脈々と受け継がれる、女優ひとすじに生きた女性の精神。第二回「森光子の奨励賞」贈賞式ルポ!【ひろたみゆ紀・空を仰いで】

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「森光子の奨励賞」は、一つの演劇作品『放浪記』で2017回という単独主演記録を打ち立てた森光子さんと同様に、ひとすじの道を追求する人を奨励するのが目的で、森さんの遺志で創設。

贈賞式が開かれたのは、東京・帝国ホテル4階の桜の間。
豪華なシャンデリアの下、森さんの大きな笑顔が見守る素敵なステージです。
第一回の受賞者、歌舞伎俳優の中村勘九郎さんと七之助さんご兄弟のビデオで開会が宣言されました。

中村兄弟

プレゼンターは森光子さんの無二の親友黒柳徹子さんが務められました。

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今回の受賞者は、俳優の市村正親さんと水泳の北島康介さん。
市村さんは、現在帝国劇場で上演中のミュージカル『ミス・サイゴン』に24年間エンジニア役で出演し続け、25年目の今年終止符を打つことを表明しています。
一方、北島さんは、4度のオリンピックに参加し4つの金メダルを獲得、今年引退を決めました。
お二人とも、分野は違えども、ずっとひとすじの道を懸命に歩いてこられ、自他ともに認めるその道の達人です。そんなお二人がともに、ある意味人生の一区切りをつける今年、この賞が贈られたのです。

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黒柳さんが読み上げた表彰楯には受賞理由とおちゃめな文言が刻まれています。
市村さんには「森光子は、九十歳まで林芙美子を演じましたが、貴殿の、齢六十七にして美しく上がるその足も、大いに讃えるものであります。叶うならば、当たり役エンジニアを、いついつまでも演じられることを森本人に成り代わり、ここに願うものであります。」これを受け、市村さんは脚をくいっと美しく上げ「〈けがするよ〉といつもかみさんに心配される」と笑いを誘いました。会場には奥様の篠原涼子さんもいらしていて、ステージと客席のアイコンタクトを指摘されると「こっそりやったのにな~」と笑顔が華やいでいました。さらに、森さんが市村さんと共演したがっていたという話を披露し「もっと早く言ってくれればよかったのに。今回でミスサイゴンを引退するつもりだったが、この賞を頂いたのは90歳までやれということかな。」と今後の身の振り方に気になる発言を残しました。どうなるのでしょうか…

感謝の言葉

そして北島さんは、プレゼンターの黒柳さんが「まあ、お洋服着た姿は初めて。いつも裸だから」と茶目っ気たっぷりに話すと照れ笑い。家族揃って森さんのファンで、森さんが好きだった実家の美味しいメンチカツサンドを手に『放浪記』の稽古場を訪ねたこともあるそう。ちょうど現役を続けるかどうかで迷っていた時期で、「森さんに〈続けて頑張ってね〉と言って頂いた。今年引退したが、第二の人生を応援して頂くという意味で、これからも水泳のみならずスポーツ界に貢献したい」と感謝の言葉を述べました。また、「水泳は生涯スポーツなので長く続けて行きたい。選手の指導は優秀な方がいらっしゃるのでおまかせしたい。子ども達には教えることはあるかもしれないけど…」と話し、芸能界への進出に話を向けられると「ない」とは答えていましたが、黒柳さんが「演出家の言うこと聞くかしら…」というと「ちゃんと聞きます」。こちらも今後が気になる展開となりました。

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「森光子の奨励賞」の贈賞式が開かれた11月10日は森さんの命日。
森光子という女優をひとすじに生きた女性の精神は、脈々と受け継がれています。

レポート:ひろたみゆ紀

ひろたみゆ紀,空を仰いで

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