横浜流星、第48回日本アカデミー賞最優秀男優賞受賞! “5つの顔を持つ”逃亡犯役で栄誉を掴む

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Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね【第1238回】

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。

3月14日、グランドプリンスホテル新高輪国際館パミールにて「第48回日本アカデミー賞」授賞式が開催。

(C)日本アカデミー賞協会

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映画『正体』に主演した横浜流星が、最優秀主演男優賞に輝きました。『正体』は、最優秀監督賞(藤井道人監督)、最優秀助演女優賞(吉岡里帆)と3部門で最優秀賞を獲得。

さらに、ニッポン放送「オールナイトニッポン」のリスナーが選ぶ「話題賞」では、森本慎太郎が俳優部門に選出されるなど、個人賞を席巻。

横浜流星の最優秀賞受賞は、今回が初となります。そこで今回は、俳優・横浜流星をクローズアップ。その魅力に迫ります。

(C)2024 映画「正体」製作委員会

(C)2024 映画「正体」製作委員会

役を生きる。全身全霊をかけた演技で、観客を魅了する。

映画『正体』は、凶悪な殺人事件の容疑者として逮捕され、死刑判決を受けた主人公が、自らの無実を実証するために繰り広げる決死の逃亡劇。スリリングな展開から目が離せないサスペンス・エンタテインメントであると同時に、現代社会が持つ理不尽さや矛盾がストーリーから垣間見え、ヒューマンドラマとしても一級の作品となっています。

本作で、主人公の鏑木慶一を演じたのが、横浜流星。ある時は日雇い労働者、ある時はwebライター、そしてまたある時は介護施設職員。風貌や職業を変えながら潜伏し、正体がバレそうになれば逃走を繰り返す。野生味あふれる演技で観客を魅了しました。

(C)2024 映画「正体」製作委員会

(C)2024 映画「正体」製作委員会

まったく異なる5つのキャラクターを見事に演じ分けた横浜さん。この難役を演じるにあたっては、「どんなに見た目が変わっても、ひとりの人物である」ということを意識したとか。そんな彼の言葉から改めて本作を振り返ってみて思い出さされるのは、目の表情の豊かさです。

以前から定評ある横浜さんの“目の演技”ですが、今作では特筆もの。どんな環境下にいる時も、一貫して瞳の奥はどこか寂しげ。まるで彷徨える子犬のようで、彼を守ってあげたい、信じたいと観客の心をも震わせてしまう。これほどまでにリアルに鏑木像を具現化できたのも、言葉以上に語る瞳の力にあったといっても過言ではないでしょう。

(C)2023「ヴィレッジ」製作委員会

(C)2023「ヴィレッジ」製作委員会

話題の映画・ドラマに次々と出演し、着実にキャリアを築いてきた俳優・横浜流星を語るにおいて外せないのが、藤井道人監督の存在です。映画に限らずMV、配信ドラマ、CMなどで何度もタッグを組み、互いのことを「まだ世の中に名前が知られる前から、鼓舞し合って切磋琢磨してきた」と語るように、作品作りを通じて互いを高め合ってきた盟友。

これまで発表された様々な作品群の中でも特に印象的なのが、『ヴィレッジ』です。映画『ヴィレッジ』は、ある集落を舞台に環境問題や限界集落、若者の貧困、格差といった社会の闇を描いたサスペンス。

横浜流星が演じたのは、閉塞的な村社会から逃れることができない主人公、片山優。脚本制作の段階から藤井監督との意見交換を繰り返し、ロケハンにも立ち会うなど、これまでの出演作とは違った角度からも役にアプローチ。

人生に希望を見出せず、常に我慢を強いられている青年像を具現化し、新境地を開拓しました。ここまで自分自身を追い込むのかと驚愕させられるほど、身も心も削るように“役を生きる”姿に、心打たれた方も多いことでしょう。

(C)日本アカデミー賞協会

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授賞式では「若輩者ではありますが、これからも日本映画界を盛り上げるべく精進していきたい」とスピーチした横浜流星さん。壇上の横浜さんを見つめながら、溢れ出る涙を拭う藤井道人監督。

映画作りを通じて共闘してきた二人の絆の深さが伝わってくる一コマでした。

横浜流星と藤井道人。『正体』という作品で、二人そろって日本アカデミー賞最優秀賞を受賞したということは、彼らにとって特別な意味を持つ出来事となったことでしょう。

日本映画界最強のバディが、次にどのような作品を世に送り出してくれるのか、期待が高まるばかりです。

そして2025年は、大河ドラマ「べらぼう 〜蔦重栄華乃夢噺〜」での主演はもちろん、映画でも『片思い世界』や『国宝』など出演作の公開が続く横浜流星さん。快進撃は、まだまだ続きそうです。

(C)2024 映画「正体」製作委員会

(C)2024 映画「正体」製作委員会

<作品情報>
正体
大ヒット上映中

出演:
横浜流星
吉岡里帆 森本慎太郎 山田杏奈
前田公輝 田島亮 遠藤雄弥 宮﨑優 森田甘路
西田尚美 山中崇 宇野祥平  駿河太郎 / 木野花 田中哲司 原日出子 松重豊 山田孝之

主題歌:「太陽」ヨルシカ(Polydor Records)
原作:染井為人『正体』(光文社文庫)
監督:藤井道人
脚本:小寺和久 藤井道人
音楽:大間々昴
制作プロダクション:TBSスパークル BABEL LABEL
配給:松竹
(C)2024 映画「正体」製作委員会
公式サイト https://movies.shochiku.co.jp/shotai-movie/

(C)2023「ヴィレッジ」製作委員会

(C)2023「ヴィレッジ」製作委員会

<作品情報>
ヴィレッジ(2023年公開)
Blu-ray&DVDリリース デジタル配信中

出演:横浜流星 黒木華 一ノ瀬ワタル 奥平大兼 作間龍斗 淵上泰史 戸田昌宏 矢島健一 杉本哲太 西田尚美 木野花 中村獅童 古田新太
監督・脚本:藤井道人
音楽:岩代太郎
企画・製作・エグゼクティブプロデューサー:河村光庸
配給:KADOKAWA/スターサンズ
(C)2023「ヴィレッジ」製作委員会

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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