恋は錯覚の上に咲く花にすぎません。
女は恋人の上に理想の男の仮面をかぶせ、ほんとうの恋人と思いこんで身をやいていきます。その仮面がはずされたときに見いだすのは、自分が捨てた男と大差のない男、あるいは、はるかに価値のない男かもしれません。
それでも誤った恋はしないほうがましとは、だれもいいきれないでしょう。
女は恋をすることで、自分を発見していきます。愛されることによって自分を深め、愛することによって、知恵がつきます。そして恋に悩んだ女とそうでない女のちがいは、他人の不幸に対して思いやりが深いか浅いかにあらわれてくるのです。瀬戸内寂聴
撮影:斉藤ユーリ