室内で烏骨鶏の放し飼いをスタートさせた夫婦が得た、笑顔の毎日
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【ペットと一緒に vol.155】by 臼井京音
伊豆半島の山麓で、真っ白な鶏である烏骨鶏(うこっけい)のヒナ3羽と、中島夫妻は暮らし始めました。リビングで放し飼いという、烏骨鶏ライフとは? 今回は、ヒナの成長と中島夫妻のストーリーを紹介します。
衝撃的だったチャボとの出会い
静岡県の旅館に夫の勤務先が変わると同時に、出身地の伊豆の国市で一軒家暮らしをスタートさせた、中島淳子さん。
「せっかく自然豊かな土地だし、夫と、何かペットを飼おうと話していたんです。私は結婚前にラブラドール・レトリーバーと暮らしていたので、犬も候補に挙がったのですが、犬は散歩も大変ですし、愛犬を病気で亡くした悲しみも少し蘇って来て迷っていました」と語る淳子さんは、偶然にも新居の近所にあるカフェで衝撃の出会いがあったそうです。
「カフェのママさんのご家族がチャボのオスを保護して、そのままペットとして娘さんがかわいがっていると聞きました。ある日、そのチャボのマルくんを見せてもらったんです。そこで『ええ~っ、鳥ってこんなことできるの?』と、衝撃のかわいさにすっかり夢中になってしまいました」。
マルくんは、ベビーカーの持ち手にちょこんとつかまって登場したとか。
「すごい! と、感動しましたね。マルくんは、私たちが抱っこしてヨシヨシと撫でてもじーっと動かず、とてもおとなしくてかわいくて。そのとき、『そうだ! 父のところにいる烏骨鶏のヒナをもらって飼おう』と思ったんです」(淳子さん)。夫も、庭の草も食べてくれる鶏は住環境に合うため、大賛成だったと言います。
烏骨鶏のヒナ3羽がやって来た!
淳子さんの実家は、現在は伊豆の国市のイチゴ農家ですが、かつて養鶏をしていたこともあるそうです。
「いまは趣味で約50羽を飼育しています。さっそく、父に烏骨鶏のヒナが生まれたら飼いたいとお願いをして、烏骨鶏のことをいろいろと教えてもらいました」。
こうして、2019年2月末に生まれた3羽の烏骨鶏のヒナが、3月1日に中島家にやって来ました。
「オスの烏骨鶏は、成鶏になると『コケコッコーッ』と雄叫びを上げるんです。早朝などに鳴かれると近所迷惑かもしれないと懸念し、父にはメスだと思われるヒナを選んでもらいました。オスかメスかどころか、3羽の見分けがほとんどつかないので、名前はみんなピーちゃんにしたんですけどね(笑)」と、淳子さんは振り返ります。
室内飼育で3羽を育てる
ピーちゃんたちは、室内で飼育すると決めていたそうです。ウサギ用のケージで寝かせ、淳子さんや夫が在宅のときは放し飼いにしていたとか。
「白くてフワフワなヒヨコみたいな小鳥たちが、コロコロと床を転げるようにして走っている様子がかわいくて、幸せな気持ちでずーっと眺めていました」と、淳子さんは頬を緩めます。
苦労したのは、トイレ事情だったと言います。「犬や猫と違って決まったところに排泄をしません。なので、床はフローリングにして、排泄をしたらすぐにティッシュで拭っています。でも、排泄物を処理する煩わしさなんて、この子たちのかわいさを考えればまったく苦になりませんね」とのこと。
鶏用のおむつを開発している愛好家や、人間用のマスクを細工してペットの鶏に装着させている飼い主さんもいるそうですが、中島家では自然に過ごさせるスタイルを選択していると言います。
仕事にも3羽を連れて行く
淳子さんは、車で15分ほどのところにある実家のイチゴ農家で仕事をしています。ピーちゃんたちも、犬用のキャリーバッグに入れて一緒に職場に行くのだとか。
「なかなかキャリーバッグに入ってくれないのが、悩みのタネですね。玄米や小松菜などをバッグに仕込んで釣って入れています(笑)。私の仕事中は、日陰や網のあるハウスのなかで自由にさせているんですよ。イチゴの苗などには触れないようになっていますが、3羽そろって、何かをずっとついばんでいます。草や小さな虫などかな? ピーちゃんたちを見るのが、私の仕事中の癒しでもあります」(淳子さん)。
ピーちゃんたちと暮らし始めておよそ4ヵ月。最近、2羽が雄叫びを上げるようになったと言います。オスの特徴でもある鶏冠(とさか)も、次第に出て来たそうです。
「夫と一緒に、尾が少し長い子が長男で短い子を次男に決めたんですが、次男のピーくんはピーちゃんに、長男のピーくんは何と私たち夫婦に向かって求愛行動をするようにもなったんです」。
ピーくんは、羽を広げて横歩きをして、中島さん夫妻に寄って来るそうです。「烏骨鶏との生活は、すべてが初めてのことばかり。私たちはヒナの成長と変化も楽しんで見つめています」と、淳子さんは微笑みます。
近所では烏骨鶏ブーム到来!?
中島家の烏骨鶏ライフと、カフェのママさん家族のニワトリ愛に影響を受け、最近は近所でさらに5軒ほど、淳子さんの実家で生まれた烏骨鶏を飼う人が現れたそうです。
「何度も口にしてしまいますが、とにかくかわいいんですよ~。どうも、1羽だけで飼ったほうが飼い主さんにべったりになるようですね。我が家の場合は、3羽の社会ができあがっているような感じがします」と、淳子さん。ピーくんとピーちゃんは、暗くするといつも3羽でくっついて眠るのだとか。
中島さんが仕事から帰宅すると、玄関まで3羽そろって迎えに行くのも習慣だと言います。
「名前を呼ぶと、『コッコッコー』と言って返事をしてくれるんですよ。私たちの思い込みかな(笑)。いずれにしても、ピーちゃんたちは大切な家族の一員です」。
そう語る淳子さんは、ピーちゃんたちのおかげで家族の笑顔が増えたとも喜んでいます。
連載情報
ペットと一緒に
ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!
著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。