障害ある猫を育てたい! ペット防災と保護猫活動に尽くすキャリア女性の40年の軌跡

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【ペットと一緒に vol.227】by 臼井京音

ニッポン放送「ペットと一緒に」

東京都中央区に暮らす大山幸子さんは、約40年間、地域に根差した保護猫活動を地道に行って来ました。

障害のある猫を迎えたり、ペット防災の活動を始めたり、22歳近い愛猫との思わぬ生活が続いたり……。今回は大山さんの40年間の猫とのヒストリーを紹介します。

 

保護活動はしても愛猫は迎えず!?

東京都中央区の“動物と暮らしやすいまちづくり会”の代表を務める大山幸子さんは、2021年1月現在、8匹の保護猫と暮らしています。最高齢は、21歳7ヵ月というご長寿猫のミウちゃん。

「ミウは、我が家で4代目の猫です。21年前、生後2ヵ月弱くらいの子猫がポツンと1匹でいるのを勤務先の駐車場で発見しました。猫仲間を呼んで捕獲して、誰が引き取るかと2時間ほど井戸端会議(笑)。結局、私が家族の一員として迎え入れました」

そう語る大山さんが猫の保護活動を始めたのは、いまから40年近く前。

「20代のころに、ひとりで猫の保護活動をスタートしました。近所の子猫を保護して飼い主になってくれる方を探したりと、地味な活動でしたね」

ミウちゃんが20歳のころ

10年以上にわたり多数の保護猫を新しい家族のもとへ届けて来た大山さんでしたが、38歳のときに初めての愛猫を迎えることになったと言います。

「ペット可のマンションを購入したのがきっかけです。それと、お譲りした猫たちが、病気や事故で半年後に亡くなってしまうといった悲しい出来事が続いた時期だったので、自分で迎えて世話をしたいと思い始めたのも大きな理由ですね」

こうして、モモちゃん、マオくん、リキくんと暮らし始め、4代目のミウちゃんも先述の緊急会議を経て迎え入れたとのこと。

左から、マオくん、モモちゃん、リキくん

「ところが、成猫になったミウとマオがある日、大げんかをしたんですよ。負けて寝室に逃げ込んだミウはそれ以来ずっと、寝室からほとんど出て来ません。マオ亡きあとは我が家のぬしのようなミウ様なのですが、現在も『寝室のじゃなくて浴室の水を飲ませてニャー』という定時の主張を聞いた私がドアを開けて差し上げるまで、寝室でのんびり。扉から出ると、ペタペタと歩きながらお風呂場へ。飲水後は浴室横の部屋をチェックして、寝室に戻るというルーティーンを守っているんですよ。マイペースなミウはおもしろいですね」と、大山さんは笑います。

寝室にて 若かりしころのミウちゃんと、10歳で旅立った麻依ちゃん

障害のある猫ばかりを譲り受ける

ミウちゃんは、慢性腎不全を患い猫風邪をたまに引くものの、元気で過ごしているそうです。

「定期的に健康診断を受けに行く動物病院では、キャリーバッグから自分でピョンと飛び降りて診察台へ。そして診察が終わるとジャンプしてバッグに入ります。衰えを感じさせない身のこなしですよ。食事は、前菜のトロトロの栄養缶と、メインの缶詰ごはんもしっかり召し上がっています(笑)。とはいっても、最近は私が帰宅すると、ミウがうんちまみれになっていることもしばしば。近頃は、ミウのためにたくさんの時間を割いていますね」と、大山さんは語ります。

けれども、これまで大山さんはほとんどミウちゃんにかまうことなく、他の愛猫たちの世話が中心の生活だったとか。「障害のある保護猫を私が迎え入れることが多かったので、手のかからないミウは空気のような存在だったんですよ」とのこと。

離乳前の子猫育てやミルクボランティア活動も労力がかかります

大山さんがミウちゃんよりかわいがっていたと語る愛猫の1匹が、サラちゃんです。

「サラは生後1ヵ月ほどで交通事故に遭い、しっぽと片手を失ってしまいました。片目もありません。かかりつけの動物病院で里親募集をしていたサラに片目で見つめられた瞬間に一目ぼれをして、ぜひ我が家に迎え入れたいと申し出たんです。脳に障害があってクルクルとまわっている伽羅ちゃんも、ご縁があって私のもとへ来てくれました。甘えっ子で、すぐに膝に乗って来てかわいいですね」

動物病院には「譲渡先が見つかりにくい障害のある猫がいたら、声をかけてください」と、大山さんは伝えてあったと言います。

片脚と片目のないサラちゃん

障害を持つ猫たちの他、去勢・避妊手術を受けさせてエサをあげていた地域猫が衰えて来ると、大山さんは最期はあたたかい室内で過ごさせてあげようと自宅に連れ帰ることもありました。

「ミウがここまで長生きしたのは、『アタチのことも一度はしっかりかまってよね!』というアピールなのかも知れませんね(笑)。もしそうだとすると、ちゃんといまはミウの願いを叶えてあげられています」(大山さん)

脳に障害のある伽羅ちゃん

ペット防災の啓もう活動をスタート

個人で地道に猫の保護活動を続けていた大山さんに、2011年、転機が訪れました。

「東日本大震災の発災後、会社から自宅に、祈るような気持ちで愛猫のもとへ向かったときのことを忘れもしません。愛猫たちは無事でしたが、その後、被災者のペットの画を無償で描いているうさ氏の展覧会で、大震災でペットと離れ離れになった飼い主さんの存在を知りました。飼い主さんのメッセージカードを読みながら、あふれる涙を止めることができませんでした」

大山さんが最後に保護した姉妹猫の小桃ちゃん(左)と小梅ちゃん

大山さんは、災害時に救えるかも知れない命のために役立ちたいと、“ペット災害危機管理士(R)(1級)”や“愛玩動物救命士”の資格を取得。

東京都中央区の“動物との共生推進員”として、また、同区の“動物と暮らしやすいまちづくり会”の代表として、ペット防災に関する啓もう活動をスタートさせました。

ペット防災に関する講義を行う大山幸子さん

「ふだんはまったく犬や猫に関係のない仕事をしている私を、いまのような活動へと導いたのは、40年ほど前に保護した1匹の子猫だったんですよね。不思議なものです」

膝の上に入れ代わり立ち代わり上って来る愛猫を撫でながら、そう言って微笑む大山さん。今後は、ペットと暮らす高齢者の福祉相談といった活動もして行きたいと構想を練っているそうです。

連載情報

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ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!

著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。


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