駅、お店、学校、会社…街角のいろんなところで、毎日毎日目にしているもののひとつにポスターがあります。
素敵なデザイン、心を鷲掴みする言葉、好きな俳優さんの顔など、目に留まるポイントはそれぞれ違いますが、街の中で誰かにいつも何かを発信し続けています。
そんなポスターの黄金期は60~70年代とも言われています。今、その黄金期のポスターを集めた展示会が渋谷で開かれています。その名も「日本のポスターの黄金時代 60's/70's 」展。
会場は〈ポスターハリスギャラリー〉と〈アツコバルー arts drinks talk〉の2カ所。
ポスターハリス・カンパニーが所蔵するポスターの中から、60年代と70年代のシルクスクリーンポスターをメインに、1964年版東京オリンピックのポスターなど時代を象徴するポスターが展示されています。
ポスターハリス・カンパニーは、名前の通りポスターを貼る会社。
社長の笹目さんは、寺山修司さんの劇団「天井桟敷」の芝居を観て演劇のとりことなり、やがて演劇のポスター貼りで生きて行くことを決意。
30年以上、飲食店などの壁にポスターを貼り続け、演劇界をバックアップしてきました。
まさしくポスターは、市井の人々と舞台をつなぐ窓。
街のいたるところや人々の生活の中に演劇や芸術的なものを広げてきたのです。
そしてポスターを貼るばかりではなく、芸術としても価値の高いポスターを収集整理し、後世に残すお仕事にも力を入れています。
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(左)赤瀬川原平『一家に一枚零円札』/(右)田名網敬一『反戦ポスター』
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(左)宇野亞喜良『ミケランジェロの言葉』/(右)粟津潔『犬神 フランクフルト公演版』演劇実験室◉天井棧敷
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(左)横尾忠則『終りの美学』三島由紀夫/(右)永井一正『反戦ポスター』
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(左)デザイン:長友啓典 イラスト:黒田征太郎『エドワーズ』/(右)和田誠『日活名画座』
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(左)灘本唯人『マリー洋装店』/(右)平野甲賀『さよならマックス』
そのポスターハリス・カンパニーが所蔵している3万点ものポスターの中から、黄金期のポスターを集めた今回の展覧会。
赤瀬川原平、田名網敬一、宇野亞喜良、林静一、栗津潔、横尾忠則、永井一正、加納典明、黒田征太郎、田中一光、和田誠‥そうそうたるメンバーの作品が並んでいます。
ブックカフェのような小洒落た雰囲気のこじんまりとした〈ポスターハリスギャラリー〉の展示スペースに足を踏み入れた途端、壁が迫ってくるようなすごい圧力を感じました。
壁にかかったポスターの1枚1枚が自己主張し、動けなくなってしまったほどです。
今観てもうっとりするほど素敵なデザイン、ハッとさせられるサイケデリックな色使い、大胆な構図と組み合わせ…こんな経験は初めてです。
〈アツコバルー arts drinks talk〉は、靴を脱いであがる木の床が気持ちいい広々とした展示スペース。
こんなに沢山のポスターがあるのにどれもこれも埋没することなく、自分を最大限に輝かせていました。
フランスの俳優でありアーティストであるピエール・バルーを夫にもつアツコ・バルーさんは、この展覧会にこんな文章を寄せています。
「見えないものを可視化する。というデザイナーの挑戦がひときわ輝いていた時代があった。しかもすべてが版画(シルクスクリーン)。横尾、田名網、田中一光、赤瀬川...と眩しい名前が連なる。芝居やリサイタル、というその場にいないとわからない表現を街で一目でわかるような絵柄にする。ましてや行ってみたいと思わせる。夢を見させる。時を経た今見てもその効果は変わらない。彼らの本気の仕事だ。あの頃はまさに黄金時代、日本のポスターがこんなすごい時代があった。」
あなたも是非、輝く黄金時代の圧倒されるほど力強いメッセージを受け取って下さい!
「日本のポスターの黄金時代 60's/70's 」展は10月9日(日)まで。
両会場ともに火曜日がお休みです。
レポート:ひろたみゆ紀
「日本のポスターの黄金時代 60's/70's 」
入場料:2会場共通チケット 一般 ¥1,000 学生/障がい者¥800※学生証/障がい者手帳 要提示
営業時間:
〈ポスターハリスギャラリー〉水木金土日月 13:00~19:00
〈アツコバルー arts drinks talk〉水木金土 14:00~21:00(日月は11:00~18:00)