さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、2月11日から公開となる『たかが世界の終わり』を掘り起こします。
カンヌ映画祭グランプリ受賞作品は、普遍的な家族の物語
自らに死期が迫っていることを家族に伝えるため、12年ぶりに故郷に帰ってきた34歳の作家ルイ。
母はルイの好きな料理を用意し、妹のシュザンヌは慣れないオシャレをして、そわそわしながら彼の帰りを待っていた。そんな二人とは対照的なのが、兄のアントワーヌ。
そっけない態度でルイを迎えるアントワーヌの妻カトリーヌは、ルイとは初対面だった。オードブル、メインとぎこちない会話を続けながらの食事に、ルイは戸惑いを感じながらも、デザートの頃には打ち明けようと決意。
しかしアントワーヌの激しい言葉を皮切りに、それぞれの胸の内にあった感情が噴出する…。
劇作家ジャン=リュック・ラガルスの舞台劇「まさに世界の終わり」を、グザヴィエ・ドラン監督が撮りあげた人間ドラマ『たかが世界の終わり』。
本作は、第69回カンヌ国際映画祭にてグランプリを受賞。
デビュー以来全作品がカンヌ映画祭やベネチア映画祭に出品され、一躍時代の寵児となったグザヴィエ・ドラン監督。
その美しい容姿からルイ・ヴィトンのアンバサダーとして広告に起用されるなど、映画界の枠を超え、存在自体が新時代のカルチャーアイコンとして支持を得ている存在です。
そんな才能あふれるドラン監督のもとに集まったのは、ギャスパー・ウリエル、レア・セドゥ、ヴァンサン・カッセル、マリオン・コティヤール、ナタリー・バイといったフランス映画界の宝石とも呼べる俳優たち。
彼らが“生きる”12年ぶりに再会した家族の時間は濃密な緊張感に包まれており、観る側にも彼らが抱える心の痛みがヒリヒリと伝わってきます。
本作から浮かび上がってくるのは、現代のディスコミュニケーションを象徴するかのような家族の姿。
相手を大切に想っているからこそ、傷つけ、憎み、それでも愛し合う。
この揺れ動く心情を巧みに演出したグザヴィエ・ドラン監督、恐るべし才能の持ち主です。
人間の感情とは喜怒哀楽だけでは表現しきれない複雑なものだと、つくづく思い知らされました。
たかが世界の終わり
2017年2月11日から新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー
監督・脚本:グザヴィエ・ドラン
出演:ギャスパー・ウリエル、ヴァンサン・カッセル、レア・セドゥ、マリオン・コティヤール、ナタリー・バイ
©Shayne Laverdièr
公式サイト http://gaga.ne.jp/sekainoowari-xdolan/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/