番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】
今日は、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に影響を受け、ゴミを燃料に、本当にデロリアンを走らせた男性のグッとストーリーをご紹介します。
2015年10月21日 16時29分・・・映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー2(ツー)』で、マイケル・J・フォックス演じる主人公マーティーが、アメリカ車・デロリアンを改造して作ったタイムマシンに乗って、1985年から、30年後の未来へタイムスリップしたときの時刻です。
去年は、その「30年後の未来」にあたるメモリアルイヤー。これを記念して、東京・お台場で、デロリアンを、映画の設定と同じ時刻に走らせるイベントが行われました。
《FUKU-FUKU×BTTF GO!デロリアン走行プロジェクト サイト》
URL:http://fukufuku-project.jp/GoDelorean/
しかも、ただ走らせるだけではありません。映画では、タイムマシンを開発した博士(はかせ)・ドクがバナナの皮や空き缶など、ゴミをデロリアンに補給すると、それが燃料に変わっていましたが、このイベントで使ったデロリアンも、繊維ゴミ、つまり「古着から作られた燃料」で走ったのです。
企画したのは、岩元美智彦(いわもと・みちひこ)さん・52歳。
繊維製品やプラスチック製品などをリサイクルする会社・日本環境設計の会長です。
「うちの会社は、着古した衣類を原子・分子レベルで分解して、自動車の燃料になるバイオエタノールを作っています。これを『FUKU FUKU(ふくふく)プロジェクト』と呼んでいますが、その目玉が、デロリアンを走らせることでした」と言う岩元さん。
時計の表示が、映画の設定と同じ「16時29分」に近付くとカウントダウンがスタート。
「3・2・1・ゼロ!」の声と同時にデロリアンが走り出すと、観客から歓声が上がりました。
「私は大学生のとき、彼女と一緒に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を観て、『将来は、ゴミで車が動く時代が来るんだ!』と感激したんです。ところが現実は、いつまでたってもそうならない。だったら、自分で動かしちゃえ!と。バカでしょ?(笑)」
そう笑顔で語る岩元さんは、大学卒業後、繊維関係の商社に就職。そこで知ったのは、日本では衣料品のリサイクルが進んでおらず、年間200万トンにも及ぶ繊維ゴミのほとんどが、焼却されるか、埋め立てられているという事実でした。
「何とかならないか?」と考えていたとき知り合ったのが、当時、大阪大学でバイオエタノールの研究に携わっていた高尾正樹(たかお・まさき)さん。岩元さんより一回り以上年下の、若き研究者でした。
ある日、岩元さんは、居酒屋でビールを飲みながら、高尾さんにこんなアイデアを持ちかけます。
「バイオエタノールって、トウモロコシから作れるんでしょ?だったら、綿(めん)からも作れるんじゃない?」。
高尾さんの答えは「やれるんちゃいますかね」。
その一言に背中を押され、2007年、岩元さんは日本環境設計を設立し、社長に就任。
「ビールもエタノールの一種ですけど、あのとき僕らは、エタノールを飲みながら、エタノールを作る話をしていたんですね(笑)」と、笑いながら振り返る岩元さん。高尾さんも会社に参加し、専務として岩元さんを支えていきました。
岩元さんが会社を始めるにあたって、まず目指したのが「循環型社会を作る」こと。
現在、日本の家庭から出るゴミの量は年間およそ4,500万トン。これを、岩元さんたちが開発した技術を使って原子・分子レベルで分解すれば、石油から作るのとほぼ同じ品質のエタノールがおよそ1,100万トンでき、そのエタノールを使って、プラスチックが1,000万トン作れます。これは、国内の年間総使用量とほぼ同じ。岩元さんはこう言います。
「このリサイクルを続けていけば、石油は要らなくなります。日本には資源がないというけれど、見方を変えると、ゴミというたくさんの“資源”が眠っているんですよ」
そういう循環型社会を作るためのPRとして、どうしても実現させたかったのが、デロリアンを繊維ゴミから作ったエタノールで走らせることでした。
ただ「リサイクルしますよ」と言っても衣類は集まりませんが、全国各地にデロリアンを派遣し「あなたの服で、このデロリアンが走りますよ!」と呼び掛けると、みんな喜んで、古着を持ってきてくれたそうです。
「そういうドキドキ、ワクワク感がないと人は動かないんです。自分たちの先端技術にエンターテインメントを加えていくことで、ゴミの回収量が増えて、コストも下がり、またぐるぐると回り出す…そんな循環をサポートしていくのが、私たちの仕事です」
「原子・分子レベルで考えると、世界にゴミは存在しないんです。そう考えれば、国同士の資源の奪い合いもなくなるし、戦争もなくなる。みんなが参加したくなる夢のある目標を立てて、循環型社会を、もっと世界に広めていきたいですね」
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