていますが、最終的な幕引きのイメージはあるのでしょうか?

小谷)イランもアメリカも、直接的な対決を望んでいないことは間違いありません。ただ、イランが支援している「イラクのイスラム抵抗運動」などのような代理勢力は、やはりアメリカを中東から追い出したいという目的を持っているため、まだまだ散発的な攻撃が続いていく可能性があります。攻撃が激しくなったのは、10月のガザでの戦争が本格化したことも関係するので、ガザ情勢が落ち着かない限り、中東で安定が保たれるのは難しいと考えています。

代理勢力に対してどこまでイランのコントロールが効いているのか

須田)おそらくイラン側も米兵に死傷者が出たのは想定外だと思いますが、代理勢力に対して、どこまでイランのコントロールが効いているのでしょうか?

小谷)イラン革命防衛隊、そのなかでも対外工作を担当する「コッズ部隊」は、特にシーア派の武装勢力を集めて資金や武器、訓練などを提供しています。ただ、コッズ部隊がこれらの代理勢力を指揮しているわけではないので、ある意味、暴発する可能性はイラン側も懸念していると思います。

須田)あくまでも想定で結構なのですが、最悪のシナリオとしては、どんなことが考えられるでしょうか?

小谷)最悪のシナリオは、やはりアメリカがイラン領内に攻撃せざるを得ない状況に追い込まれ、それにイランが報復する形で、アメリカとイランの本格的な戦争になってしまう。ひいては中東全体、さらに世界全体が大きな影響を受けることだと思います。

既に日本も影響を受けている

須田)日本はイランから原油・天然ガスなどは輸入していませんが、日本への影響はどんなことが考えられますか?

小谷)まずは油の価格など、そういう面で影響を受けると思います。また、既にフーシ派が紅海において船舶への攻撃を行っており、そこが通れないので、物価上昇にもつながっています。間接的ではありますが、日本も既に影響を受けていると言わざるを得ません。

バイデン大統領は共和党からの「及び腰」という批判にどこまで耐えられるか

新行)大統領選への影響があると思いますが、アメリカ国内の世論はどう捉えているのでしょうか?

小谷)アメリカでは1979年以降、「イランは敵」という認識が共有されていますので、イランに対して「弱腰」と思えるような姿勢は、どの政権であっても取ることができないと思います。大統領選挙が進み、トランプ前大統領がイランへの攻撃を主張するなかで、バイデン大統領がどこまで共和党からの「及び腰」という批判に耐えられるかという問題が出てくると思います。

ガザ地区への攻撃を支持したバイデン政権への批判が今後のアメリカの対応にどう影響を与えるか

新行)入植者に関する大統領令も出ましたが、その辺りのバランスはどうご覧になりますか?

小谷)ガザに対する攻撃に関しては、人道的な立場をより重視するようイスラエルに注文をつけていますが、基本的に軍事行動を止めてはいません。一方で西岸地区において、イスラエルの入植者がパレスチナ人に対する攻撃を強めていることも間違いないので、入国禁止にしたり、今回は経済制裁を科す大統領令にまで踏み込みました。アメリカとしてはバランスを取り、2国家解決の道を何とか探っていきたいのでしょう。ガザ地区への侵攻をバイデン政権が支持したままだと、アメリカ国内でもさらにバイデン政権への批判につながると思うので、今後、アメリカの対応にどんな影響を与えるかが注目すべき点です。

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