東京オリンピックの招致プレゼンテーションで、滝川クリステルさんがこうスピーチしたのをご存知でしょうか?
「東京のタクシー評価は世界でナンバーワンです!」
事実、旅行サイト「トリップアドバイザー」の『旅行者による世界の都市調査結果』で「タクシーの運転手は親切だったか?」「タクシーのサービスの総合的な評価は?」などの調査で第1位の都市が東京でした。
しかし外国人から評価が高くても、日本で暮らす人たちのタメになっていなかったら本末転倒。
オリンピックに向けた外国人対策ももちろんですが、それより前から、一般庶民向けのいろんなサービスが始まっています。
東京の大手タクシー会社といえば、日本(にほん)交通、国際自動車、大和(だいわ)自動車交通、帝都自動車交通の4社。俗に「大日本帝国」と呼ばれます。
最大手の日本交通に話を聞きましたら、まず言われたのは「タクシーは拾う時代から選ぶ時代へなってきています」。そこで日本交通では徹底的にマーケティングを行い、さらにITを活用して、
いままでいなかった顧客を創造した結果が“新しいサービス”となっているのです。
その最たるものが『陣痛タクシー』。
その名の通り、妊婦さんが“生まれる!”というときに乗ってもらうタクシーです。
これまで妊婦さんは、「出産は病気じゃないから救急車はダメ」とか「タクシーだとちゃんと捕まるか心配」など、出産という一大事に大きな不安を抱えていました。
そのニーズに目を付けたのがタクシー会社。妊婦さんのためのサービス『陣痛タクシー』では、「名前」や「来てほしい場所」、「行きつけの病院」をあらかじめ登録。専用回線に電話すると、会社のコンピューター上にすぐに誰からの電話か表示され、素早く迎えに来てくれて、確実に病院へ行くことが出来る、という仕組みです。またタクシーに乗ってからの乗務員への道案内も不要です。
2012 年のサービス開始から、登録した妊婦さんは累計10万6千人。なんと都内の妊婦の7割が登録しているのです。出産時にはタクシーで向かわないこともありますから、実際、出産の際に陣痛タクシーを利用する人は、東京の新生児の3割となっています。
大事なお客さんをお送りするわけですから、ドライバーは「大丈夫ですよ」という声掛けや、乗り降りのドアサービスも一段と丁寧に。また走行時も振動が伝わらないように工夫。
タクシー会社は、こうした妊婦さんに対する心構えや対応を社員教育で徹底しています。
一方で、あまり多くはないのですが、先日も車の中で出産という出来事がありました。
期せずして出産に立ち会い、手を貸した乗務員は大感激で、「汚れたシャツをそのまま記念に残す」ことにしたそうです。いい話です。
他にも、心配で病室まで付き添って出産まで立ち会った人もいます。
『陣痛タクシー』は、乗務員にとっても、“自分が役に立てる”と社会貢献を実感するサービスになっているのです。
ちなみに…「車のシートを汚してもクリーニング代はかからない」ですし、「陣痛や出産以外の定期健診やちょっと診てもらいたい時など、いつでも利用できる」ということです。
ニーズを掘り起こしたのは妊婦だけではありません。子供だけでタクシーに乗れる「キッズタクシー」も、非常に需要が高くなっています。
親が迎えに行けない時の、子供の塾の送り迎え、学校と自宅の送迎などに使われるのが「キッズタクシー」。
キッズタクシーの乗務員は、子供の扱いがウマい精鋭乗務員44名は、個人情報にウルサイこのご時世にあって、日本交通のホームページでドライバーの名前、家族構成、趣味や前の職業、資格などをしっかり明かす。そのあたり、「安心を売りにする」本気度が見て取れます。
実際に、タクシーに乗る子供は常連のお客様が多いので、乗務員は固定。子供とドライバーは毎日のようにかを合わせるので顔見知りになって、ポケモンとかゲームとか共通の話題を持っているそうです。
また、お母さんに対してこまめに今どこにいるかメールや電話報告、今月からはアプリで現在地を知らせるサービスも始まるようです。
~そんな日本交通にレアなサービスはないかと聞いたところ…
タクシーの上に載っている「行灯(あんどん)」が、普通は白地に紺なんですが3,500台中4台だけピンク色の「桜にN」のマークの車が走っているそうです。
