アメリカが動く前に利下げできないECB
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経済アナリストのジョセフ・クラフトが3月8日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。4会合連続で金利据え置きを決めた欧州中央銀行(ECB)について解説した。
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G7財務相・中央銀行総裁会議に臨むラガルドECB総裁(右)とユーロ圏財務相会合のドナフー議長=2023年5月11日午後6時8分、新潟市中央区(代表撮影) 写真提供:産経新聞社
ECB、4会合連続で金利据え置き
飯田)ECBが4会合連続で政策金利を据え置きました。各国の金融政策が話題ですが、ヨーロッパはどうなのですか?
クラフト)ヨーロッパもアメリカと同じで、市場が注目する利下げのタイミングに自信がない。ECBのラガルド総裁が「もっと確証できるデータが欲しい」と言っている通り、今後どちらに経済が転んでいくかが見えにくい。不透明なマーケットです。
インフレが再加速する懸念もあり、利下げを見送る
クラフト)ヨーロッパ経済は減速しているのですが、一方、中東情勢の緊迫で原油も上がっています。今後、再びインフレが上がるのではないかと懸念しているので、しばらくは様子見でしょうか。4月に利下げするのではないかという一部の観測もありますが、今回の会見を見ると、4月はなさそうです。おそらく、早くても6月ですが、それも危ういかも知れません。
「アメリカが動きそうになる少し先ぐらいで動きたい」ECB
飯田)一時はインフレがキツく、一方で景気も減速し、スタグフレーション化していたところもありました。ここへ来てインフレは落ち着いたけれど、経済はなかなか伸びないのですか?
クラフト)特にヨーロッパ経済は厳しいです。消費が低迷している。それからウクライナ戦争で、いろいろな供給にも問題が生じています。アメリカの場合は、予想以上に景気が底堅いので利下げできないところがありますが、ヨーロッパの場合、そこまではいかないけれど目先のインフレ上昇リスクを警戒している。結論から言うと、少なくとも欧米の中央銀行はさらなるデータを見て、「自信が持てるまで動かない」というのがいまのメッセージだと思います。
飯田)ヨーロッパの場合、景気が悪いのであれば、本当は利下げしたいのでしょうか?
クラフト)本音はそうだと思います。もう1つ、ヨーロッパだけが先に動いてしまうと、為替など対アメリカ(政策)で問題が生じます。ヨーロッパとしては「アメリカが動きそうだと思った少し先ぐらいで動きたい」というのが本音だけれど、まったく予想できない。要は様子見ということです。
飯田)ラガルド総裁の立場からすると、「利下げする」と言った瞬間にユーロ安になれば、「輸入するエネルギー価格が上がってしまうではないか」と言われかねません。
クラフト)インフレがまた加速してしまうかも知れない。一方では欧米が戸惑っている間に、日本は逆に早まる可能性もあります。中央銀行の足並みが揃っていないところが面白いですね。