昭和初期の目黒が再現された懐かしい風景…『おおはし里の杜』を味わいませんか?【ひろたみゆ紀・空を仰いで】

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行楽の秋。車でお出かけする方も多いでしょうね。
あなたは車を運転なさいますか?私たちが中継に行く時はラジオカー。その時いつもお世話になっているのが首都高速道路です。
首都高速道路は、利用者が気持ちよく走行できるように、渋滞の軽減や安全のためにいろいろな対策をとっていますが、実は環境保全にも力を入れています。

JCT遠景

首都高速道路大橋ジャンクション

例えば目黒区にある大橋ジャンクション。通ったことはありますか?3号渋谷線と中央環状線(山手トンネル)を結ぶループ状・4層構造の都市型ジャンクションです。最大高低差が約70mもある2つの道路を1周400mのループ2周でコンパクトに接続しています。大きな特徴は、大気汚染や騒音を減らすために、道路を壁と屋根でカパッと覆っているところです。見た目はまるでコロシアムのよう。実際に国立競技場と同じくらいの大きさなんですよ。
この円形コロシアム型の屋上に造られたのが目黒天空庭園。ジャンクションの屋上に公園が造られるのは全国でも初めてのことです。緑豊かな円形の公園は空が近く広々として気持ちいい場所ですよ。朝7時から夜9時まで利用できます。

おおはし里の杜

おおはし里の杜

そして、コロシアムの内側にある換気所の屋上には、自然再生緑地『おおはし里の杜』が併せて造られました。大橋ジャンクションは車が走る道路が壁と屋根で覆われているので、換気が必要です。大橋換気所では、1日の平均値で二酸化窒素(NO2)が90%以上、浮遊粒子状物質は80%以上も除去されます。

この自然再生緑地『おおはし里の杜』は、環境に配慮している大橋ジャンクションのシンボルでもあるのです。普段は入れませんが、今回は特別に取材させて頂きました。
目黒川周辺の原風景をモデルに、昔この地域にあった斜面林、湧水と川の流れ、池、水田、草地など多様な植物や生きものの生息・生育空間が再生されています。勾配が約28%の斜面と平面という換気所屋上の特殊な形状を、昭和初期のかつての目黒川の河岸段丘に見立て、地域本来の自然をお手本に苗木の種類も在来種に限定しました。
また、自然の樹形や草原を成育しようと人工的に過度な刈り込みをしないことや、在来種を守るために外来種の駆除を行うなどの維持管理を徹底してきました。
これらの整備と維持管理の取組みが評価され、この秋、生物多様性への貢献度や影響度を事業の前後で比較し定量評価するJHEP(Japan Habitat Evaluation and Certification Program)の中で最高ランクの『AAA』の認証を得ることができました。

4_ハザがけ
3_ハザがけ

私がお邪魔した日は、刈り取られた稲が綺麗に「はさがけ」されていました。ニョキニョキ立つビルの間に出現した昔ながらの緑の風景に干された稲…なんだかとっても不思議な空間でした。藁の匂いと草木を渡る風がさわやかなこと!水田をよく見ると可愛いメダカも泳いでいますし、アメンボもスイスイ!目の前をトンボが暢気に飛んで行きます。

5_メダカ

ここは目黒区なのに、しかも高速道路のジャンクションの中なのに、なぜか故郷の田舎の風景。幼い頃、祖母の家で遊んだ時のことを思い出し、ほっこりした気分になりました。
自然の中で過ごした原体験のない子ども達は、この風景をどんな風に受け止めるのでしょうか?

6_田植え
7_稲刈り

『おおはし里の杜』では、地元目黒区の小学生が年4回のイベントに参加しています。6月に田植え、7月には自然観察会、10月には稲刈りと脱穀を体験します。収穫精米したお米は20kgほど。12月の収穫祭に給食でみんなで食べるそうです。自分たちの手で植えた稲を自分たちが刈り取って自分たちで脱穀したお米…どんな味がするのでしょうか?格別でしょうね。

9おおはし里の杜2

昭和初期の目黒の風景が再現された『おおはし里の杜』。生態系を守るためにも普段は入ることができませんが、年に数回だけ一般に公開されます。
次回は、11/19(土)の10:00~16:00。目黒天空園から入れます。
大都会の中の懐かしい風景…不思議な空間を味わいにいらっしゃいませんか。

8_目黒天空庭園から里の杜をみた写真

レポート:ひろたみゆ紀

ひろたみゆ紀,空を仰いで

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