この夏、海上で保存されている船舶としては、初めて、国の重要文化財に指定された氷川丸。
氷川丸が重要文化財として評価されたのは次の2点です。
1.社会・経済史上における役割
2.造船・工芸技術上の価値
前回は氷川丸の数奇な歴史を見てきましたが、今回は「造船・工芸技術上の価値」について。
1930年の竣工当時としては最新鋭の大型ディーゼル機関を搭載した氷川丸。
また、船内の美しいインテリアは、アール・デコ様式が日本に直輸入されてから最初に施された建築意匠なのです。
その素晴らしい価値を知るために、氷川丸の船内を一緒に見学してみましょう!
桟橋から船に乗り込むと、足元がちょっと浮いている感じがしてやはり船だな~と思います。
エントランスロビーでは、氷川丸の歴史について映像が流れています。
そしていよいよ細い廊下を通って船内に…
まずは一等のエリア。
サーモンピンクの優しい壁の部屋はなんと遊戯室。
ここには子どもの世話をするスチュワーデスがいて、ディナーの時も子どもを預かってくれたそうです。
おしゃれな木馬が高級感を漂わせています。
そのお隣はダイニングサロン。タキシードとイブニングドレスの紳士淑女が豪華なディナーを堪能しました。
食器とカトラリーの触れ合う音が聞こえてきそうです。
落ち着いた雰囲気の読書室に、グランドピアノまである社交室。
淑女が集いダンスを楽しんだりおしゃべりに花が咲いたことでしょう。
一方、紳士はこちらの喫煙室で、煙草と高級な世界のお酒をたしなみカードゲームにいそしんだそうです。
一等は客室も豪華です。
冷温水が出る洗面台に換気・空調設備もあり、当時としては最新式の装置が導入されていました。
全てがコンパクトかつ優雅にまとめられています。
ベッドの上の毛布も折り方を変えておもてなししたそうですよ。
さらにゴージャスなのは一等特別室。
ベッドルームとダイニングルーム、バスルームまで備えていました。
窓にはステンドグラスもあしらわれています。
中央階段の真ん中の丸い模様…実は、氷川丸の名前を授かった氷川神社の社章「八雲」です。
てっぺんにある操舵室。もちろん無線室も備えています。
伝声管は操舵室からの命令を機関室などに伝えます。
映画タイタニックにこんなシーンありませんでした?
そして船の心臓部、機関室。お客様が過ごす贅を尽くした場所とは違う空気が流れています。
ちょっぴり油の匂いもします。
8気筒ディーゼルエンジンはデンマーク製、当時のまま残されている貴重な産業遺産でもあるのです。
山下公園に行けばいつもそこにあるのが当たり前だと思っていた氷川丸。
でも背負ってきた歴史を知れば知るほど、偉大さと愛おしさを感じてきます。
日本と共に歩み、いつも守ってくれていたような気さえしてくるのです。
そんな氷川丸に今年また一つ重要文化財としての新しい歴史が加わりました。
レポート:ひろたみゆ紀
日本郵船氷川丸
開館時間:10:00~17:00
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌日)
入場料:一般 300円 シニア 200円 小中高生 100円
URL:http://www.nyk.com/rekishi/
日本郵船歴史博物館とのお得なセットもあります。