専門家が予想する日銀の2024年「マイナス金利解除」のタイミング
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双日総合研究所チーフエコノミストの吉崎達彦が12月22日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。日銀のゼロ金利解除のタイミングについて解説した。
2024年1月か、それとも4月か ~日銀のゼロ金利解除のタイミングを考える
日本銀行は12月19日の金融政策決定会合で大規模金融緩和の維持を全会一致で決めた。植田総裁が7日の国会で「年末から来年にかけ一段とチャレンジングになると思う」と答弁したこともあり、「緩和を修正する」という観測も一部にはあったが現状維持となった。
飯田)「ゼロ金利解除はいつか」と言われていますが。
普通に考えれば4月の一択
吉崎)普通に考えたら4月の一択です。日銀としては組織防衛もあり、あとで「またお前は間違えたのか」と言われたくないので、念には念を入れている。7~9月期のGDPはマイナス2.9%という悪い数字でした。そのため、10~12月期のGDPがプラスになっていることをまず確認する必要がありますが、それは2月15日に発表される予定です。
飯田)10~12月期のGDPがプラスになっているかどうか。
吉崎)さらに2024年3月の春闘で、できれば賃上げ率が4%以上など「かなり強い」と確認できれば、4月末の会合でマイナス金利を解除するのが自然な選択になるわけです。
マーケットのなかで特に外資系が求める「1月に」
吉崎)一方、マーケットのなかでは、特に外資系が「1月ではないか」と言っています。大体こういうときは外資が当てるのですが、外資の人たちは「どう見ても2024年の春闘で賃金を上げるに決まっているではないか。いまの世の中の雰囲気から見て、上げないなど考えられない。GDPも普通に考えればプラスになる。だったら早くしろ」と言っている。ここは見方が割れるところです。
安倍派の政治資金問題の影響も
吉崎)もう1つ、影のテーマで安倍派の問題が絡んできます。通常であれば「アベノミクスをやめますか?」とは、日銀は怖くて言えません。安倍派の先生方から「君たちは何を考えているのだ、安倍さんのご意志は……」などと言われたくないので、証拠を固めたいわけです。「誰がどう見ても解除するしかない」と言いたいのです。
アメリカの利下げが3回となると、2024年3月の可能性も ~円高の心配もしなければならなくなる
吉崎)しかし、一方でリスクもあります。先日のFOMCでは、急にハト派になってしまったのですよね。パウエル議長は上手くやっていて、失業率3%台、インフレ率3%で収めているのでOKなのですが、言うことがコロコロ変わるのです。「2024年の利下げは2回程度」と言っていたのに、いつの間にか「利下げは3回」となっています。利下げが3回行われる場合、早ければ2024年3月の可能性もあります。
飯田)3回となると。
吉崎)日本がマイナス金利解除、つまり利上げに動こうとしているとき、先にアメリカに利下げされたら、余計なことを考えなくてはいけなくなります。いままでは円安の心配をしていたけれど、急に円高の心配をする必要があるかも知れない。
飯田)確かに先日のFOMCは、政策は変わらず現状維持でしたが、パウエルさんが「来年(2024年)利下げが3回あるかも知れない」というような発言をした途端、円高に振れましたね。
テレビ東京・大江麻理子キャスターの最高の質問
吉崎)安倍派の問題もその時期に急に動きました。ですので、19日の日銀の会見は、みんな戦々恐々と見守っていたのです。
飯田)植田さんが何を言うのか。
吉崎)私は新幹線で移動中でしたが、ずっと聞いていました。最高の質問をしてくれたのが、テレ東の大江麻理子キャスターです。彼女は毎回出てきて面白い質問をしてくれるのですが、「来年アメリカで利下げがあったら、マイナス金利の解除はやりにくくなるのですか?」というようなことを上手に聞いていました。すると、植田さんが強い言葉で「そういう考えは不適切である」と言ったのです。
飯田)不適切とまで言ったのですか。
吉崎)非常に強く否定したのですが、そのあと「3ヵ月先、6ヵ月先にどうこうみたいなことは考えてはいけない」と、言わなくてもいいことを「ポロッ」と言ったのです。図星を突かれて動揺するような、いわゆる「語るに落ちる」という反応でした。
事前に考えていた植田総裁の「チャレンジング発言」
飯田)そう考えると、アメリカの出方も見なくてはならず、その部分がチャレンジングだったのでしょうか?
吉崎)12月7日の「チャレンジング発言」も前後を聞くと、言わなくてもいいのに最後の方で、野党の質問に挟んでいるのです。どう見ても家を出る前から考えて「これを言ってやろう」というフレーズです。もちろん日銀としては選択肢を広げたいので、「1月もある、4月もある」という状態にしたいのですけれど。
5月下旬に「デフレ脱却宣言」を発表か
飯田)来年、春闘でしっかり賃上げできて、マイナス金利を解除しても大丈夫だと判断されれば、いよいよ内需で経済が回る段階に入るのでしょうか?
吉崎)政府はどこかのタイミングで「デフレ脱却宣言」を狙っていると思います。心理的にも大きいですし、そもそも今回の補正予算は「デフレ完全脱却のための総合経済対策」という名前なのです。おそらく、どこかで「デフレ脱却宣言」を言いたくて仕方ないのでしょう。普通に考えると、4月の金融政策決定会合で日銀が宣言したあと、5月に1~3月期のGDP発表があるので、それを見たあと、5月下旬くらいに「デフレ脱却宣言」かなと思います。
飯田)官邸筋によると、その辺りをレガシーにしたいというような噂を聞きます。
吉崎)なかなかいいストーリーではないですか。
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