さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、『ヒッチコック/トリュフォー』を掘り起こします。
ヒッチコックが語る、ヒッチコック映画の真髄
1962年、映画監督のフランソワ・トリュフォーは、敬愛する監督アルフレッド・ヒッチコックにインタビューさせてほしいと熱望し、ヒッチコックがそれを快諾。
国籍も年齢もキャリアも違う2人は意気投合し、50時間にも及ぶ長時間のインタビューが実現しました。
こうして誕生した書籍「映画術 ヒッチコック/トリュフォー」は各国で翻訳され、世界中の若い映画作家や映画ファンのバイブルとして、現在も読み継がれています。
そんな“映画の教科書”を題材にしたドキュメンタリー映画が、いよいよ日本でも公開となります。
アルフレッド・ヒッチコック監督は、1899年イギリス生まれ。
『サイコ』『鳥』などの傑作を生み出したことは、皆さんもよくご存知でしょう。
しかもサスペンス映画でありながら、これら作品を紐解いていくとミステリーからロマンス、怪奇、心理劇、アクションと実に多彩。
“サスペンス映画の神”と称され、いまなお多くの映画ファンに愛される存在です。
片や、フランソワ・トリュフォー監督は、1932年フランス生まれ。
ジャン=リュック・ゴダールやクロード・シャブロルらと並び、<ヌーヴェル・ヴァーグ>を代表する監督の一人。
『大人は判ってくれない』でカンヌ国際映画祭監督賞、『映画に愛をこめて アメリカの夜』でアカデミー外国語映画賞を受賞するなどのキャリアの持ち主で、フランス映画を語るにあたり、欠かせない存在です。
そんな二人の“映画問答”を映像化したのは、NY国際映画祭のディレクターも務めるケント・ジョーンズ監督。
伝説的な映画監督同士の会話をエモーショナルに描き出しています。
ヒッチコックが自らの言葉で映画制作について語る“生の声”は、映画ファンなら誰もが聞いてみたい垂涎もの。
しかもトリュフォーがヒッチコックから聞き出した映画技法の秘密を、映画の場面カットを多用して視覚的にも分かりやすく伝えているので、今後は書籍と並び本作も映像作家たちのバイブルとなりそうな予感がします。
さらに注目なのが、現代の映画界を牽引する10人のフィルムメーカーたちによる“ヒッチコック論”。
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のマーティン・スコセッシ、『ゴーン・ガール』のデビッド・フィンチャー、『グランド・ブダペスト・ホテル』のウェス・アンダーソン、そして日本からは『クリーピー 偽りの隣人』の黒沢清など、錚々たる面々。
時代を超えたヒッチコック映画の魅力と卓越した技法について語ると同時に、「 “映画を作る”とはどういうことか」という核心に迫った興味深いものとなっています。
観客の感情をあぶり出し創造力を駆り立てるヒッチコックの“映画術”に触れて、改めてヒッチコック作品を見返すと、新たな発見に出会えるかも。
ヒッチコック/トリュフォー
2016年12月10日から新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
監督:ケント・ジョーンズ
出演:マーティン・スコセッシ、デビッド・フィンチャー、アル ノー・デプレシャン、黒沢清、ウェス・アンダーソン、ジェーム ズ・グレイ、オリヴィエ・アサイヤス、リチャード・リンクレイター、 ピーター・ボグダノヴィッチ、ポール・シュレイダー
©COHEN MEDIA GROUP/ARTLINE FILMS/ARTE FRANCE 2015 ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト http://hitchcocktruffaut-movie.com/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/