これに乗る確率は0.12%、ホールインワン並みに少ない、ということで、もし乗れた場合は「記念の乗車証」がプレゼントされます。偶然乗ったTMレボリューション西川貴教(にしかわたかのり)さんも喜びのツイッターをしていたそうです。
濃密な打ち合わせを終え、偶然止めたタクシーが、にゃんと"サクラタクシー"じゃないですか!これ都内を走ってる日本交通の3200台のうちの4台で、しかもプリウスαは1台なんですって!いやぁ、今日打ち合わせしたプロジェクト、絶対成功するね♪ http://t.co/YZrw46oMar
— 西川貴教 (@TMR15) May 5, 2013
さて、タクシーの固定概念を覆すサービスが定着した会社もあります。横浜を中心に八王子、小平 府中、埼玉で走る三和(さんわ)交通は、“ゆっくり走る”=タートルタクシーが名物です。
タートルは亀のこと。タートルタクシーに乗って、「ゆっくりボタン」を押すと、運転手さんがいつもよりもゆっくりと揺れないように安全運転をしてくれる、というものです。
なぜ「タートルタクシー」を発想したのか?というと…
『そんなに急いでないから、スピードを落としてほしい』
『体調悪いから、あまり揺れないようにしてほしい』
『急ぐとぶつかってしまうかもしれないから安全に』という想いを抱く人は少なくない、ということに気が付いたから。
とは言っても、50キロ制限を30キロで走っていいわけがありませんから、速度が遅いわけで
はありません。“速度は変わらずに、最高速度に達する時間が変わる”ということなのです。
つまり、ゆっくり加速し、ゆっくり曲がる。これによって乗っている人は体が揺れずに実に心地よい。
オートマはちょっと踏むだけで急発進急停車しますから、乗務員はこの踏み方のテクニックを磨いているのです。細かく言うと『5ミリずつ踏む』。車に乗る人ならぜひ試してほしいのですが、
これがかなり難しい。
タートルタクシーの三和交通は「うちには雑な運転手はいません」と胸を張る一方で、
乗務員は足がつりそうになるのと戦いながら仕事をしているそうです。
また、タートルタクシーになったおかげで燃費効率が非常によくなったというおまけまでついてきた!
導入から来月で3年。タートルタクシーはしっかり安全運転をしてくれるタクシー、という信頼を得て、より価値のあるタクシー会社というブランディングができたようです。
タクシーをもっと便利に利用したい人にとって、一番使い勝手が気になるのが「配車サービス」。
アメリカからやってきた「ウーバー」が一時期話題になりましたが、いろんな制約がひっかかって、結局、日本独自のシステムが伸びています。
東京23区と武蔵野市・三鷹市エリアでサービスを提供する配車アプリ『スマホdeタッくん』や、全国で使える『全国タクシー』のアプリがソレ。
スマホdeタッくんPV「そばにいるよ。」サラリーマンのタクシー配車編
特に「全国タクシー」は、250万ダウンロードを突破。首都圏のみならず、出張先の都市でタクシーを手配する際に便利と、ビジネスユースも非常に多くなっています。
こうしたアプリは、ダウンロード後すぐに使えるのが特徴で、地図上で「ここに車を呼ぶ」、「ここへ行く」などと、数タップで注文が完了し、2分ぐらいで「何番が迎えに来るか」が分かる、という仕組み。
また、注文履歴から再注文もできるとか、自宅や会社などのよく利用する場所を登録する機能もあります。
「定額サービス」というのも始まっています。
例えば、「羽田空港」や「ディズニーランド」に行く際、あらかじめ予約しておけば、どんなに混んでいようと定額で行ってくれるというもの。羽田空港の場合、どこから行くかで値段がちょっとずつ違いますが、おおむね定額の方が2割から3割ほどお得になっているそうです。
タクシー会社の目指すところは「運送業」から『総合サービス業への進化』。
激しい生存競争が背景にあるというのもありますが、ニューヨークのタクシードライバーが500万円、ロンドンが600万円なのに比べると日本の乗務員の年収はおよそ400万円とまだ低い。
そこをなんとかしたい、というのが業界全体の願いでもあるのです。
11月1日(火) 高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より