キャラメルボックスは、1985年、早稲田大学の学生演劇サークル「てあとろ50’」出身の成井豊、加藤昌史、真柴あずき、らを中心に結成され、役者との間に一切の契約関係がなく、演出家との信頼関係だけで1年間の活動を決めるという異色の劇団。
その舞台作りの基本精神は「1ステージ完全燃焼」。
「人が人を想う気持ち」をテーマに、「誰が観ても分かる」「誰が観ても楽しめる」エンターテインメント作品を創り続けています。
そのキャラメルボックスの今回のお芝居は、再演5回目となる『嵐になるまで待って』。
声優志望の女の子が主人公のサイコサスペンスです。
声優学校に通うユーリは、生まれて初めて挑戦したテレビアニメのオーディションに見事合格!
その顔合わせで、不思議な体験をします。
その場にやって来た作曲家の波多野と姉の雪絵。
雪絵は耳が聞こえません。波多野は、雪絵を乱暴に扱った俳優の高杉に対し「やめろ!」と叫びます。
実はその時、ユーリの耳にはもう一つの声、「死んでしまえ!」が聞こえたのです。
翌日、高杉は行方不明に…まさか、本当に死んでしまった?
その夜、雪絵のもとに波多野から電話がかかってきます。
顔合わせの時に拾ったペンダントを取りに来て欲しいと。
それは、ユーリが家庭教師だった幸吉にもらった大切なものでした…。
そこから思わぬ出来事が次々と展開されて、嵐の訪れが相まって緊迫感を与えます。
波多野の正体は?ユーリはどうなるのか?
ハラハラドキドキで一瞬たりとも目が離せず、2時間があっという間でした。
この作品の最大の特色は、劇中で手話が使われていること。
雪絵さんの会話は全て手話ですが、誰よりも雄弁に誰よりも強く心のうちを全身で語っていました。
SNSはすぐに返事が来て、文字での会話もとても楽しいけど時々不安にもなります。
ちゃんと伝わっているのかな?ちょっとした機微をわかってもらえるのかな?
逆に自分は本当に理解しているのかな?
今一度、話すこと・伝えることを考えさせてくれる舞台でした。
な~んて、小難しく考える必要はありません。
素直に「笑って、興奮して、感動して、泣ける」んです。
キャラメルボックスのお家芸、息をもつかせぬスピーディーな展開とそれを盛り上げる音楽。
今回は嵐も一役買いました。
そして、手に汗握るクライマックスと大きなカタルシスをもたらすラストシーン…人っていいなって素直に思えます。
どんなことがあっても乗り越えられる力がある、そしてその力を与えてくれるのもまた人なのです。
キャラメルボックスのサイコサスペンス、怖いけれどとても美しい芝居…あなたも体験してみませんか?
『嵐になるまで待って』は、キャラメルボックスの芝居を全国各地に届けるグリーティングシアターの第三弾。
東京公演を皮切りに、宇都宮、山形、愛知、大阪、広島など11カ所を回ります。
東京公演は、9/25(日)まで、かめありリリオホールで上演されています。
詳しくは、演劇集団キャラメルボックス公式ホームページ>まで。photo:伊東和則
レポート:ひろたみゆ紀