手作りの『村』に響く竹太鼓の音 【10時のグッとストーリー】
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番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】
今日は、竹林で取った廃材の竹を生かして竹太鼓(たけだいこ)を作り、さらに“村”まで作ってしまった、ある60代男性のグッとストーリー。
愛媛県松山市の人里離れた山の中に、こんな名前の架空の村があります。
「かぐや姫太陽 竹太鼓村」
竹太鼓とは、太い竹を横に寝かせて、胴の部分を木のバチで叩く楽器ですが、この竹太鼓を思う存分叩けて、老若男女、地域の誰もが自由に集うことができるコミュニティ。
竹太鼓を自ら手作りしている、その村の村長さんが林薫(かおる)さん・68歳。
本業は、松山市の電気工事店「株式会社ハヤシ電工」の会長さんです。
「竹太鼓を叩いて、体を動かせば、頭もスッキリする。みんな元気になりよるんよ。」
そもそも、林さんが竹太鼓を作るようになったのは、近くの山に竹が増えすぎたことが理由でした。
いくら伐採しても、竹は成長が早く、山は竹やぶだらけに…
切り出したの大量の竹を見ながら、林さんは「これを何かに利用できないだろうか?」と考えるようになり、思い付いたのが「竹太鼓を作ること」でした。
林さんはこう言います。
「それまで竹はゴミ扱いやったけど、ワシから見たら“宝の山”よ。」
林さんは、竹太鼓を大量に作って、老人ホームや公民館などを廻って演奏を教えていましたが、一つ問題がありました。竹太鼓は、かなり大きな音がするのです。
「街中だと『やかましい!』と、よう苦情が来よるんです。みんなが気兼ねなく、太鼓が叩ける場所はないかと考えて、それなら山の中に作ってしまえ!と思うてね。」
お年寄りたちが気兼ねなく、太鼓が叩ける場所を作ろうと、林さんは仕事の合間を見て、およそ200坪の広大な土地に、長い年月を掛けて、コツコツ一人で施設を作っていきました。
電気・ガス・水道も完備。本業が電気工事なので、そのあたりはお手の物です。
「自分の健康と、ボケ防止も兼ねてるんですよ(笑)」と笑う林さん。
竹太鼓の教室以外に、夏は「流しそうめん大会」も開催。流す筒も竹、器も竹、ハシも竹とまさに竹づくし。
竹にちなんで、林さんが名付けたこの「かぐや姫太陽 竹太鼓村」は、地域住民の憩いの場として、隠れた人気スポットになっています。
林さんがこのようなボランティア活動に熱心に取り組むようになったのは、15年前、会社が経営危機に陥ったのがきっかけでした。
25歳の若さで「ハヤシ電工」を創業し、一時は10人の従業員を抱えていた林さんですが、建設不況の波が押し寄せ受注が減少。
多額の負債を抱え、従業員も半分の5人に…。
「長年積み重ねた技術はあるんだから、それを活かすせば、道は開けるはず。」
と考えた林さんは、大手の下請けの仕事をやめ、地域密着で、店舗や個人宅など、小規模の工事を増やすことにしました。
その読みは当たり、確かな腕が評判を呼んで注文が増加。会社は危機を脱することができました。
会社再建が軌道に乗ったのは、地元の人たちのお陰…そんな感謝の気持ちから、地域貢献をしたいという思いが強くなり、2004年から竹太鼓のボランティアを始めた林さん。
そのユニークな活動がだんだん評判にになり、「コンサートで使いたいから、竹太鼓を作ってくれませんか?」「うちのイベントで演奏してくれませんか?」…そんな依頼が、地元だけでなく全国あちこちから舞い込むようになりました。
4年前に「ハヤシ電工」の社長職を息子さんに譲り、自分は会長に退いた林さん。
しかしまだまだ現役で、二代目社長を支えながら、本業でも多忙な日々を送っていますが、「かぐや姫太陽 竹太鼓村」の活動は、ライフワークとして続けていくつもりです。
「竹太鼓村に来てくれた90代のお年寄りが、1年経っても私の顔を見て、『竹太鼓は面白かったなあ』と言ってくれる。体が覚えているんやね。
これからも、人のために、自分がしたいことをするだけじゃね。」
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