まるで洞窟の暗闇の中にいるみたい!幻想的に浮かび上がる素晴らしい壁画…世界史の教科書で見たことがある!!
今、上野公園の国立科学博物館で、そんな感動が体験できるのです。
今から2万年程前、フランス南西部ヴェルセール渓谷にある洞窟に、躍動感溢れる動物たちの色彩画が描かれました。
その洞窟はラスコー、描いたのはクロマニョン人。なんと2万年もの遠い昔のことです。
600頭とも言われる動物とそのスケールの大きさ、豊かな色彩、技法の素晴らしさなどから世界遺産にも登録されています。
壁画を保存するため、現在、ラスコー洞窟は公開されていません。しかし、その素晴らしさを知ってもらおうと、フランス政府公認のもと制作され世界を回っているのが「ラスコー・インターナショナル・エキシビション」。この巡回展に日本独自のコンテンツを加えた特別展『世界遺産 ラスコー展 ~クロマニョン人が残した洞窟壁画~』が、国立科学博物館で開催されています。謎に包まれたラスコー洞窟の全貌が紹介されます。
今回の見どころは、なんと言っても1ミリ以下の高精度で再現された実物大の壁画群。
暗い洞窟型の展示エリアに一歩足を踏み入れると、そこはまるでラスコー洞窟!普段見ることができない洞窟内部の世界が体感できるのです。ラスコー洞窟の壁画は、色を塗った「色彩」と鋭い石器で壁面を彫った「線刻」の二つの技法の組み合わせで描かれています。巨大なウシや、小走りしたりいなないたり躍動感あふれるウマの姿が見事に表現されています。線刻は暗闇ではよく見えませんが、時折ブラックライトで照らされると、隠れた絵が幻想的に浮かび上がってくるのです!思わずワーッと声が漏れてしまうほどの見事さです。
これらの壁画は、三次元レーザースキャンなど現代の最新技術と、アーティストの手作業で精密に復元されました。
また、今回の展覧会では、クロマニョン人の正体にも迫っています。彼らはどこからやってきたのか。そして古代人類の復元を専門にする芸術家が等身大で制作したクロマニョン人にも会えます。現代の私たちと変わらないその姿。身につけているものを見ると、縫製や毛皮の加工、おしゃれなアクセサリー、多彩な狩猟道具など、技術や芸術性の高さがうかがえます。
原人や旧人などの古代型人類が、芸術を生み発展させた証拠はないそうです。しかし、クロマニョン人が現れるとその状況は一変!壁画だけではない、クロマニョン人の文化の奥深さにも触れることができます。
展示品の中には、氷河期のヨーロッパに数多くいたトナカイの角に彫られた彫刻や、動物の骨で作られた縫い針、貝殻・象牙のビーズやペンダントもあります。
人類は100万年以上前から火を使っていたと言われていますが、灯りとしての火を持ち運んだ最古の物的証拠は、クロマニョン人のもの。暗い洞窟の中をランプで照らし、壁画を描きました。まさに暗闇を制したのがクロマニョン人なのです。この国宝級のランプも日本で初めて披露されています。
合わせて、世界初公開の洞窟から出土した顔料も展示。2万年前の彼らの文化、技術をリアルに感じることができます。
実生活で使う道具ばかりでなく、現代の私たちを感動させるほどの芸術品をも生み出していたクロマニョン人。
故きを温ねて新しきを知る…まさしく新年にふさわしい展覧会です。
特別展『世界遺産 ラスコー展 ~クロマニョン人が残した洞窟壁画~』は、上野公園の国立科学博物館で、2/19まで開かれています。
時間は9:00~17:00(金曜日は20:00まで)
休館日 毎週月曜日と1/10(ただし1/9・2/13は開館)
レポート:ひろたみゆ紀