ニコンが伝える植村直己の息づかい【ひろたみゆ紀・空を仰いで】

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ものづくり日本を代表するものの一つにカメラがあります。特に一眼レフカメラなどレンズ交換式のカメラ市場は、なんと日本の会社が世界の8割弱を占めるといわれています。そのうちの一社がニコン。

ベトナム戦争時、戦場でカメラマンが被弾するも胸に下げていたニコンFのボディーが銃弾を受け止めてくれたおかげで一命を取り留めたとか…朝鮮戦争時、極寒の中でシャッターが切れなくなるカメラが続出する中、ニコンのカメラは動き続けたなど…「ニコン神話」も有名ですよね。

写真と展示物1(w680)

そんなニコンは今年、創立100周年。その第一弾の企画展として、品川にあるニコンミュージアムで『植村直己 極地の撮影術』が開かれています。

植村直己さんは言わずと知れた日本を代表する冒険家。
日本人初のエベレスト登頂、世界初の五大陸最高峰登頂、犬ぞり単独走行での北極点到達…など数々の功績を残しています。その植村さんが、冒険の最中、アラスカのマッキンリー山中で消息を絶ったのは1984年2月のことでした。

ニコンのカメラとともに冒険を続けた植村さんの偉業と写真技術の素晴らしさを知ってもらおうと企画されたのが『植村直己 極地の撮影術』です。

写真と展示物2(w680)

写真集やテレビ番組などで見る植村さんの写真…青空を背景に極地到達の日の丸をにこやかに振る笑顔や、ソリを引く犬たちとの無邪気な戯れのやすらぎの表情など、とても素晴らしい写真たち。
もちろんカメラマンが撮影したものもありますが、実は、驚いたことに植村さんがセルフタイマーで自撮りしたものが多いのです。
今でこそ、カメラは全自動で露出やシャッタースピードなどを調整してくれますが、30年以上も前のカメラは全て自分で設定しなければなりません。
極地の光の量や、雪や氷の白さなど、写真を撮るのはプロでも本当に大変なこと。ましてや、シャッターを切ることさえも侭ならない極寒です。
そんな中で、構図も一瞬の表情も的確に捉えた植村さんは、本当に素晴らしい写真家でもあったのです。

植村さん防寒着(w680)

植村さんが着用していた防寒着

露出計コンパスなど(w680)

露出計コンパスなど

犬ぞり

犬ぞり

会場には「犬ぞり単独行による北極点到達」「犬ぞりによるグリーンランド単独縦断」で植村さんが撮影した作品を中心に約20点。そして北極点に掲げた日の丸、100キロもある犬ぞり・オーロラ号、毛皮の防寒服や露出計、無線機など冒険に使われた装備品も20点程が展示されています。

その中でやはり目を引くのはカメラ!植村さんの冒険のためにニコンが開発した一眼レフカメラ「ニコン F2 チタンウエムラスペシャル」です。

愛用カメラ

植村さんが愛用されていたカメラ

それまで冒険時に使われていたカメラやレンズは、極寒と犬ぞりの強烈な振動で故障してしまったため、1978年の北極圏犬ぞり単独走破の記録用として、ニコンが依頼を受けて作られました。
マイナス50℃の状況下で耐久試験を繰り返し開発。本体の素材は金属で一番軽くて堅いチタン合金を使用しています。外側にチタンが使われたのは初めてで、このモデルをベースに報道用のF2チタンが作られたと言われています。このカメラは世界にたった3台しかないそうです。
今、こちらに展示されているものは兵庫県豊岡市の植村直己冒険館のもの。そして東京都板橋区の植村冒険館に1台。残りは…植村さんと共に今もマッキンリーのどこかに眠っているのです。

頑丈に作られたカメラですが、ボコボコに凹んだレンズの周りが、冒険の凄まじさを物語っています。
極地の厳しさの中でも垣間みられる犬たちとのひとときの安らぎやお茶目な表情など、植村直己という冒険家の軌跡を是非ご堪能下さい。

ニコン創立100周年記念企画展『植村直己 極地の撮影術』
東京都港区港南2-15-3 品川インターシティC棟 ニコンミュージアム
展示期間:2017年1月5日(木)~4月1日(土)まで
開館時間:10:00~18:00
休館日:日曜、祝日
入館料:無料

レポート:ひろたみゆ紀

ひろたみゆ紀,空を仰いで


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