日本アニメ業界絶好調!それでも厳しい制作現場【ひでたけのやじうま好奇心】

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映画雑誌「キネマ旬報」が選ぶ去年の日本映画1位に輝いたアニメ映画「この世界の片隅に」現在、興行収益13億円を突破!
ちなみに「この世界の片隅に」の製作費は、およそ4億円ですが、この映画の成功秘話で必ず語られるのが「クラウドファンディング」の存在。

「クラウドファンディング」とはインターネットで出資者を募るシステムのことですが、これまでに2回行われ、1回目は製作費用で出資者3,374人39,121,920円、2回目は海外上映のためのスタッフの渡航滞在費に対して出資者3,319人(2017年1月24日午前8時現在)で31,838,400円と、これまでに合計5,900万円を集めました。

見返りとして、1回目に10,800円(税込)以上出資した人は映画の最後、スタッフロールに名前が掲載されていました。
「この世界の片隅に」プロデュサーいわく、この「クラウドファンディング」で出資者を募った理由は製作費を集めるというよりは、各企業へ出資をお願いする時、「クラウドファンディング」で、これだけ人気ですよ!とアピールするためだったと、説明しています。

ちなみに、現在興行収益230億円を突破した「君の名は」の製作費は非公開ですが、専門家によると、およそ7億円程度とのこと。
宮崎駿さんのジブリ作品がおよそ20億円ですので、「君の名は」いい儲けになっているのではないでしょうか。

そこで、けさのやじうま好奇心は、今や日本の最高のエンターテイメント「アニメ」を「お金」の視点で見ていきます。

そもそも「日本のアニメ業界」どれくらい儲かっているのか?
去年の9月に一般社団法人日本動画協会が発表した「アニメ産業レポート」によると2015年度のアニメ産業市場は1兆8,255億円で、前年比12%増。
この数字は2015年度なので、去年公開された「君の名は」も「この世界の片隅に」も、入っていない。
ちなみに「君の名は」は、中国での興行収益もすでに95億円を突破中で、2016年度の日本アニメの市場規模は伸びると予想されています。

アニメ産業レポート2016

産業統計の調査・発表 | 日本動画協会  (アニメ産業レポート2016サマリー(日本語版)1.1より)

しかしその一方で、問題点もあります。
ことしの1月から放送・配信されている新作テレビアニメはおよそ40本。
ちなみに去年1年間の新作テレビアニメの本数は、およそ220本。
20年前の1997年は、およそ80本。一番多かったのは2006年で279本。
2000年以降、スカパーなどのCSのアニメチャンネル等の普及で、それまで地上波だけの放送だったアニメがCSでも放送されるようになり、またアニメの制作の方法が、「セル画」から「パソコン」での作業に変わったため1作品にかかる時間が短縮され一気、に作品数が増加したそうです。

その後、作品の質向上のため、作品数を減少させようとする動きがあり2010年には、およそ年間100本まで減りましたが、最近の「動画配信サービス」が増えたことで、あっという間に、また200本を超える作品数になりました。

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GO WITH STORY Japan-film-anime-Anno-Miyazaki,INTERVIEW by Alastair HIMMER Japanese animator, film director and actor Hideaki Anno answers a question during his interview with Agence France-Presse at a Tokyo hotel on October 26, 2014. AFP PHOTO / TOSHIFUMI KITAMURA 写真提供:時事通信

そんな折、シンゴジラやエヴァンゲリオンなどでおなじみの、あの庵野秀明監督の発言が物議を醸した。では庵野さん何と言ったのか?

「日本のアニメは、あと5年で崩壊する」

この発言の反響が大きすぎたため、庵野さんは後日改めて「5年というのはあくまでも例え」と謝罪。
しかし「それだけ日本のアニメ業界の制作現場は厳しい!というのを、知ってほしかった」と改めてアニメ業界の現状について改革を促しました。

これはどういうことか?

日本アニメーター・演出協会が実施した「アニメーション制作者実態調査報告書2015」によると、
アニメ制作者の、年間収入は平均332.8万円。(※2013年の年間収入(税込)を尋ねたアンケート結果)
この数字だけ見ると、厳しいとは言えませんが、しかしアニメというのは、いろいろな役割分担で成り立っています。

例えば「監督」の平均年収は648万円。
「キャラクターデザイン」担当は510万円。
「原画」担当は281万円。
一番給料が安いのは「動画」担当で111万円。

アニメの世界に入って最初にやる仕事が、この「動画」制作だそうです。
1日の平均労働時間は、およそ11時間~13時間。
単純計算で、時給およそ370円。動画担当の人は、ほとんどがフリーランスで、喰っていけず、辞めてしまう人がほとんどで、当然、アニメクリエーターは「経験」が必要な仕事ゆえ、人材が育っていないそうです。

日本にあるアニメ制作会社は、およそ600社。
帝国データバンクは147社を対象に実態調査を行いました。
全体で見ると、147社の平均収入額は10億1千万円。2年連続で増収。
ただし日本で一番アニメが作られた2006年と比較するとおよそ4割の減少。
減少の一番の原因は、アニメのビジネスモデルの変化だと専門家は言います。

1990年代や2000年代、テレビアニメは、放送で十分な利益を得られなくても、DVDやBlu-rayの売り上げで利益を得るというビジネスモデルで成り立っていたが、それが今は成り立たちません。
すぐにインターネットに動画が配信されてしまうので、DVDやBlu-rayを購入するアニメファンは大幅に減少しています。

ちなみに現在のアニメの主なビジネスモデルは、パチンコやSNSのゲームの2次使用料と、中国をはじめとする海外への配信だそうです。

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アニメ映画「君の名は。」の公開を記念したイベントで、開場を待つ大勢の来場者=2016年11月22日、北京の中国伝媒大 写真提供:共同通信社

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1月23日(月) 高嶋ひでたけのあさラジ!三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より

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