自由民主党・衆議院議員の石原宏高総理大臣補佐官と日本経済新聞コメンテーターの秋田浩之が2月13日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。選挙集会でのトランプ前大統領の発言について解説した。
アメリカのトランプ前大統領が在任中にNATO加盟国への攻撃をロシアに促すと発言していたと明かす
アメリカのトランプ前大統領は2月10日、サウスカロライナ州で開いた選挙集会のなかで、大統領在任中に北大西洋条約機構(NATO)の加盟国が十分な軍事費を負担しなければ、ロシアに攻撃を促すような発言をしていたと述べた。
一線を越えた発言
飯田)これを受けて各国が反応しています。NATOのストルテンベルグ事務総長は声明で、「同盟国が互いを防衛しないという発言は、アメリカも含めて我々すべての安全保障を弱体化させ、アメリカとヨーロッパの兵士の危険を増大させる」と指摘しました。トランプ氏は最近、選挙キャンペーンでさまざまな発言をしており、いろいろと物議をかもしていますが、どうご覧になりますか?
秋田)この発言は一線を越えていますよね。おそらくネットやさまざまなメディアで自分に注目してもらい、選挙で有利になりたいから言ったのだと思いますが、もし本当にこのような発想を持っているとしたら、もはや次元の違う世界に入っていると思います。
飯田)ドイツなどを念頭に置きながら「君たちも負担しろ」という気持ちが先走ったのではないかという解説もありますが、我々も同盟国としてドキッとする発言ですよね。
石原)私もドキッとしました。
候補者が確定し、無党派層の影響を見たあとにトランプ対策を考えればいい
飯田)大統領選挙の結果がどうなるかによって、日本も対応を考えなければなりません。
石原)大統領選挙については、政府としても北米局を中心に見ており、私も報告を受けています。共和党はトランプ前大統領、民主党はバイデン大統領になると思いますが、この2人が確定し、そのあと無党派層がどう動くかにもよりますので、現段階ではまだわかりません。また、トランプ前大統領は多くの訴訟を抱えているため、その結果によって変わる可能性も考えています。まずはこの2人がマッチアップするときに無党派層がどうなるかを考え、それからトランプ対策を考えてもいいのではないでしょうか。
安倍元総理に代わるような政治家が日本にいるのか
飯田)我々としては、民主党であろうが共和党であろうが付き合っていくのですが、どちらが付き合いやすいのでしょうか?
石原)昔は共和党の方が付き合いやすかったと思いますが、トランプ前大統領が特別ですので……。
飯田)そういうところを読むのは難しいのでしょうか?
石原)安倍元総理のような方が日本にいるかどうか……。
飯田)岸田総理も外務大臣あるいは政調会長として、トランプ政権と向き合っていたわけですよね?
石原)一時期は重なっていたところもあると思います。
トランプ大統領になった場合に備えた各国の対策
飯田)ドイツとは違い、日本は防衛費を増やすと決めていますよね。
石原)トマホークミサイルも買いますし、F35戦闘機もあります。
飯田)どのように付き合っていけばいいとお考えですか?
秋田)石原補佐官がおっしゃったように、政府としては結果が決まるまで中立の立場で見守ることになると思いますが、本音のベースでは、トランプ大統領になってしまった場合の対策を各国で考え始めると思います。2月2~4日には、日本とイギリスの国会議員やジャーナリスト、外交官が小田原に集まり、合宿形式で国際情勢を話し合う「日英21世紀委員会」が開かれました。私も参加したのですが、主な議題の1つが、まさに「トランプ大統領になった場合にどう対応するのか」ということでした。
飯田)トランプ氏再選の場合。
秋田)イギリスも日本もアメリカに防衛を大きく頼っていますので、もしもトランプ大統領になってしまったら、対策は相当、大変になると思います。イギリスなら、アメリカがNATOを抜けた場合にどう対応するのか。日本の場合は、中国があります。トランプさんは中国に厳しいので、簡単には日米同盟を止めないと思いますが、さらに負担を要求してくる可能性もあります。
議論を尽くせば結論は見出せる
飯田)中国への向き合い方も、アメリカの方向性によって変わるのでしょうか?
石原)対中国を考えると、安全保障という意味では第1列島線や第2列島線、また私は知らなかったのですが、最近では第3列島線もあるようです。南太平洋諸国も含め、さまざまな中国の覇権争いのようなことが起こっているので、中国に対してアメリカの姿勢が変わることはないと思います。
飯田)トランプさんとなると、関税などが前面に出てくるイメージがありますね。
石原)一律、かなり高関税を掛けるという報道もあります。
飯田)日本としても、第1次トランプ政権のときはかなり交渉したという話です。今回も安全保障を含め、この先いろいろと向き合い方が変わるかも知れませんね。
石原)トランプ氏は「ディールの人」と言われていますので、議論を尽くせば、お互いに結論は見出せるのではないかと思います。
4月に国賓として訪米する岸田総理
飯田)他方、いまはバイデン政権ですが、4月に岸田総理が国賓として訪米します。ここでの議題も中国との向き合い方になりますか?
石原)訪問して、上院と下院のどちらかはわかりませんが、演説する予定だと言われています。中身についてはまだ情報が入っていません。
飯田)まだ2ヵ月ありますから、その辺りはこれから練り上げていくのでしょうか?
石原)そうですね。
秋田)国賓として上下両院で演説する貴重な機会ですので、いいメッセージを発信して欲しいですね。
施行時期が1~2年先になる見通しの「セキュリティ・クリアランス制度」
飯田)アメリカや中国との関係について、岸田総理の外交は「法の支配」を重視するという国際協調を中心に行われています。この方針は今後も変わらないのでしょうか?
石原)大きくは変わらないと思います。
飯田)産業界では「中国とビジネスを」という意見もありますが、安全保障面で考えると技術が取られてしまうのではないかなど、さまざまなことが言われています。今国会では「セキュリティ・クリアランス制度」を創設する法案が提出される予定です。この辺りの重要性をどうお考えでしょうか?
石原)「セキュリティ・クリアランス制度」は、相手国の政府から日本政府に伝わってきた情報で、それを民間に提供する場合にだけ掛かります。民間が独自に持っている最先端技術の情報は対象外です。新たな技術の情報交換によって法の秩序や、民主主義国家での新たな製品開発など、より発展に結びつく可能性があるので、ご理解いただきたいと思います。ただ、準備が少し掛かりそうです。まだ確定していませんが、施行時期は1~2年先になるのではないかと考えています。
飯田)戦闘機の共同開発などを進めるときは必要になりますよね?
石原)絶対に必要になると思います。いままでだと特定秘密保護法はありましたが、それより少しランクの低いコンフィデンシャルも生まれてきますから。
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