企業の経営は“守る”も“攻める”も『広報』が命!【ひでたけのやじうま好奇心】

By -  公開:  更新:

企業の経営において、今ほど「広報」が大切な時代はありません。
製品をアピールするのも広報、不祥事など負の記者会見を取り仕切るのも広報。
やり方ひとつで、大きくプラスにも、大きくマイナスにも働く。
ゆえに企業は今、有能な“広報パーソン”を育てるのが必須となっています。

しかし、他の業務と違って、これまでのノウハウがあまり生きない。
会社の広報部で培ってきたモノや、先輩からの教えなどがすぐに古くなる。
そんな日々変化し続けている広報の仕事を、当の広報部はどうやって刷新しているのか?

170a0877e3fd8bc746c0cd0fab083ca1_s(w680)

様々な企業に聞きますと・・・
「時代の風を読む」ために、多くが「広報セミナー」に参加しています。
多くの会社の広報部が購読している、広報のノウハウや時代の問題点の特集が定評ある雑誌『月刊 広報会議』。この雑誌が、様々な広報セミナーを開催していて、参加する広報関係者は年間3,600人。3年前の1.7倍の盛況ぶりとなっています。
ほとんどの広報部は、だいたい1人から10人ほどの部、という規模ですから、1企業から2人参加したとして、のべ1,800社がセミナーで勉強していることになります。

91lIJbewCCL(w680)

さらに付け加えますと、セミナーには企業ばかりでなく、自治体や公益法人、病院、大学、弁護士など、あらゆる業態が学びに来ています。では、そこでは一体、何が教えられているのか?!

「広報の仕事」には大きく3本の柱があるのですが、あなたが一番先に思い浮かぶことは何でしょうか?!
おそらく、「自社の製品やサービスなどのアピール」かと思います。

確かに、広報の仕事一つ目は、こうした「企業の売り込み」。
メディアに向けて、『プレスリリース』という説明書を書いて、「こんな画期的な製品が出来た」「このサービスを開始する」とアピール。これらをマスメディアで取り上げてもらえれば、売れるかもしれない。

20170125【LF発表資料:ラジオクラウドで田所あずさのANNモバイルスタート】(w680-5)

ニッポン放送 プレスリリース(例)

ただし、マスメディアには多くのプレスリリースがFAXされたり、配信されたりするわけですから、より目立って、取り上げやすくする工夫が必要です。

そのポイントとは「1枚でまとめて」「平易な言葉で」「わかりやすいキーワードで」「ビジュアルも入れて」。
『プレスリリース』セミナーではこうした作り方を勉強していますが、
いま最も注意すべきなのは、「プレスリリースが一般の人たちにも見られることを考慮する」ということ。

例えば、あなたが「航空券の予約をしたい」と思って航空会社のHPを覗いたとすると、その下の方に『プレスリリース』という項目を発見することになるでしょう。
そこには、「こんな新たな路線が!」とか「こんな機内食が」とか「こんな企業とコラボレーション」などといった、話題がいろいろと文章で発表されているのです。
一般のユーザーが“このプレスリリースの内容が素晴らしい!”と思えば、“イイね”がついて拡散されます。メディアを使わなくても広がる、という新たな可能性だと言えます。

ところが、ちょっと突っ込みドコロがあれば…たちまち炎上、ということになってしまう。そうした一般ユーザーの突っ込みを避けるあまり、固すぎる表現だと「抽象的」と評される。迎合した柔らかすぎる表現だと「ぬるい」と評される。ですから、今まで以上に、内容・言葉遣いを熟考しなくてはいけません。

プレスリリースと合わせて、もう一つ広報からの「発信」の新たな可能性としてSNSがあります。「SNS=ツイッターやフェイスブックの効果的利用法」のセミナーは、非常にニーズと人気があります。

今のトレンドは「軟式(なんしき)SNS」。
企業の公式ツイッターや公式フェイスブックでありながら、発言が実に柔らかい。
もちろん、自社の製品やサービスの話もしているのですが、
大半は「今夜は月がキレイ!」とか「昼食は○○を食べて美味しかった!」などという、“ブログかよ!”と言いたくなる、広報部員の個人アカウントの様な内容。

twitter-1

大人のおじさんから見れば、どうだろうと思えるような内容でも、ネットユーザーには許され、親近感があるのでむしろファンが付いてくる場合も多い。よって、その企業が不祥事などを起こしても、“応援してあげよう”と、結果的にバッシングが少なくて済むこともあります。ただし、これは結果論、です。セミナーでも「いつも応援されるわけではない」と釘を刺しています。

