今年も残すところ2週間を切りました。
年が明ければ、箱根駅伝、大学ラグビー準決勝・決勝と、年末年始は大学スポーツを目にすることが多い訳ですが…
箱根駅伝と言えば、青山学院が2連覇中。
今年の正月は1区から一度も首位を譲らず完全優勝したわけでして、青山学院とユニフォーム契約している「アディダス」のあのマークは何時間もテレビ画面に映り続け、視聴率30%、12時間以上放送ということで、大変な宣伝効果となったわけです。
他のスポーツメーカーにしてみたら、大層悔しかったことでしょう。
しかし今年、そのライバルスポーツメーカーは、他の大学との間に大きな契約を成立させました。
「アシックスが早稲田大学と」「アンダーアーマーが関東学院と筑波大学と」
どちらも、大学の数々の部活を丸ごとひっくるめて、包括的なパートナー契約を果たしたのです。
ゆえに、今年は「スポーツメーカーと大学の包括的契約元年」となった、と言われています。
では、スポーツメーカーが大学を抱え込むことでどんなメリットがあるのか?
大学にとってはどんな思惑があるのか?を探っていきましょう。
まずは、どんな契約なのかを見ますと…
大学と初めて包括的な契約を結んだアシックスは、早稲田大学が決めた5つの「強化指定部」、つまり野球部、ラグビー部、男女のサッカー部、男女のテニス部、陸上部の総勢540名のすべての学生に、頭のてっぺんからつま先まで、ウェアを提供しています。
ウェアといっても、いろいろあります。ユニフォームにトレーニングウェア、インナーにシューズに小物。スポーツは非常におカネがかかるわけですが、これらが提供されることは学生の負担が減り、大学側には大変ありがたい。
これだけではありません。
アシックスはこの9月、キャンパスに直営店を設けて、野球やサッカー、ラグビーなど主要な体育会のレプリカユニホームや、Tシャツなど早大オリジナル商品の販売を始めました。
早稲田のイメージカラー、エンジ色を基調としていて、胸にはWASEDAとアシックスのダブルネーム。普段使いでも着られるデザインなので、5万5千人の在学生が着てくれる可能性が高い。
もっと言えば、その後ろには、60万人のOBOGがいます。六大学野球、箱根駅伝などの応援の際、彼らが着たくなるウェアがなかなかなかったことを考えますと60万人という客はアシックスにとっても大変魅力的な数です。
ただし、アシックス側が売り上げを丸取りするのではなくて、収益の一部は、大学に還元して体育会の強化費として当ててもらう。
こうすることで、少子化の時代、大学の予算としても助かるばかりか、この強化費で大学スポーツが強くなれば注目度が増し、メーカーも大学もさらに経営状態が良くなるという思惑があります。
一方で、巨人軍とユニフォーム契約していることで名を上げた、アンダーアーマーは今年、関東学院大学と5年契約。
大半の運動部のユニホームが、スクールカラーのオリーブグリーンのデザインで統一されています。
注目すべきなのは、「こども園」から「大学」まで、全体で14,000人が所属する学校グループ丸ごとパートナーシップ契約を結んだこと。ウェアだけではなく、大学スポーツを産業化して、その収益を施設や研究開発、そして教授の給与を増額して意欲の高い教授や学生を集めるなど、好循環を生み出すプロジェクトとなっています。
アンダーアーマーは、筑波大学とも同様の契約を結んで、先月発表しましたが、国立大学でこのような大学スポーツビジネスに乗り出したのは初ということになります。
さて、スポーツメーカーがこのような「大学丸ごと契約」に乗り出したのはどのような経緯があるのか?
アシックスは、これまえ高橋尚子や有森裕子、野口みずきなど女子マラソン選手や、ダルビッシュや大谷と“用具契約”。陸上の桐生選手や卓球の石川佳純選手ともシューズ契約。
こうした有名スポーツ選手と契約してきましたが、2020年東京オリンピックの公式スポンサーになって、アマチュアのうちから選手を育てていかなければならない使命があると判断。
なかでも早稲田大学は大学スポーツ界をリードしているばかりか、リオオリンピックでは大学トップの24名の参加選手を輩出しています。早稲田の東京オリンピックの出場選手目標数は32名。これに貢献したい、というのがアシックスの願いでもあります。
また、大学アスリートから意見を聞いたうえで、どんなウェアが使いやすいのか、運動能力が高まるのか、「製品の共同研究開発」というメリットもあります。さらには、来年目標で、大学生を職業体験させる「インターンシップ」もスタート。人材育成にも一役買おうという狙いです。
アシックスも、アンダーアーマーも、こうした大型包括的契約の裏にはモデルケースがあると言います。それは「アメリカのような大学スポーツのビジネス化」が目標ということ。
アメリカの大学は早くからスポーツにビジネスを取り入れ、それをマネタイズ=日本語で“収益化”しています。大学のウェアが飛ぶように売れ、大学がスポーツ施設で試合などのイベントを主催。たとえばオハイオ州立大学は10万人規模のスタジアムを持っていて、フットボールの試合前は街中がざわつくほど地域に根差しています。
そのためには、メーカーのノウハウと大学が組んで、プロスポーツに匹敵する人気と収入を上げる必要がある。先は長いと思いますが、今年の包括的契約はまずははじめの第一歩と言えます。
今のところ、スポーツメーカーと大学の思惑が一致しているこの「包括的契約」。
アシックスなどのメーカーには「うちとも契約していほしい」と大学からオファーがひっきりなしに入っていると言います。
大学スポーツのビジネス化がスポーツメーカーによってどう展開されていくのか、来年以降も注目が集まります。
12月20日(火) 高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より