“子供が成長した”“定年になった”など、時間が出来たことをきっかけに増えているのが今日のテーマ『大人の学び直し』。
『大人の学び直し』とは・・・学生の頃、遊びやアルバイトなどに夢中でしっかり勉強してこなかった分を、今きちんとやり直して知識を身に付けたい、というもの。
では何を使って学びなおすのか?
ズバリ、「教科書」です。
JR大久保駅から徒歩1分の所にある、教科書販売会社「第一教科書」。
ここは、学校に教科書を卸すのが基本的な業務ですが、一般の人も買うことができます。
そこにやってくるのが30代から70代の大人たち。
歴史などの社会科、国語、数学、英語などの教科書を手に取ってはあれこれと買っていきます。
もう忘れてしまっているでしょうが、親の負担を考えて、教科書の価格というのは安く設定されています。
1冊300円から900円程度。
たとえば様々な作品が載っている「現代文B」は860円。
大人たちが“安い!”と買っていきます。
こうした「教科書そのもの」を使って大人が“学びなおす”こともありますが、もうひとつ、非常にヒットしているのが『教科書をベースにした、大人の学び直しの為の本』。
その代表的な例が、山川出版社の「もういちど読む」シリーズです。
都立高校の「日本史B」の山川率は75%以上。
全国でも多くの高校で社会科の教科書として採用されていますから、大昔、この本で勉強した人も多いことでしょう。
この圧倒的シェアを誇る山川出版社にも大きな悩みがありました。
それは・・・教科書の編集方針に大きな影響を与える学習指導要領がおよそ12年に1度改訂されるごとに、教科書を書き変える。
すると、それまでの教科書の原稿が紙くずになってしまう。
“それではもったいない!”と、何とか活かそうと考えたのが「少し補足・再編集して、大人向けの教科書として出版」という方法でした。
こうして2009年出版されたのが「もういちど読む 山川日本史&世界史」
山川では、売れるとはこれっぽっちも思っていなかったそうなんですが、ところが大ヒット。
以降、毎年4月に新作を発表していて「世界現代史」まで、累計10作。
シリーズ合計、なんと100万部以上売れているのです。
なぜここまでヒットしたのか?
「あさラジ」コメンテーターでおなじみの作家、佐藤優さんは、『ベースにした教科書が良かった』と言います。
というのは・・・山川には3種類のバージョンがありまして、進学校は「詳説日本史・世界史」を採用。
これは細かすぎてやたら文字ばっかりで、今読んでも頭に全然入ってこない。
ところが、主に農業系、工業系など実業高校が採用しているシリーズは、読み物として非常に分かりやすく、通史がすんなり頭に入ってくる。
「もういちど読む」のシリーズは、この実業高校系の教科書をベースにしたのです。
これが良かった!
しかも歴史研究が進み、昔習ったことと歴史認識が違う箇所がいくつかある。
その細かい解説が、昔との比較として興味深い。
例えば・・・
★かつて「大和朝廷」と呼ばれていた4世紀から7世紀の中央政府は、「大和」の表記が用いられるのは8世紀後半以降であることなどから、現在では、ヤマトをカタカナで「ヤマト政権」と表記されることが多い。
★聖徳太子という呼び名は、生前用いられず、没後100年以上経過したあとに現れているので、今は「厩戸皇子」(ウマヤドノオウジ)で習う。
★「源頼朝像」とされてきた肖像画が足利直義とする説が出ていることなどから「伝源頼朝像」と表記されるようになった。
佐藤優さんは、こうした教科書のようなフラットな教養書で学びなおすことは、ビジネスパーソンにとっても大変有効であると力説しています。
歴史小説で学びなおす人について、”それは娯楽であって、まずは正しい史実を身に付けてからにすべきだ”という考え。もっともだと思います。
これを危惧した佐藤さんが、自身が外交官時代に肌身離さず持って読んでいた歴史参考書を基に作った本「いっきに学び直す日本史」シリーズも、すでに10万部とこちらも大変好調です。
佐藤さんならずとも、外国人に必ず聞かれるのが「日本の歴史」。
それを学びなおすなら歴史小説ではなく、教科書のような通史が向いているのです。
そして、せっかく手に入れた知識をもっと確実にしたいなら、高校生が使う山川の副教材「書き込み教科書」も有効です。
これは、キーワードを教科書に自分で入れていく、という暗記用の教材。
中高年も楽しみながらやっているんだそうです。
“大人の学び直し”ブームは「山川の社会科」がけん引していますが、今後、佐藤優さんは「数学」や「英語」について、“私が、大人の学び直しのイイ教科書を出すつもり”と鼻息荒く言ってました。
この「学び直し」は、まだまだ様々な科目で広がり続けることは間違いありません。
※山川出版社のHPより
6月21日(火) 高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より