「カスハラ」が増えた「時代背景」 「カスハラ防止条例」東京都が制定へ

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ジャーナリストの佐々木俊尚が2月21日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。小池都知事が策定検討を表明した「カスタマーハラスメント」防止に関する条例について解説した。

「カスハラ」が増えた「時代背景」 「カスハラ防止条例」東京都が制定へ

※画像はイメージです

東京都が正式に「カスハラはいけない」と言うことが大切

飯田)カスタマーハラスメント(カスハラ)について、東京都の小池知事が全国初の防止条例の検討を表明しました。

佐々木)実際に防止できるかと言うと、おそらく努力目標になるので実行性はそれほどないと思うのですが、「カスハラはいけない」と東京都が言うところに意味があるのでしょうね。昔はカスハラなどなかった気がします。私が子どものころ、当時の国鉄の窓口に行くと、おじさんが面倒くさそうに「切符」とだけ言って「バン」と投げたり。カスハラどころか「担当者ハラスメント」ではないかというくらい酷かったですよね。

長い不況から「お客様は神様」という空気が広がり、サービス過剰に

佐々木)それが平成30年の不況の間に「お客様は神様だ」という空気が広まりました。デフレ時代に何でも安くしようとして、原価を削り、人件費も削り、削るところがなくなって「これ以上安くできない」となってしまった。そのためプラスアルファで、ひたすらお客様に頭をこすりつけんばかりにサービスする、というところにいきついた。ある意味、デフレ時代の遺産ですよね。当時、福井に一貫100円くらいの安い回転寿司店があったのですが、そういう店に行っても、お店の人がひざまずいて注文を取りにくるのですよ。

飯田)ひざまずいて。

佐々木)「100円の寿司でひざまずいて注文を取りに来なくてもいいよ」と思ったことがあるけれど、そういうサービスが横行していたのです。いま、ようやくデフレから脱却し、インフレ基調で賃金もそろそろ上がってきた状況なので、いい加減終わりにして欲しいなと思いますね。

店の人も客も一緒になって「いい雰囲気」を盛り上げることが大事

飯田)確かに、昔の「殿様商売でもオッケー」だったころは、ものをいろいろ買いたいけれど、数が少ないから「売ってやるよ」という感じでした。

佐々木)あの時代に戻りたいかと言うと戻りたくはないのだけれど、もう少しバランスが必要ですよね。茶道の世界には、千利休が言った「主客一体」という言葉があります。

飯田)主客一体。

佐々木)主と客が一体になる。「一座建立」という言い方もしますが、主がもてなすだけではダメで、主のもてなしに対してお客さんもそれに応え、いい気持ちを盛り立てるのです。お客さんと店の人、両方の気持ちがあってようやくいい雰囲気ができるというのが、主客一体の考え方です。これがいまのお店にも必要だと思います。お店に行って気持ちよく食事したり、買い物がしたいのに、他の客が威張っているのを見ると気持ちが悪いではないですか。

飯田)横で見ていると、ちょっとね。

佐々木)逆に、店の人が若いスタッフを怒鳴りつけているのを見ても楽しくない。やはり、いい買い物をするときには店の人も、我々自身も、一緒に気持ちのいい雰囲気を盛り上げる。そういう姿勢が大事だと思います。

クレームにもバランスが必要

飯田)そういう積み重ねが、「このお店はいいお店だな」という評価につながるのですよね。一方、お店に対して「ここは変えた方がいいのではないか」ということを伝えるのは、カスタマーハラスメントとは違う。

佐々木)バランスの問題ですよね。最近も、Googleマップ(の口コミ)に悪口を書きすぎている問題などがあります。クレームを入れるのは大事だけれど、「クレームにも品が欲しい」というところだと思います。

飯田)カスタマーハラスメントと聞くと、リアルなやり取りのなかで「ワーッ」と言う状況が想起されますが、ネット上のカスハラもありますよね。

佐々木)根拠なく悪口を書かれて訂正もできず、困っている店がかなりあります。でも、なかには本当に酷い店もあるので、バランスが難しいと思います。

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