この10年、世界中で金持ちと庶民の格差がどんどんと広がり続けています。
先ごろ、国際貧困支援NGO「オックスファム」が発表した報告書が、世界に衝撃を与えました。
いわく…
「世界のトップ62人の大富豪が、全人類の半分、36億人と同額の資産を持っている。」
コレ、大ざっぱに言えば、1台の大型バスに収まる程度のごくごく少数の金持ちが、なんと世界人口の半数を養える額(※約180兆円)を持っている… ということです。
とくにアメリカでは、一部の金持ちが、より「大金持ち」になるという傾向が顕著で、経営者の年俸がうなぎのぼりにあがっています。
ちょいと前まで年俸100万ドル(約1億円超)もらっていた人物が、ふと気づくと年俸1,000万ドル(約11億円超)もらっている… というケースも決して少なくないそうです。
大金持ちの象徴といえば、マイクロソフトの創業者、ご存知ビル・ゲイツ。
今年、このビル・ゲイツの個人資産総額が、史上初めて「900億ドル」(約9兆円超)の大台を突破したことが判りました。これ、どういうことかというと、ビル・ゲイツひとりで、アメリカじゅうの富の「半分」を独占しているということになるのだそうです。
アメリカの格差社会、「ここに極まれり」といった感しきり…
そこへもってきて、あのドナルド・トランプ。
「私が大統領になったら、富裕層への減税を実行する!」
と主張してきました。
こうなると益々、いわゆる「上位1%」の富裕層だけが、「超大金持ち」になっていくやもしれません…。
さて、そんなアメリカで、今、実に奇妙な「病気」が蔓延しつつある… という話をご存じでしょうか?
ごくごく一部の金持ちだけが罹るという──その名も、「金満病」という病気。
これはいったいどういう病気なのか?
今日は、この「金満病」という名前が知られるようになった事件をご紹介しましょう。
2013年6月のある日のこと。
テキサス州に、イーサン・カウチという名前の16歳の少年がいました。
彼の父親は、羽振りのいい板金メーカーの社長さん、要するに、イーサン少年は、大金持ちのボンボンだったんです。
この日イーサン少年は、友達と自宅でパーティを開催。未成年にもかかわらず、したたかに酔っぱらった…
さらに、そのあと、父親の大型トラックを運転!
なんと4人の死亡者を出す大事故を起こしてしまったんです。
駆けつけた警察が調べたところ、血中のアルコール濃度は、法律で定められている限度の3倍以上。
さらに、イーサン少年は、スピード違反を犯していたことも判明しました。
いくら16歳とはいえ、微塵たりとも情状酌量の余地はありません。
なにしろ4人もの尊い命が奪われているということで、検察は、「懲役20年」を求刑しました。
言い逃れようがないと思ったのか、イーサン少年も、素直に自分の犯行を認めています。
普通に考えれば、あっというまに有罪決定、スピード結審… となるはずでした。
ところが… 裁判は、ここから、思わぬ展開をみせていったのです。
裁判でイーサン少年の弁護人は、弁護側の証人として、心理学者を招喚しました。
すると… この心理学者、実に奇妙な証言をし始めたのです。
「イーサン・カウチ被告は、アフルエンザの患者だ。罪に問うべきではない。」
このアフルエンザとは、「裕福」を意味するaffluence(アフルエンス)と、Influenza(インフルエンザ)を合わせた造語で…ズバリ、「金持ち病」「金満病」という意味だそうです。
つまり、金持ちならではの「金満病」であり、彼に責任能力はない。罪に問うな… というわけです。
耳慣れない病名… この「金満病」とは、いったい、どんな病気なのか?
一言でいうと… 「お金持ちすぎて、善悪の見極めがつかない」という病気なのだそうです。
イーサン少年は、生まれてからずっと、なにか問題があると、すべて親のお金で解決してきました。
ちょっとした悪さを働いても、ぜんぶ親がお金を支払ってなんとかしてくれた…。
ですから、身の毛もよだつような死亡事故を起こしても、善悪の感覚が完全に麻痺している!
責任を感じる能力というものが、まるで欠落していたということです。
「確かにボクは、お酒を飲んで、パパのクルマを運転して、人をはねちゃったよ。でも、どうせ、パパかママが、なんとかしてくれるはずさ。」
「お金さえ払えば、相手は許してくれるだろ。許してくれるってことは、悪いことをしたワケじゃないってことだよね。」
なんとイーサン少年は、こんな考え方の持ち主になってしまっていたということなんです。
そしてこうした考え方こそが、「金満病(アフルエンザ)」の典型的な症状だというんです。
さぁ、裁判の結果は、どうなったか?
なんと判事は、イーサン少年に、禁固刑ではなく、10年の「保護観察処分」を言い渡したんです。
そして、イーサン少年は、お気楽な(?)リハビリ施設に送られることとなったのです。
ちなみに、このリハビリ施設、年間45万ドル(約4,500万円超)もの費用がかかる、超高級ホテル並みの豪華施設…。
でも、親は大金持ちですから、可愛い息子のためということでなんの躊躇もありません。
「え?45万ドル? まったく問題ありません、我々が払います!」
結果、イーサン少年は、禁固刑を受けることなく、事実上の「おとがめなし」となりました…。
この衝撃の裁判結果を受けて、弁護人や判事は、アメリカじゅうから、「金さえあれば、正義も買えるのか?」と、大バッシングを受ける羽目となりました。
以上が、「金満病」(アフルエンザ)という病名が有名になった顛末なのですが…
実はこの事件には、後日談があります。
2015年、去年のことです。18歳となったイーサン・カウチが、お酒を手にして、友達とふざけあっている様子のビデオが知人によってソーシャル・ネットワークに投稿されました。
つまり、超豪華リハビリ施設にいるはずのイーサン・カウチが、いつのまにか、施設から抜け出して、遊び倒していたことが判明!
そして… 暮れも押し迫った12月30日!逃亡生活を続けていたイーサン少年が、思わぬところで発見されます。なんと、彼は、メキシコに逃亡していた…しかも、母親と、一緒に!
あえなく身柄を拘束された、イーサン少年と、母親のトーニャ。
彼女は、息子の施設からの逃亡を綿密に計画していた… そしてメキシコに高跳びを計った…つまり、「金満病(アフルエンザ)」に罹っていたのは、イーサン少年だけではなかった!
母親も、善悪の判断がつかない「金満病」に罹患していた… というわけです!
アメリカの闇、極端な格差社会を象徴するような現代病、「金満病」。
貧富の格差が進むニッポンでも、いずれ蔓延するのは必至… といわれています。
11月23日(水・祝) 高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より