チワワの衝動買いを妹に説教した姉が導かれた、犬の洋服づくりの仕事
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【ペットと一緒に vol.151】by 臼井京音
ペットの洋服をはじめとするハンドメイドグッズづくりの講師や、自身のショップであるchikata to Luludollを運営している、國岡ちとせさん。30歳を過ぎて転職へ後押ししてくれ支えてくれたのは、昔ともに暮らしていた愛犬と妹さんが衝動買いしたチワワでした。
ペットロスを経験したから
國岡ちとせさんを現在の仕事へと導いたのは、妹が迎えたチワワだったと言います。
「いまから20年ほど前のことです。当時、それぞれ独り暮らしを始めたばかりの妹と私でしたが、2頭のチワワをペットショップで衝動買いしてしまったと妹から聞いた日の衝撃は、忘れられません。姉として『よく考えてから迎えるべき』と、お説教をしたのを思い出します」と、國岡さん。
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犬と猫の洋服のハンドメイドレッスンの様子(右が國岡さん)
実は國岡さんが妹と実家で生活をしている30年前、近所の家で生まれた子犬をもらいに行き、家族の一員として大切にしていた経験があったそうです。
「昔の犬事情あるあるって感じですが、庭にときどき出して自由にさせていた家庭犬のところに、どこからかオス犬が入り込んで来て、子犬が産まれてしまったそうなんです。メス犬はゴールデン・レトリーバーのような室内犬でしたが、オス犬は昔ながらの和犬風の雑種。我が家に迎えたモコも、最初はフワフワでしたが成長するにつれて和犬風になって行きました」と、國岡さんは振り返ります。
当時の雑種にしては珍しく、外に犬小屋はあるけれども室内で多くの時間を過ごさせるという飼い方をしていたそうです。
「なので、モコが亡くなったあとは家族全員がひどいペットロスに陥ってしまって。『思い出すと涙が出るから、写真もしまっておいて』というような状態でした。あまりのつらさから実家の父母はもう犬を飼わないと。妹は、モコの面影を追う意味でも、犬が欲しかったんでしょうね」。
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國岡さんのレッスンで飼い主さんが手作りした洋服を着て
妹が衝動買いしたチワワが転機に
妹さんは、「たまたま入ったペットショップで、小さな豆粒みたいなチワワの兄弟が肩を寄せ合ってブルブル震えていた。目が合って、連れて帰りたくなる気持ちを抑えられなかった。それで、引き離すのはかわいそうなので2頭とも一緒に、ローンを組んでその場で購入して連れ帰った」と、國岡さんに説明したとか。
「そうした衝動買いにモヤモヤしましたが、実際には2頭とも本当にかわいいんです。久々に、犬のぬくもりに触れて、私も2頭にすっかり情が移ってしまいました」(國岡さん)。
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妹さんの愛犬、あんずくんとあずきくん
2頭を妹さんから預かることもあったため、國岡さんはチワワ兄弟のためにペット可の賃貸物件を探して引っ越しまでしたそうです。
「チワワたちは営利目的で、パピーミルで乱繁殖されたのでしょう。遺伝が関係するとされる病気を次々に発症しました。その治療で大変でしたが、アパレル関係の多忙な仕事で体調を壊して転職を考え始めた私に、2頭の存在は癒しと勇気を与えてくれましたね」。
当時32歳だった國岡さんは、犬と暮らす楽しさを提案するため、犬の洋服づくりをレクチャーする仕事を自分で興そうと決意。「妹があんずとあずきを衝動買いしていなかったら、きっと違う人生になっていたと思います」と、國岡さんは語ります。
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多くの飼い主さんが愛犬同伴で國岡さんのハンドメイド教室に参加
チワワ育てには自信がついたけれど……
転職後、自分の犬を迎えようと思い始めた國岡さんは、病気や育て方などチワワに関しては自信がついたこともあり、保護犬も含めてチワワを探し始めたと言います。一般の愛犬家が自家繁殖をしたようなアットホームなブリーダーの犬舎で、國岡さんは、現在の愛犬ピコリくんに出会いました。
「最初は、性格や見た目で気に入った母犬の出産を待って、迎える予約をしたんです。でもピコリを見て、何かピンと来るものがあって。すでに生後5ヵ月で、ブリーダーさん自身の愛犬として残そうかと迷っていたそうなんですが、私が迎えることにしました」。
それから1ヵ月ほどかけて犬を迎える準備を整えた國岡さんのもとへ、生後半年を過ぎたピコリくんがやって来ました。
「もともと体が大きめのチワワだったし弱々しさは感じませんでしたが、環境の変化で緊張しすぎたようで、到着したらさっそく血便。私も、うれしさより不安が勝った門出になりましたね」とのこと。
さらに、ピコリくんは國岡さんが外へ連れ出すとフリーズして歩かず、抱っこをすると怖いものから目を背けるかのように國岡さんの腕に顔をうずめてしまったそうです。
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ピコリくんと國岡さんの旅先でのワンシーン
「畳の上に置けば、縁のところを境界線に感じるのか、隣の畳に移れないし……。臆病なのか、社会化不足なのか。もしかして、こんな広い世界じゃなくて、ブリーダーさん宅に戻って暮らすほうがピコリは幸せなのかなぁ。と、悩んで泣いたりしていました」。
それでも、動物病院のパピーパーティに参加したり、犬のトレーニングの本などを読みあさったりして、あらゆる方法でピコリくんの社会化に取り組んだ國岡さん。
「最初は臆病だからと過保護にして甘やかしていたんですが、頼りがいのあるしっかりした飼い主になろうと方向転換をしてみたところ、ピコリにも変化が現れたんです。1度、誰もいない公園でロングリードでピコリを放して私が遠ざかったところ、たぶん不安感から失禁してしまったんですが、私が『すごい! ピコリ、えらいね~。外でもおしっこできたー!』って大げさにほめたら、しっぽが上がったんですよ。それ以来、自信がついたような気がします」。
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ピコリくん(左)はどんな犬とも仲良しに(小物も手作りというハロウィン企画教室のあとに撮影)
洋服づくりをとおして人と犬を笑顔に
愛犬との楽しいライフスタイルを自ら実現した國岡さんは、どこでも誰でも平気になったピコリくんと一緒に、全国のソーイング教室に出向くようになりました。レッスンに参加した飼い主さんは、13年間でのべ1300名に上ります。
「藤を一緒に見に行くからと、紫色の洋服を作った飼い主さんが、さっそく旅先から写真を送ってくださったりするとうれしいですね。愛犬とのお出かけを充実させるための一手段として、洋服は役立っていると感じます」と、國岡さん。抜け毛の飛散予防や、熱中症や防虫対策として役立つからという理由だけでなく、飼い主さんと愛犬との思い出づくりにも洋服は一役買っているようです。
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「洋服を着ると笑顔になります!」と、レッスン参加者が國岡さんに送ってくれたワンショット
「旅立った愛犬のための洋服を作りたいといらした飼い主さんも、印象に残っています。『かわいい洋服を着せてあげられなかったから、思いを込めて手作りしてあげたい』とのことでした。洋服という物を介しての場なので、参加していたみなさんともなごやかに、思い出を語りあえたのではないでしょうか」。
これからも、飼い主さんの笑顔と、それを目の前にして笑顔になる愛犬との思い出を、國岡さんはモノづくりをとおして提案し見つめ続けて行きたいと語ります。
連載情報
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ペットと一緒に
ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!
著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。