天国から来たチョコ ~1人暮らしの高齢女性のもとに、亡き夫から届いたプレゼント〜【わん!ダフルストーリー】

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2歳のころのゴン。ドライブによくでかけました

山口県のとある町に住む70代の女性、安田さんのお話です。

彼女の日課は、毎夕の散歩。2年前に亡くなったご主人と愛犬ゴンの眠る墓地まで20分ほどかけて歩き、お墓に水を供え、その日の出来事を2人に話すのが何よりの楽しみ。そんな安田さんに訪れた、奇跡の出会いとは…?

安田さんとゴン

■愛犬ゴンがやってきた!

ゴンが安田家にやってきたのは、15年ほど前のこと。近所でラブラドール・レトリーバーの子犬が9頭も生まれ、「とても飼いきれない」というので、ゆずってもらったのがゴンでした。

安田さんとごん2

人懐っこい性格のゴンはすぐに夫妻に慣れ、夫妻にとってかけがえのない家族の1員になりました。特にご主人との相性は抜群で、どこに行くにも一緒。たまにご主人が1人で歩いていると、ご近所の人に「あら?ゴンちゃんは?」と尋ねられるほどだったのだとか。車にゴンを乗せて、泊りがけの旅行に出かけたり、近所の山に登ったり…。子どもたちが独立して以来、家にこもりがちだった安田さん夫妻の生活は、ゴンのおかげでずいぶんと賑やかなものになりました。

元気だったころのゴン。お散歩コースの公園にて。

■突然の余命宣告。そして思いがけない愛犬の死

そんな幸せな毎日が急変したのは、ゴンが安田家に来て12年目の冬のこと。

急に体調を崩して病院に運ばれたご主人が「肺がんの末期で余命数ヶ月」との宣告を受けたのです。失意の中、ご主人が下した決断は「抗がん剤治療をせず、余生を家で静かに過ごすこと」。自宅に戻ったご主人と安田さん、そしてゴンの生活が再び始まりました。しばらくするとご主人の体調は一時的に回復、以前のように散歩に出かけることもできるようになりました。すると、今度はゴンの体調が急激に悪化。後足が萎えてしまい、大好きなご主人を見ても、横たわったまま弱々しく尻尾を振るくらいしかできなくなっていました。

晩年のゴン

そしてご主人が自宅に戻って数週間後、ゴンはご主人の腕の中で、眠るように天国に旅立ちました。「ゴンは、身辺整理が済むまで俺を生かしてくれようとして、身代わりになって先に死んでくれたんだ…」と嘆き悲しんだご主人は、ゴンを自身の墓に埋葬。体調の良い日は墓前に出かけ、「もうすぐ俺もいくからな」と話しかけていたそうです。

数か月後、その言葉通りご主人も自宅で息を引き取りました。最期の数日間、ご主人は自分の死後に1人で残される奥様を案じ、「俺が死んだら、また犬を飼えよ。そしたら寂しくないだろう?」と繰り返していたそうです。

でも、安田さんはご主人の死後、犬を飼おうとはしませんでした。「もちろん、1人ぼっちの生活は寂しい。でも、また愛する人や犬に先立たれるのが怖くて、どうしても飼う気にならなかったのよ」と。「お墓に行けばいつでも主人やゴンに会えるんだから…」と自分を慰めながら、2年間、静かに1人暮らしを続けたのです。

そんなある日の夕方、いつものように墓地にやってきた安田さんの目に、信じられない光景が飛び込んできました!

最近のチョコ。おっとりした性格です

■亡き愛犬の声に導かれて…

ご主人とゴンが眠るお墓の前に、小さな子犬がうずくまっていたのです。おそらく生後2週間ほど。薄茶色の毛に包まれた小さな体を震わせながら、クゥンクゥンと弱々しい声を上げる子犬…。夢中で抱き上げてマフラーに包んでやると、ヒシっと安田さんに身を寄せてくるではありませんか。「その時にね、ゴンの声が聞こえたような気がしたんです。ゴンが『早くご飯ちょうだい~』ってせがんでいた時の鳴き声が。だから、あ、この子に何か食べさせてあげなきゃいけないって思って、急いで家に帰ったの」。

さぁ、その日から安田さんの毎日は激変!チョコと名付けたその子犬に離乳食を作ったり、獣医師に健康診断をしてもらったり、ワクチン接種をしたり、トイレトレーニングを始めたり…。

毎日の墓地への散歩にも、もちろんチョコと一緒に行くようになりました。「おそらく、心無い誰かが人目のつかない墓地にチョコを捨てたんでしょうね。でもね、私にはチョコが主人たちのお墓にいたことが、偶然だとは、とても思えないの。私が1人で寂しく暮らしてるのを見かねて、主人とゴンが天国からチョコを届けてくれたんじゃないかって…、どうしてもそう思えるのよね」。

チョコが家に来てもうすぐ1年。散歩中に知り合った犬友達と一緒にカフェにいったりドライブに出かけたりすることも増え、ご主人の死後、単調になりがちだった安田さんの生活は再び活気を取り戻しました。友人にも「元気になってよかったわね」と声をかけられる度に、「チョコのおかげよ」と答えていると言います。「チョコのためにも、そして天国の主人とゴンを安心させるためにも、1日でも長く、元気に過ごさなくちゃって思っています」。

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