ペットロスカウンセラーに聞く、ペットを失い悲しむ人への最良の寄り添い方

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【ペットと一緒に vol.223】by 臼井京音

ニッポン放送「ペットと一緒に」

ペットロスカウンセラーで獣医師でもある宮下ひろこさんに、筆者は相談をしました。7歳や10歳という若さで、筆者の友人の愛犬が立て続けに旅立ち、悲しみに暮れる友人の心をどうすれば癒せるか悩んだからです。

今回は、身近な人がペットを失って悲しんでいるとき、そばにいる者として取るのに好ましい言葉や行動についてお伝えします。

 

友人の愛犬が急逝したことを知り……

今秋、筆者の友人が相次いで愛犬を失いました。子犬のころから筆者もよく一緒に遊んだ犬たちです。

わずか7歳で急性膵炎で急逝したAちゃん、心臓病(僧帽弁閉鎖不全症)の手術を検討していたさなか、消化管腫瘍が見つかり余命数ヵ月の宣言を受けて10歳で旅立ったBちゃん……。

筆者は、友人たちから受け取ったメッセージを読んで、涙があふれました。

「ひたすらAに会いたい。昨日の心細そうな目が忘れられない。全部、私のせい。本当にかわいそうなことをしてしまった」

「つらい。酸素が入って来ないみたいに胸が苦しい」

Aちゃんが、朝起きたら冷たくなっていたという一報をくれた友人は、このように語ります。

筆者が少女時代によく遊んだビーグル

「自宅で家族そろって看取ることができてほっとしています。本当に天使みたいなコでしたから、神様に早くお返ししなくてはならなかったのかも」というような内容を、Bちゃんママは記す一方、「あの子の姿がなく、もう会えないと思うだけで涙が止まりません。もぎ取られた思いが強くて、苦しいです」とも胸の内を明かします。

筆者もまた15歳8ヵ月の愛犬を目の前にしながら、自分だったら何を望むかを想像してみたものの、友人たちにどのような言葉をかけてよいか思いつきませんでした。

どうやったら、友人たちの力に少しでもなれるのか……。それを知りたくて、筆者は獣医師でペットロスカウンセラーの宮下ひろこさんに尋ねてみました。

筆者の現在の15歳8ヵ月の愛犬

“傾聴”が心を癒す

「京音さんのように、身近な心許せるような誰かに本音を吐き出せること。それだけで、ご友人たちの心を癒すことができていると思います」と、最初に宮下さんは言いました。

それを聞いて、友人たちの力になれていないのではないかと感じていた筆者は少し安心しました。

「悲しみが深すぎてどうしていいかわからない人に、悲しみの湖の底から引っ張りあげようとするような言葉は、あまり助けにならないと思っています。つい元気づけてあげたくなりますが、仲のいい方だったら、ただただ一緒に、悲しむ。それがベストかも知れませんね」(宮下さん)

自身もペットロスを経験した宮下ひろこさん

宮下さんはまた、愛犬や愛猫を亡くしたばかりのときは、思考と感情が分離してしまいがちだと言います。

「後悔や自分の選択を責める気持ちも大きいものです。そのような人に『○○ちゃんは、一緒に過ごした日々が幸せだったと思うよ』といった言葉をかけても、心に響かないこともあるかも知れません。こうした言葉は、ペットを失った方との関係性やその方の性格によっても異なりますが、時間が経ってからかけたほうが助けになるようです」

宮下さんは、亡くなったペットのことを実際に知っている場合は、「○○ちゃんとは、こんな思い出があったね」「○○くんは、こんな感じでしたよね」と、思い出を飼い主さんと一緒に話すそうです。

「その会話のなかで、『突然でびっくりした』とか『心に穴がぽっかり開いたみたい』というような気持ちが語られた場合は、『そうですよね、突然でびっくりしましたよね』『そうなんですね、心に穴が開いた感じなんですね』と、相手の言葉を受け止めて繰り返します。カウンセリング用語では“傾聴”と呼ぶのですが、相手の言葉に耳だけでなく心も傾けながら、受容と共感を持って聴くようにしています」

筆者が20歳のときに12歳で旅立った愛犬

AちゃんやBちゃんの思い出ならば、筆者も友人と一緒に語り合えると感じました。また、友人の言葉を真摯に聴くことならば、筆者にもできそうです。

 

人はそれぞれ価値観が違うから

かつて宮下さん自身、こんな経験をしたとも言います。

「私は以前、相手を励ます言葉を探そうとしている間、その人の話を集中して聞けていないことがありました。いまとなっては、反省点ですね」

親しい間柄だと、つい自分の意見や経験を述べたくなってしまうでしょう。たとえば、「次のコを迎えたら、気持ちが切り替わると思うよ」など。けれどもこうしたアドバイスも、まだ喪失感でいっぱいの人には時期尚早なのかも知れません。

「自分の考えや思いは一旦横に置きながら、いかに相手の言葉と気持ちをていねいにすくい上げつつ話を聴くか。それが、大切なのではないかと思っています」(宮下さん)

たくさん記録しておきたい、日常のワンシーン

宮下さんはまた、ペットロスカウンセラーとして、人による死生観の違いも実感したそうです。

「ある方は知人からの『いつも○○さんのことを見守ってくれているはず』という言葉に対して、『そういうのを求めているわけじゃないんです』と、少し怒りも混じった声色で語っていました。また別の方は、友人から『きっと○○ちゃんは“虹の橋”で待ってくれてるよ』と言われたそうですが、『待っている必要はなくて、私としては自由に先の世界に行ってて欲しいんですよね』と、戸惑っていました」

相手が自分とは違う価値観やイメージを抱いていることも考慮しつつ、やはり“傾聴”によって相手を肯定しながら向き合うのが最良と言えそうです。

また、親しい間柄であれば相手の状況を気にかけて、「どうしてる?」などと折に触れてメッセージを送っていれば、いつでも気持ちを共有できる相手がいるという安心感も得てもらえるでしょう。

写真を眺めることは感情の整理に役立つと言います

愛するものを喪失したときに生まれる悲しみからの回復は、衝撃期、悲痛期、回復期、再生期の4つの過程をたどるという一説が、心理学にはあります。

宮下さんの話を聞いたいま、友人たちがどのステージにあっても、相手に寄り添いながら自分なりのサポートができるのではないかと思えるようになりました。

連載情報

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ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!

著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。


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