#39 新井貴浩(広島)通算300号ホームラン
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◎2016年8月2日 神宮球場
広島 0 2 2 0 4 0 2 6 0 =16
ヤクルト 0 0 0 3 1 0 0 0 0 = 4
HR(広島)新井13号 下水流5号 田中12号
(ヤクルト)西田5号 バレンティン20号
「不器用な男」(山本浩二)「怒られている姿しか印象にない」(野村謙二郎)「入団時からギリギリ瀬戸際の立場だった」(前田智徳)
これはカープOBたちによる「新井貴浩評」である。広島生まれ・広島育ちで子どもの頃からカープファンだった新井は、駒澤大学を経て、1998年のドラフトで憧れのカープから6位指名を受けて入団した。新井はドラフト前に大学の先輩・野村謙二郎の自宅を訪れて素振りを披露し、バットスイングの鋭さをアピール。これを見た野村が球団に強く推薦してくれたことが功を奏した。球団側も「地元の選手だし、野村がそこまで言うなら獲ってやるか」という感じで、それほど期待されていなかったのだ。
先輩OBたちが言うように、とにかく不器用で、守備も“粗いさん”と呼ばれていたようにお世辞にも上手いとは言えなかった。ただ打球を遠くまで飛ばす能力、努力する才能だけは人一倍あった。1年目の1999年、新井は53試合に出場して95打数21安打、打率.221という成績だったが、本塁打を7本打った。「ヒットの3分の1がホームラン」というのが実に新井らしい。
2年目は16本、3年目は18本と本塁打数を増やしていき、新井はレギュラーの座を獲得。4年目の2002年は全140試合に出場して、28本塁打をマークした。2005年には43本塁打を放って初のホームラン王に。不器用だったドラフト6位は、いつしかチームの“主砲”になっていた。
9年目の2007年、新井はFA権を取得。カープ愛が誰よりも強い新井だけに、誰もが宣言残留を予想したが、悩みに悩んだ末、新井は阪神への移籍を表明。記者会見で「カープが大好きなんで、つらいです……」と涙を流した。「だったら何で出て行くんだ!」とカープファンから大ブーイングを浴びたが、FA制導入後、広島はチームの柱となる主力選手が他球団にどんどん流出していったことも背景にあった。それに対して有効な手を打てないでいるフロントに対して不満を持っていた新井。入団時から兄貴分として慕っていた金本知憲が2001年オフに阪神へFA移籍したことも影響しただろう。新井が選んだ移籍先は、優勝が狙えて、金本と再び一緒に野球ができる阪神だった。
新井は阪神で、2011年に打点王に輝いたが、期待されたホームランは在籍7年間で一度も20本を超えなかった(2019年の19本が最高)。また阪神移籍の大きな理由だった「優勝」も経験できず、2014年にはマウロ・ゴメスに一塁のポジションを奪われるという屈辱も味わった。オフには減額制限を超えるダウン提示を受け、新井は自由契約を選択。このとき「戻って来い」と真っ先に声を掛けてくれたのが、古巣・カープだった。
出て行った経緯から「とても帰りたいが、やはり僕は帰ってはいけない」と考えていた新井は、この申し出に驚いたという。同年オフ、メジャーから同じくカープに復帰した2歳年上の黒田博樹も「帰ればいい」と背中を押し、新井は復帰を決意。後輩たちも「新井さん、どのツラ下げて帰って来たんですか会」という名の歓迎会を開いてくれた。そして、復帰初打席の際、大歓声で迎えてくれたカープファン。「あれは一生忘れられない。今度は自分がファンを絶対に喜ばせる」と新井は心に誓った。
復帰1年目の2015年は、125試合に出場して打率.275、7本塁打、57打点だったが、翌2016年はキャンプから38歳(当時)とは思えないほどの練習量で自分を追い込んだ新井。もちろん「優勝するため」である。この年は「通算2000安打」と「通算300号本塁打」という2つの大記録も懸かっていた。2000安打は4月26日、神宮球場で行われたヤクルト戦で達成。一方、300号は7月半ばに299号を打ってから難産が続いた。
8月2日に神宮で行われたヤクルト戦。2回、無死一塁のチャンスで、石川雅規の投じたシンカーを叩くと、打球はバックスクリーンで高くはねた。センターの比屋根渉が落下点に達したようなフェイクを見せたので、一瞬「ダメだと思った。比屋根くんに騙された」と笑った新井。出場2179試合目での300号達成は、当時史上最遅の記録だったのも新井らしかった(今季、巨人・坂本勇人が更新し、現在は2位のスロー記録に)。2000安打も300号も大学時代から馴染みのある神宮での達成だった。
この年、4番打者として132試合に出場して打率.300、19本塁打、101打点の活躍を見せた新井。この年10勝を挙げた黒田と両輪で、カープを25年ぶりのリーグ優勝へと導きMVPに輝いた。優勝を決めた9月10日の巨人戦(東京ドーム)、マウンドで黒田と抱き合って涙を流した新井。プロ入り後、初めて味わう「優勝」の美酒だった。
<チャッピー加藤>





