『戦国時代展』に平成の世を考えるヒントを見つけました!【ひろたみゆ紀・空を仰いで】

By -  公開:  更新:

展覧会で、目から鱗が落ちるような体験ができるとは思いませんでした!

両国にある江戸東京博物館で開かれている『戦国時代展』に行ってきました。

織田信長、上杉謙信、武田信玄、毛利元就…歴女たちをときめかせる全国各地の武将たちが戦闘を繰り返した戦国時代。ゲームも流行ってますよね。誰もが虎視眈々と天下統一を狙う中、抜きん出るのは誰なのか!
戦国時代は、下克上という言葉に代表されるように、室町幕府の衰退に伴い、各地で群雄が割拠し、相次ぐ戦乱で国の秩序が大きく乱れた時代だとイメージされてきました。教科書でもそう習った記憶があります。
でも、本当にそうなのでしょうか?

この『戦国時代展』はその謎に真っ向から挑みます。
日本における戦国時代は「応仁の乱(1467)」に始まり、織田信長の将軍・足利義昭追放(1573)の頃までの100年あまり。展覧会では、この時代について余すところなく紹介しています。
その歴史を振り返ると、列島各地で台頭した個性豊かな戦国武将たちはもちろんのこと、武将たちのために作品を描き続けた絵師や様々な工芸美術品・茶の湯などの文化を生み出した人など、沢山の夢を追いかけた人たちがいます。そして夢追い人たちが作り上げたものが各地に波及し、文化的にも経済的にも実り豊かであった時代でもあるのです。

鎧(w680)

(左)重要文化財 色々威腹巻 兜・大袖付 15-16世紀 島根・佐太神社蔵 ※前期(11月23日~12月25日)展示 / (右)秋田市指定有形文化財 黒塗紺糸縅具足 天文5年(1536)10月 秋田市立佐竹史料館蔵 ※後期(1月2日~1月29日)展示

屏風-2(w680)

(上)芸州厳島御一戦之図 江戸時代(推定) 山口県文書館蔵 ※前期(11月23日~12月25日)展示 / (下)重要文化財 四季花鳥図屏風 右隻 狩野元信画 天文18年(1549) 兵庫・白鶴美術館蔵 ※1月9日~1月29日展示

『戦国時代展』に展示されているのは、法螺貝や陣鐘、家紋入りの旗、鎧、刀など合戦に欠かせないものや、合戦の様子を描いた屏風、武将の肖像画、武将同士の書簡、書物、生活用品、輸出されていた漆器、中国からの磁器など、前後期合わせて264点。国宝や重要文化財、有形文化財など貴重なものも沢山並んでいます。

このような展覧会にいらっしゃるのは、少し前ならお年を召した男性の方が多かったそうですが、平日の午後にも関わらず幅広い世代の男女で賑わっていました。中でも人集りは、重要文化財「刀 義元左文字 無銘」。桶狭間の合戦で今川義元が討ち死にした時に持っており、織田信長が入手したといいます。織田尾張守信長という文字も見えます。重々しい光を放っていました。こちらは12/18までの展示です。

義元左文字

(左)重要文化財 刀 義元左文字 無銘 南北朝時代 京都・建勲神社蔵 ※11月23日~12月18日展示 / (右)義元左文字「織田信長尾張の守信長」の金象眼

 五虎退,鬼切,安綱

(上)短刀 銘 吉光 号 五虎退 13世紀 個人蔵 ※後期(1月2日~1月29日)展示 / (下)重要文化財 太刀 銘 安綱 (号 鬼切) 平安時代後期 京都・北野天満宮蔵 ※後期(1月2日~1月29日)展示

川中島合戦図屏風

(上)川中島合戦図屏風 米沢本 左隻 18世紀末-19世紀初 米沢市上杉博物館蔵 ※前期(11月23日~12月25日)展示 / (下)川中島合戦図屏風 米沢本 左隻(部分) 18世紀末-19世紀初 米沢市上杉博物館蔵 ※前期(11月23日~12月25日)展示

泥足毘沙門天立像

泥足毘沙門天立像 鎌倉時代 山形・法音寺蔵

他にも、川中島合戦図屏風や上杉謙信とともに戦った伝説の泥足毘沙門天立像など、見るべきものは沢山ありますが、とても印象的だったのは、戦国大名と京都の室町幕府との関わりでした。
天下統一を目指して全国各地で旗揚げをし、戦い続けている一方で、戦国大名たちは、京都の権威を大切にしていたのです。例えば、乗り物の駕篭。京都の許可がなければ乗ることはできませんでした。許可するという書簡も展示されています。また、床の間のお皿などの飾り方も京都から指示がでており、大名たちはそれに従っていました。
幕府なんて関係ない!俺が天下人になる!とみんながそれぞれ勝手に突っ走っていた時代だと思っていたのですが、どうやらそうではなさそうです。

さらに、この時代に書かれ後に寺子屋の教科書としても使われた書物には、日本各地の特産品の名前が並んでいます。例えば、北海道は昆布と鮭。つまり、この時代すでに人々は北海道へ渡っていたということ。そして、日本各地の文化が人の流れとともに日本中に広まっていたということです。庶民たちも旅をするようになった時代でもありました。中国や朝鮮半島などとの交流も盛んでした。

展覧会の最後に展示されている寄進状には「現世安穏」「後生菩提」という文字が書かれています。現世も来世穏やかで平和な世の中をと願う気持ちはいつの世も同じなのですね。

戦国時代は、戦乱の世ではありましたが、京都の権威と秩序は保たれ、文化は流布し、それでも日本は一つの国でした。秩序のない時代だとばかり思い込んでいましたが、そうではありませんでした。『戦国時代展』は、今の世の中を考える時なにかヒントをくれる…そんな展覧会です。

このニュースをご覧になった方の中から抽選で5組10名様に招待券をプレゼントさせていただきます。
ご希望の方は present@1242.com まで、住所・氏名・年齢・電話番号を明記の上お申し込み下さい。
締め切りは2016年12月22日(木)24時までです。

『戦国時代展 ‐A Century of Dreams‐』
会場   東京都江戸東京博物館
開館時間 9:30~17:30(土曜日 19:30まで)
休館日  毎週月曜日(1/2,9,16は開館) 年末年始(12/26~1/1)

前期は12/25(日)までで、西日本を中心とした展示
後期は1/2(月)~29(日)まで、東日本を中心とした展示
※江戸東京博物館で開かれている『戦国時代展』は、前期と後期で展示品が入れ替わります。
会期中に変わることもありますので、お目当てがある方はご確認下さい。

レポート:ひろたみゆ紀

ひろたみゆ紀,空を仰いで

Page top