「骨太」をめぐり、積極財政派と緊縮財政派の動きが活発に
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ジャーナリストの須田慎一郎が3月4日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。日銀・植田総裁が強調する「マイナス金利政策解除」のポイントについて解説した。
日銀・植田総裁、マイナス金利解除のポイントの1つは「春闘の動向」と強調
日本銀行の植田和男総裁は2月29日、物価目標の達成が見通せる状況にはまだ至っていないとして、物価と賃金の好循環を確認する作業を続ける考えを示した。また、マイナス金利政策の解除など政策を変更する判断材料について、春闘の賃上げ動向が「1つの大きなポイントだ」と強調した。
ここでマイナス金利政策を解除せず、進めていく
飯田)先日はブラジル・サンパウロでG20の財務相・中央銀行総裁会議が開かれました。そのあとの会見で出た発言です。
須田)インフレ率2%が着実に、継続的に行われることが日銀の最大目標ですから、それが見極められない限り、いまの金融政策を続けていくのだと思います。その心は、デフレからの完全脱却です。「よい物価上昇」のスパイラルをつくっていく。物価が上がり、それに伴って企業業績もよくなり、賃金が上がる。賃金が上がればより多くのサービス、財貨を買い、そして価格が上がる。この33年間、日本経済が経験したことのない状況に持っていきたいのです。もう少しのところまで来ているから、いまマイナス金利政策を解除してしまうと、これまでの努力が全部無駄になってしまいます。円安圧力はあるけれど、ここはしっかり進めていきたいのでしょう。
大手企業も原材料価格やエネルギー価格の高騰を部品や手間賃に上乗せすることを容認し始め、中小企業にも賃上げの流れ
飯田)春闘については、「大手は賃上げするけれど中小は厳しい」という声が聞こえてきます。
須田)去年(2023年)の暮れぐらいから、大手企業も原材料価格やエネルギー価格の高騰を、部品や手間賃に上乗せすることを容認し始めました。下請け部品メーカーなどのコスト上昇に対し、理解を示すようになってきた。運送業界を見てもトラック運賃、輸送代の上昇を許容する荷主が増え、賃金上昇が実現していくでしょう。必ずしも大手企業だけではなく、下請けや中小企業も賃上げできるような環境が整いつつあると思います。一斉にできるわけではありませんが、流れはつくり出せると思います。
2025年度「骨太の方針」をめぐり、自民党内で積極財政派と緊縮財政派の動きが起こる
飯田)流れはできても、まだ実現していないような状況で、マイナス金利解除が先行する可能性はありますか?
須田)いや、先行しないと思います。確実に見極めてから行われるでしょう。ただ、金融緩和政策だけで本当にデフレから脱却できるのか。総需要、つまり民間セクターの需要に加えて、公的セクターの需要……財政出動が必要です。財政出動が望めるかどうかも、1つの方向性として見極めるべきポイントだと思います。
飯田)財政出動があるのかどうか。
須田)2025年度予算の編成作業に向けて、前提条件となるのが「骨太の方針」です。6月にも閣議決定されると思いますが、どういう方向性が打ち出されるかで、政権のスタンスが出てきます。積極財政派の動きや、それに対抗する緊縮財政派の動き。特に、自民党内における積極財政派の動きが、週内にも間違いなく起こってくると思います。
水面下で「25年度予算編成」のバトルが始まる ~積極財政派が決起する動きも
飯田)予算と言うと、各省庁による概算要求が秋口ぐらいからニュースになりますが、実はそれよりも前に大きなバトルがあり、6月の「骨太の方針でどう書かれるか」につながるのですか?
須田)最初に政府が素案をつくるのですが、それが与党に送られ、自民党の各部会でそれぞれの省庁予算について攻防が行われる。それを政調会に送り、フルオープンで議論され、最終的に政調の意思決定機関である政審に送られて合意となります。ここが1つの大きな山場になっているのです。そのあと、自民党の最高意思決定機関である総務会の了承を得て、内閣に差し戻され、閣議決定が行われる。これが6月までの流れですから、そろそろ動く必要があります。
飯田)きょう(4日)の朝日新聞の社説が、普通であれば2つのネタなのに、きょうは1つのネタでした。
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『(社説)財政運営の改革 持続性を取り戻すために』
~『朝日新聞デジタル』2024年3月4日配信記事 より
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飯田)結局、緊縮財政をずっと書くような内容なのですが、このタイミングが関係しているのでしょうか。
須田)衆院で予算が可決したら、はっきり言って24年度予算は終わってしまったのです。
飯田)30日が経過すれば自然成立するから。
須田)ここから、いよいよ25年度予算編成に関して、水面下でのバトルが繰り広げられます。先週末から積極財政派が決起する動きが見えてきたので、先行するために財務省の意向を汲んだ朝日新聞が、そういう社説を書いたのでしょう。
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