米大統領選 共和党・予備選ではトランプ氏が勝っても「本選」ではわからない

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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が1月26日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。米大統領選の行方について解説した。

2023年9月27日、米ミシガン州デトロイト近郊で演説するトランプ前大統領(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

2023年9月27日、米ミシガン州デトロイト近郊で演説するトランプ前大統領(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

アメリカのGDP、市場の予想を上回る3.3%増加

米商務省が1月25日に発表した2023年第4・四半期の実質国内総生産(GDP)の速報値は、年率換算で前期比3.3%増となった。伸びは前四半期の4.9%増から鈍化したが、市場予想の2%増を上回った。

宮家)景気が底堅いのでしょうね。人が足りず、人件費が上がっているから値段も上がる。私は先日ハワイに行きましたが、やはり1ドル=110円の時代と150円では全然違いますね。

飯田)風景が変わりますよね。

宮家)食べる量も変わりますよ。アメリカが引き続き堅調であるのはけっこうですが、我々にとっていちばん大きなことは、やはり選挙ですよね。

トランプ前大統領とヘイリー元国連大使の一騎打ちとなった共和党の候補者選び

飯田)今年(2024年)は大統領選を控えています。

宮家)共和党の予備選挙では、トランプさんは討論会にも出ず、余計なことを言わないようにしている。その一方で裁判所に行き、裁判官に食ってかかって窘められているのです。しかし、それでもトランプさんの支持率はダントツです。ニューハンプシャー州の予備選挙では、直前にフロリダ州知事のデサンティスさんが撤退を表明しました。そしてヘイリー元国連大使とトランプさんの一騎打ちになった。

無党派でも参加できるニューハンプシャー州の予備選挙 ~ここで勝てなかったヘイリー氏が他の州で勝つことは難しい

宮家)結論から言うと54.6%対43.1%で、ヘイリーさんが2番手につけたのだけれど、43.1%というのは相当、底上げされた数字だと思います。なぜかと言うと、ニューハンプシャー州の予備選挙は他の州とは違うからです。通常、共和党の予備選挙を行うときは、共和党の有権者として登録した人が参加できるので、その人たちだけでやるとトランプさんが圧倒的に強い。彼らは「自分は共和党だ」と宣言して登録した人たちですから。

飯田)共和党の支持者たち。

宮家)ところがニューハンプシャー州の選挙は、無党派の人でも「私は選挙人として登録しているけれど、無党派です。でも共和党の予備選挙に参加します」と言うと、参加できてしまうのです。そういう人たちがたくさん入ってきて、それがヘイリーさんの票になったのだと思います。

飯田)無党派の人たちの票が。

宮家)逆に言うと、そういう変則的な州ですから、ここでヘイリーさんが勝てなければ、逆転などとても無理なのです。普通の州に行ったらトランプさんが圧倒的に有利ですから。……ということで、みんな固唾を呑み、追いつけるのか、もしくは追い越せるのかと見ていたのです。数%ぐらいまで差が縮まったこともあったけれど、反トランプの人たちにとっては残念ながら、約10%の差がついた。確かに善戦したかも知れないけれど、実質的にはトランプさんの勝ちですね。

無党派層や穏健な人たちはトランプ氏から離れている可能性もあり、まだわからない ~今後の裁判の影響も

宮家)しかし、これでトランプさんが圧倒的に優位かと言えば、アメリカの新聞を読んでいると、いろいろな議論が出ています。「確かにトランプ氏は強いが、無党派もしくはより穏健な投票者からすると反トランプの感情が強い。だからあれだけヘイリー氏の票が伸びたのだ」と。つまり、他の州でも共和党の予備選挙では圧倒的にトランプさんが勝つかも知れないけれど、本選挙になったとき、どのくらい反トランプの票が出るのか。ある程度なら、それを占えるのではないかという議論も報じられています。要するによくわからないということです。

飯田)結局、本選になるとスイング・ステート(揺れ動く州)での選挙がポイントになる。

宮家)圧倒的にトランプさんが強い支持基盤のところもあるけれど、基本的には3割強です。ですから、トランプさんとバイデンさんになると思いますが、「無党派の人たちがどちらに流れるか」ということになります。穏健な人たちの気持ちが微妙にトランプさんから離れているかも知れない。また、トランプさんは選挙と同時に裁判を4つ抱えているわけです。刑事も民事もあり、裁判でトランプさんは言いたいことを言っている。それで裁判官に窘められているので、それが選挙戦にいい影響を及ぼすかと言うと、逆ではないかと思います。

飯田)特に無党派にとっては。

宮家)トランプさんの岩盤支持層なら「頑張った!」で済むけれど、まともな人なら「裁判官に喧嘩を売るような人に大統領が務まるのか?」と思うかも知れない。裁判の行方もあり、選挙は2024年11月まで続くので、「トランプ前大統領が勝つ」と言うのは早いと思います。

穏健な人たちがどこまでトランプ氏に危機感を持って考えるかどうか

飯田)他方でトランプ氏は「特別な国ではなく、普通の国になろう」と主張しています。いままで理想を語って外に使っていたお金を、国内の人間に果実として残すのだと。これがかなり評価されているという話もありますが。

宮家)対外的にアメリカが国際的な動きをしようとするときと、内向きになって「アメリカファースト」になるときが、何回か繰り返されてきたわけです。トランプさんが初めて「アメリカファースト」と言ったわけではありません。問題はアメリカの穏健な人たちが、どこまで危機感を持って考えるかどうかだと思います。まだまだ油断できません。

アクの強いトランプ氏に勝てる候補は経験豊かなバイデン氏しかいないのか

飯田)全米自動車労組がバイデンさんの支持を表明したという報道もありますが。

宮家)民主党ですから、それはそうですよ。獲れなかったら大変なことになります。

飯田)こちらは逆に民主党の岩盤に近い。

宮家)岩盤ですから驚くには値しません。逆に、できなければ大変です。バイデンさんもお歳だということもあるけれど、「他にいないのか?」と言いたくなるときもあります。

飯田)「民主党のなかで鈴をつけに行くような人がいない」という批判もあるようですね。

宮家)アクの強いトランプさんに勝てる候補となると、やはり経験豊かなバイデンさんになってしまうのでしょうか。

飯田)大統領が「2期目をやるぞ」と言い出したら、止めづらいものですか?

宮家)止めづらいですね。バイデンさんにとっては幸いかも知れませんが、有力な候補がいないのも事実です。

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