#25 加治前竜一(巨人)史上初 プロ初打席・初安打・初サヨナラ弾

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#25 加治前竜一(巨人)史上初 プロ初打席・初安打・初サヨナラ弾

 

◎2008年6月6日 東京ドーム

ロッテ 0 0 3  0 0 0  0 0 0  =3

巨人  0 0 0  1 1 1  0 0 1X =4

HR(ロッテ)根本1号

(巨人)小笠原9号 加治前1号

 

「10回裏、ジャイアンツの攻撃です。1ストライク1ボールから3球目、ピッチャー川崎、第3球を投げた。打ち上げた! 高く上がった! ライト大きな当たりだ! ライトバックする! ライトバック! ライトバック!! 入ったーー!! 加治前、プロ初打席、サヨナラホームランです!」

 

華やかに見えるプロ野球の世界だが、その中で輝ける選手はほんのひと握りだ。レギュラーの座を獲得できずにユニフォームを脱ぐ選手のほうが圧倒的に多い。ただ、控えで終わった選手の中にも、ワンチャンスをものにして球史に名を残した選手がいる。その1人が巨人・加治前竜一だ。

 

奈良県出身の加治前は、地元・智辯学園高校を経て、東海大学に進学。175センチと決して大柄ではないが、パンチ力と強心臓が売りの外野手で、首都大学野球リーグではMVPを2回受賞。首位打者も1回獲得し、4年時には全日本大学野球選手権大会でチームの準優勝に貢献した。

 

また右打者ながら、右方向にも長打が打てるパワーを買われて、加治前は2007年、大学・社会人ドラフトで巨人から4巡目指名を受け入団。当時は原辰徳監督が指揮をとっており、加治前は大学の大先輩のもとでプレーすることになった。ただし獲得を決めたのはスカウトとフロント。あくまで実力を評価してのもので“縁故入団”ではない。入団会見で加治前は「目標は高く持っていたい。原監督の現役時代のような選手になりたいです」とコメントしている。

 

プロ1年目の2008年、加治前は2軍戦で活躍。ちょうど1軍の外野手に故障者が相次いだこともあって、セ・パ交流戦中の6月1日に初の1軍昇格を果たす。さっそくその日のソフトバンク戦に守備固めで起用され、プロ初出場。その後も1試合守備のみで起用され、プロ3戦目となる6日のロッテ戦で加治前に“人生最高の見せ場”がやって来た。

 

試合はロッテが3点を先制。巨人は中盤に1点ずつ返して追いつき、3-3のまま延長戦に突入した。加治前は10回表からライトの守備に入り、その裏、待望のプロ初打席が回って来た。持ち前の打力をアピールする絶好の機会だ。ピッチャーは川崎雄介。

 

「変化球で入ってきそうだな、とも思いましたけど、あくまで真っすぐを待ちました」と言う加治前。カウント1-1から川崎が投じた球は外角へのチェンジアップだったが、加治前はうまく反応。豪快に振り抜いた打球は右方向に高々と上がった。バックするライト。ボールは巨人ファンで埋まる右翼スタンドに飛び込み、なんとサヨナラホームランに! プロ初打席で初ホームランを打った打者は何人もいるが、それがサヨナラ弾になったのはプロ野球の長い歴史の中でも加治前だけだ。球史に名を残す一発は、広角に長打が打てる加治前らしい“右方向へのアーチ”だった。

 

ダイヤモンドを一周するとき、無我夢中だったという加治前。「信じられないです。ホームインの瞬間? あのへんはもう意識はなかったです」。ホームで待ち構える先輩たちに手荒い歓迎を受け、ユニホームがはだけたままベンチに引き揚げると、大学の大先輩・原監督が満面の笑顔で待っていた。監督は抱きかかえるように加治前を抱擁。「どでかいことをやってくれた。今後も史上初の何かをしてくれる選手になってほしいね」と後輩の偉業に大喜びだった。

 

加治前はその後も、外野の貴重な控えとしてプレー。2012年には47試合に出場して8打点を挙げた。そのうち4打点が勝利を決める打点となり、4度もヒーローインタビューを受けている。目立たないながらも、何かを持っている選手だった。しかし巨人の選手層は厚い。2014年、戦力外通告を受け、6年間在籍したジャイアンツを退団することに。

 

トライアウトで他球団から声は掛からなかったが、手を抜かないプレーを評価して声を掛けてくれた社会人野球の三菱重工長崎に入社。チームの統合に伴い、2017年に三菱日立パワーシステムズに移籍し、都市対抗野球では主軸としてベスト4入りに貢献した。現在は現役を退き、社業に専念している加治前。2020年の引退時に、現役時代の思い出についてこうコメントしている。「プロ、都市対抗と、2回も満員の東京ドームでプレーできました」……残した記録以上に、記憶に残る選手だった。

 

<チャッピー加藤>

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