#37 大谷翔平(日本ハム)「1番・投手」で初回初球を先頭打者本塁打

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#37 大谷翔平(日本ハム)「1番・投手」で初回初球を先頭打者本塁打

 

◎2016年7月3日 ヤフオク!ドーム

日本ハム    1 0 0  0 0 1  0 0 0  =2

ソフトバンク  0 0 0  0 0 0  0 0 X  =0

HR(日本ハム)大谷10号

 

2013年、大谷翔平が北海道日本ハムファイターズで“投打二刀流”のプロ野球選手としてデビューしたとき、ほとんどの野球評論家は「絶対に両立は無理だから無謀なことはやめて、早くどちらかに専念させたほうがいい」という論調だった。大谷のプロ1年目の成績は、投手として13試合に登板し、3勝0敗、防御率4.23。打者として77試合に出場し、打率.238、3本塁打、20打点だった。

 

数字だけを見ると確かに、投打どちらも特段優れた成績ではない。しかし、高卒1年目の選手が「投打を両方こなして」この成績をマークしたと考えると、凄いことだとあらためて思う。当時は野手として出場する際、DH(指名打者)ではなく外野を守ったりもしていたし、投手として出場した場合も、降板後そのままDHとして打席に立てる通称「大谷ルール」はまだ導入されていなかった。そのルールができたのは渡米後のことだ。

 

当時、評論家の中で「両方できるんだから、やらせればいい。だって面白いじゃない」と語った数少ない人物が落合博満氏だ。ホームランと打率、両方を求めて三冠王を3度も獲得した落合氏だからこそ言える言葉だ。もし栗山英樹監督率いる日本ハム首脳陣が1年目のみで二刀流をやめさせていたら、世界の野球は今よりずっとつまらないものになっていただろう。常識外の能力を持つ選手を、既存の常識で縛ってはいけないのだ。

 

2年目も二刀流を継続することになった大谷は、2014年、投手として24試合に登板し、11勝4敗、防御率2.61。打者として86試合に出場し、打率.274、10本塁打、31打点を記録し「2ケタ勝利+2ケタ本塁打」を同時に達成。これで「二刀流なんて早くやめさせろ」と言う人はいなくなった。以降、大谷が日米両球界で野球の常識を覆す快挙を次々と成し遂げていったのはご存じの通りだ。

 

今回は、ちょうど10年前の2016年、大谷がプロ4年目に放った“史上初”のホームランを紹介しよう。7月3日、ヤフオク!ドーム(現・みずほPayPayドーム)で行われたソフトバンク戦でその一発は飛び出した。

 

この試合、大谷は「1番・投手」で先発。「大谷ルール」はなかったので、日本ハム・栗山監督はDHを解除、9人野球で臨んだ。「1番・投手」での先発起用はこの試合が初めてで、スタメン発表の際、スタンドは大いに沸いた。大谷自身も「ビックリしました」と試合後に語っている。

 

プロ1年目、野手として出場したときに「1番・右翼」は経験があったが、投手として出場した試合で1番を打つのは、アマ時代も含めて未経験だった。長いプロ野球の歴史を紐解いても、「1番・投手」は戦前に1例と、1971年、ヤクルトを指揮した知将・三原脩監督が大洋戦で、俊足巧打の投手・外山義明を1番で先発起用したときの2例のみだ。

 

この「1番・投手・大谷」には理由があって、本来の1番打者・陽岱綱が前日の試合で死球退場。大事をとって控えに回っていたというチーム事情もあった。大谷が1番なら打席が多く回るし、ファンも喜ぶ。またビジターの試合なら登板前にいち早く打席に立てるので、出塁しなかった場合、すぐにピッチングの準備ができるというメリットもある。このアイデア、栗山監督のクリーンヒットと言っていいだろう。

 

そして大谷も、いきなりこの起用に応えてみせた。1回表、「プレイボール!」の声が掛かった直後に、ソフトバンク先発・中田賢一の初球、真ん中に甘く入ったスライダーを大谷は見逃さず、振り抜いた打球は高々と上がり右中間スタンドへ。「先発投手が、試合開始直後の初球を打って、先頭打者ホームラン」を記録したのはもちろんプロ野球史上初の出来事だった。投げるときのことを考え「立ち上がりで疲れないように」とあえてゆっくりダイヤモンドを回った大谷。これも二刀流ならではである。

 

自分で自分を援護した大谷は、8回5安打無失点、10奪三振の好投を見せ2-0で勝利。日本ハムはこの試合で11連勝を記録し、首位・ソフトバンクを3タテ、2位に浮上した。連勝は球団新記録の15まで伸び、日本ハムは最大11.5ゲームあったソフトバンクとの差を跳ね返して逆転優勝。日本シリーズで広島を下し10年ぶりの日本一になった。大谷はこの年、投手として10勝4敗、防御率1.86。打者として打率.322、22本塁打、67打点、104安打をマーク。「10勝+20本塁打+100安打」は史上初の快挙で、MVPに輝いている。

 

現在ドジャースでも「1番・投手」としてマウンドに立っている大谷。今年5月21日(日本時間)のパドレス戦で先発登板時に「初回初球先頭打者ホームラン」を記録した(レギュラーシーズンではMLB史上初)。そのルーツは10年前、栗山監督の英断にあった。

 

<チャッピー加藤>

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