91YmlduIpYL(w680)

広報会議2017年1月号[2017年版 危機管理広報マニュアル] Amazon より

多様化する広報の仕事3本柱、続いては「危機管理広報」。
広報セミナーでは事件発覚から、会見後までを、企業側とマスコミ側に分かれて実演しながら、その方法を身に付けていきます。

危機管理広報の一般的な流れを「月刊 広報会議」編集部に伺いますと…たとえば、「パワハラを受けた」という社員がSNS上に告発したとします。

この問題が発覚した後、“3時間以内”が、分かれ目となります。
3時間で対策本部を設置し、情報収集、整理を一気に行うのが基本です。~短い!
当然、SNS上では告発が拡散していますから、こうしたネット上の情報をウォッチしているニュースサイトに見つかってしまい、ニュースとして配信される。これを見た大手メディアが飛びついて、問題の企業に電話が入る。殺到するマスコミに対して、対応するのが次の仕事。

最初の関門「電話対応」の際のチェックリストには、

「言えないことは言えない、とはっきり言い、その理由を説明する」
「優先すべきは被害者対応、という姿勢を崩さない」。

電話の一方で、発表用リリースを作成しますが、作成時間は30分。

「資料冒頭でまず謝罪」
「時系列で説明」
「原因」を書き、一番大切なのは「応急措置を記載すること」。
さらには、「二度と起きないように再発防止策を早急に策定する」と文言を記載。

今回のパワハラ問題の場合、企業が「プライバシーの問題でお答えできません」と言いがちなのだが、広報が開示しようとしまいと、結局自主取材によって報じられる。
よって、企業も被害者の人柄や働きぶりといった「ヒトとなり」を開示し、社員の受けた被害が企業にとっても大きな損失だったのかを伝えるべき、とされるのです。
果たして、その場になると出来るのかどうなのか疑問ですが…

そしてパワハラ問題発覚から半日後、遅くとも12時間後までに記者会見。
「被害に遭われた方への企業の姿勢」が目的。最もダメなのが「逃げる」「隠す」「嘘をつく」。記者会見の際に、もっともこの3つが出やすい。

そして、意外に大切なのが記者会見後。
広報は、会見した幹部たちの言い間違いをフォローしたり、さらなる質問に対応したりと、場合によっては二次的記者会見を行う。こうすることで、会見当日と翌日の朝刊は明らかに違ってくるそうです。
そして、記者からの問い合わせに対応するため、配信記事が出尽くすまで会社に留まるのが原則。
さらには、こうした記事はどんな記事でも社内関係者に配布する。

こうして、やることは言い切れないほどあるのですが、こうしたシミュレーションを受けているかどうかで、本番は大きく変わってくるはずです。

社内報-2

ニッポン放送 社内報 『izumi』

広報の仕事として、今、重要度が増していることで注目されていることがもう一つあります。それは「社内広報」という仕事です。

今まで説明したのは、対外的な広報活動でしたが、多くの会社が抱える悩み「社員が自分の会社に満足していない」を解決するのが、『社内広報』。簡単に言えば、「社内報」。
いまでは、印刷代を省くために「イントラネット」として、ネット上で社内情報が見られるようになっている会社が多い。そこに掲載されるのは「社長からのメッセージ」や「社内交流イベント」「表彰」のお知らせなど、士気を高める様々な記事。
「トップが何を考えているのかわからない」と思う社員は多く、企業の考え方を隅々まで届けるために、『社内広報』は大きな役割を果たしています。

…とまあ、広報の仕事をいろいろと紹介してきましたが、
一番大切だとされるのが、『広報はトップの分身である』という心得。
トップに代わって、社会と大きくつながるのが広報、というわけで、今までのイメージのように決してお気楽ではいかなくなっています。その分、やりがいも大きい。

w680

社会情報大学院大学 HPより

こうした広報の仕事を極めようと、この春、高田馬場に日本で初めての「広報の大学院」、『社会情報大学院大学』が開学します。

募集は40名。2年間で、会社で働きながら通えることを目指し、平日の夜と土曜日に授業や研究を行います。

すでに前期の合格者が発表されていますが、ほとんどが、大手から中堅規模の企業の広報に関わる人たち。
これまで広報がなかった中小企業や、社長室の秘書、総務部門の人、新潟など地方の会社の人もいます。ちなみに女性6割。

面接重視で、後期の試験もまだ残っているということで、我こそはいう企業をよりよくする広報パーソンを目指す人は、学んでみるのもいいかもしれません。

radiko_time_0215

2月7日(火) 高嶋ひでたけのあさラジ!三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より

Page top