少子化時代、受験生から選ばれる大学になるための戦略キーワードとは?!【ひでたけのやじうま好奇心】

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先週末はセンター試験が行われ、各地で雪のため受験生は大変だったようですが…
かねてから大学受験業界において「2018年問題」が語られてきました。
これは、2018年から18歳の人口が減少することによって、大学進学者数がどんどん下がり続けることになる、という問題です。
2018年を目前に、いくら学生の集まる有名大学でも歴史のある大学でも、ほとんどの大学では生き残りをかけて改革が進められています。

そこでけさは、大学が受験生獲得、ひいては質のいい学生獲得のために仕掛ける様々な戦略を紐解いて行こうと思います。

まずは、大学が都心にキャンパスを移転させるという『都心回帰』の戦略。
先鞭を付けたのは東洋大学で、2005年のことでした。
1・2年生が朝霞、3・4年生が白山と、学年によって2つに分かれていたところを、白山キャンパスへ統合。4年間を通じて都心の同じキャンパスで学べる環境を構築したところ、受験生がどっと増えたのです。

翌年、芝浦工業大学、共立女子大学、国士舘大学なども後に続き、志願者は4割~5割増加。

そもそもなぜ大学キャンパスが郊外に作られたかと言いますと…
都市部に人口や産業が集中することを防ぐ「工場等制限法」が1959年に首都圏で成立して、都市部における大学の新設・増設が制限されたのです。
その後、日本が高度成長期を迎えていた1970年代頃。高等教育への進学率が3割を超えるなど受験生は急増し、これを受け入れるため郊外に広大な校地を取得して、移転を決断した大学は少なくありませんでした。
しかし90年代以降、都心の空洞化が社会的な課題となったことから、工場等制限法が2002年に廃止。キャンパス開発のための用地取得がしやすい環境も整い始め、大学にとっては「都心に戻れる」状況が揃ってきました。

一方で、18歳人口は1990年の200万人から、2010年は120万人まで落ち込み、大学間の学生獲得競争はいっそう激化しています。多くの私立大学にとって、志願者数の増加は最大の経営課題となり、アクセスしやすく、繁華街が多い都心の大学は受験生の支持を集めやすいという理由から、「私立大学の都心回帰」が進んできました。

ところが、2010年以降に移転した大学は、それほど効果が出なくなったのです。
4~5割も増えていた志願者数が、1~2割増加にとどまるようになり、「都心回帰は学生確保の有効策」という神話は崩れつつある、と私学関係者はみています。

そこで国内で学生を獲得するには頭打ち、そこで『海外からの学生獲得』にシフトしている大学も数多く出てきています。
多くの留学生が進学先選びにおいて必ずチェックするのは、研究環境や学生寮の充実ぶり、学費の安さ、生活面での安全性。オックスフォード大学やスタンフォード大学など、世界中から優秀な学生を集めている欧米の名門大学に都心の大学が少ないのは、郊外の方がこうした環境を整えやすいから。よって「都心に近い」は、世界の学生には必ずしも響かないのです。

そこを逆手に取って飛躍しているのが、地方の新しい大学。
大分県別府市に2000年に開学した「立命館アジア太平洋大学」は、6,000人の学生のうち、外国人と日本人の割合は半々。国籍の数は70か国以上にも渡っています。講師も半数は外国籍、多くの授業は英語で、国際社会での活躍へとつなげられる、というのがウリ。
英語以外にも中国や韓国、インドネシア、スペイン、タイ、ベトナムの6つの言語も身に付けられる。

2004年に秋田の自然豊かな場所に開学した公立の「国際教養大学」は、全ての授業が英語、9割の学生が大学構内の寮に住み、立派な図書館が24時間オープンして学び放題。
10年で、偏差値も人気もトップクラスまで登りつめています。

こうした留学生と外国人講師の多いキャンパスに多様性をもたらし、学生の成長を促すという観点から、企業の評価も高く、就職率も非常にイイという副産物が付いてくるようです。

もちろん、都心の大学も手をこまねているわけではなく…
打った手というのが『クォーター制』の導入。とはいっても、アメフトのことじゃありませんよ!

「クォーター制」とは、4学期制こと。日本の大学では、1年を2学期に分けていることが多かったのですが、4学期に分ける方式が、ここ4年で急速に広がっています。
その理由の一つはグローバル化への対応。
日本は春に学年がスタートしますが、海外では秋スタートが主流。
日本から留学するにしても、海外から留学生を受け入れるにしても、今まではこのズレがネックになっていましたが、クォーター制ならクリアできるというのが理由です。
また4学期のうち3学期分は国内で履修して、残りの1学期分を短期留学に充てることも可能で、日本人の学生も留学しやすい環境を整えた、というわけ。

東大を始め、主要国立大学ではクォーター制をすでに導入。
早稲田、慶應でも始まっています。
わが明治大学でもこの4月から、全学部がクォーター制に移行して、さらに授業は1コマ90分から100分に変更されます。

実はクォーター制移行で、悲鳴をあげているのが講師たち。6週授業をして7週目試験、
(もしくは7週授業で8週目試験)という流れが年4回。
休講することもままならず、学生よりも忙しさが増しているそうです。

最後に…授業以外の話。「学生生活の充実」で志願者の心を掴む大学もあります。
その筆頭が早稲田大学。

学内に「リフレッシュスタジオ」と名付けたフィットネススタジオをオープン。
授業の合間に、「ヨガ」や「ピラティス」など、専門のインストラクターについて、シェイプアップが出来るという仕組み。なんと、年間1,500円しかかからない。
さらに早稲田は、学外におととし、「早稲田小劇場どらま館」という劇場をあらたにオープンさせ、早稲田演劇の伝統を下支えしています。

専修大学は学生の朝食に力を入れていて、1年中、学食で100円で「朝食」を提供。
イベント的に「100円朝食」を行っている大学は多いのですが、年中というのが他と違うところです。

少子化時代の志願者獲得は、「都心回帰」から始まって、『留学生獲得』『カリキュラム改革』『施設充実』『学生生活サービス』など、多岐にわたっています。
しかしどれが功を奏すかはわからない。
それだけに、どの大学も多角的に取り組まざるを得ない状況となっています。

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1月17日(火) 高嶋ひでたけのあさラジ!三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より

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