■赤ちゃんが来た日、愛犬がまさかの行動に…
ご主人と5歳の長女・ほのかちゃん、そして愛犬の桃子(8歳、ヨークシャーテリア)と一緒に都内で暮らす上田紀代さん。
子どものころから犬が大好きでしたが家庭の事情で飼うことができなかったため、結婚後、念願かなって飼い始めたのが、桃子です。
桃子はとても飼いやすい犬で、上田さん夫妻の愛情をたっぷり注がれて育ちました。
ヨークシャーテリアは気が強いコが多いといわれますが、桃子はどちらかというとおとなしくて、とても甘えん坊の犬。
夜は桃子が私のふとんに潜り込んできて、一緒に眠るんですよ。
桃子の安心しきった顔をみるのが、大好きです。
ほのかちゃんが生まれるまでは、桃子を車に乗せてドライブ旅行にでかけることもしばしば。
桃子は誰に対しても比較的フレンドリーで、友人が家に遊びにきても、よくなついていました。
だから、ほのかを授かったときも、桃子ならきっと大丈夫。
赤ちゃんを見守ってくれるはずだと思ったのです
ところが、事態は予想外の展開に。
出産を終えた上田さんがほのかちゃんを家に連れ帰った日から、桃子が元気を失っていったのです。
そして、上田さんとほのかちゃんがいる部屋とは別の部屋に行ったまま、いくら
桃子、こっちにおいで!
と呼んでも、出てこなくなってしまいました。
■「桃子も、ほのかも大事な家族だよ」
最初は「見慣れない赤ちゃんに人見知りしているのかな?」と軽く考えていた上田さん。
ところが、日を追うごとに桃子は元気を失っていきます。
出産祝いに友達が遊びにきてくれても、別の部屋に入ったっきり。
以前はなついて遊んでもらっていた顔見知りの友達にも寄ってきません。
知らない人が出入りするストレスもあってか、おう吐してしまった日もありました。
かかりつけの動物病院で診てもらっても、体には異常なし。
獣医師からは
赤ちゃんにママを取られたような気がして、やきもちを焼いているのかもしれないね。
桃子にも気をつけてあげて。
とのアドバイスが。
桃子の変化に誰よりもショックを受けていた上田さんは、ある決意をします。
子どもが生まれたからといって、桃子への愛情が減ったなんてありえません。
確かに出産直後は授乳や夜泣きで目いっぱいだったけど、桃子を大切に思う気持ちは変わっていないのです。
なんとしても、それを桃子に伝えたいと思いました。
その日から、上田さんの挑戦が始まりました。
生後間もないほのかちゃんを抱っこひもでしっかり体にゆわえつけて、毎日、桃子の散歩に行くようにしたのです。
そして、ことあるごとに
桃子はいいこだね!
と話しかけ、たくさん体を触ってあげました。
ほのかちゃんの顔もたくさん見せて、
桃子、新しい家族のほのかだよ。ほのかも桃子と同じ、大事な家族なんだよ。
と語りかけました。
するとその言葉が伝わったのか、桃子の様子に変化が…。
ほのかちゃんのいる部屋に入るようになり、まるで番犬のようにほのかちゃんを見守るようになったのです。
■「川の字+1」で眠るしあわせ
あれからもうすぐ5年。幼稚園の年長さんになったほのかちゃんと桃子は大の仲良し!
ほのかが物心つくまでの間、桃子は本当によくほのかの相手をしてくれました。
赤ちゃんだったほのかに尻尾をつかまれたり、ひげを触られたりしてもグッと我慢(笑)。
本当にお姉さんのようにほのかに接してくれたのです。
ほのかも最近は桃子にごはんをあげたり、お散歩のときにリードを持ってくれたり…と、桃子のお世話ができるようになりました。
桃子とほのかは本当に姉妹みたいですね」。
上田さんの言葉通り、上田家のアルバムには桃子&ほのかちゃんのツーショット写真がいっぱい!
クリスマス、お誕生日会、ピクニック…、大切な思い出の場面にはいつも笑顔のほのかちゃんと、そっと寄り添う桃子の姿があります。
妊娠が分かったとき、ペットの世話と子育てが両立できるかどうか不安に感じる女性は多いと思います。
私も、桃子が元気をなくしてしまった当初はとても不安になりました。
でも、ペットも赤ちゃんもどちらもかけがえのない大切な家族なんだっていう強い気持ちがあれば、大丈夫。
その気持ちはペットにも赤ちゃんにもちゃんと伝わるはずです。
夜、上田さんご夫妻とほのかちゃんが川の字になって寝ている布団に、もぞもぞと入ってきて一緒に眠る桃子。
川の字+1で眠っていると、ふくふくと幸福感がこみあげてきます。
ああ、これが私の家族だな~って。100点満点じゃなくてもいい、我が家なりに穏やかで愛情たっぷりの時間をこれからも大切にしていきたいと思います。