つみきみほ×田島令子、温かないい母娘です『話す犬を、放す』【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第167回】

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さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は、3月11日から公開の『話す犬を、放す』を掘り起こします。

明るく楽しく、リリカルな人間讃歌

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43歳の下村レイコは、俳優スクールで教えながら芝居を続ける売れない女優。
そんな彼女の元に、学生時代の劇団仲間でいまは人気俳優となった三田大輔から、映画出演の仕事が舞い込む。
突然のチャンスに舞い上がるレイコだが、母のユキエから電話が。
昔、飼っていた愛犬チロが時々家に帰ってきて困惑していると話すユキエだが、実はそれはレビー小体型認知症(DLB)の発症によるものだった。
女優として成功する最後のチャンスを掴むべく、レイコは映画の撮影と母との生活を両立させようと悪戦苦闘。
そんな折、ユキエがチロにまつわる意外なことを告白する…。

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レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症とともに「三大認知症」と言われています。
実際にいない人が見える幻視症状やパーキンソン病のような症状が見られるのが特徴で、本作の熊谷まどか監督は実母がレビー小体型認知症と診断されたことがきっかけで本作を制作、商業映画デビューを飾りました。

母娘を演じるのは、つみきみほと田島令子。
病気を患う母と自分の人生との間で揺れ動く娘と、幻視に悩みながらも明るく生きようとする母。
二人が過ごす時間は思うようにいかないコトも沢山あるけど、愛おしくも優しい。
本作は闘病モノではなく、母と娘のつながりを通じて、自分と向き合うことの大切さや楽しく生きることをコミカルに描き出しているのです。

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さて、もうひとつ重要なキャラクターなのが愛犬のチロ。
究極のペットブームである昨今、映画やドラマに登場する動物と言えば、いかにも血統が良さそうな見目麗しいコが多いのですが…。
このチロちゃんは「あぁ、昔、実家に(あるいはご近所に)こういうワンちゃんいたよね〜」という、いかにも庶民的な風情がなんとも愛らしい雑種犬。
これまでにも何度か映像出演はあるものの、ちゃんと名前がある“役”を演じるのは初めてなんだとか。

演じ手は、めんまちゃんという12歳の女の子。
人間で言うと60歳は超えているから、女の子と呼ぶのは失礼かもしれませんね。
彼女の存在は、映画に大きな癒しを与えており、遅咲きの助演女優(?!)としても注目の存在です。

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第13回SKIPシティ国際映画祭2016のオープニング作品として上映された本作は、長編映画製作のチャンスを与える同映画祭のプロジェクトによって製作されました。
若手映像クリエイターの登竜門として、これまで多くの才能が同映画祭をきっかけに世界に羽ばたいています。
映画祭が発掘した “才能” とその作品が、劇場公開という形で多くの人に届けられるのは、とても意義深く感じます。

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話す犬を、放す
2017年3月11日から有楽町スバル座ほか全国順次公開
監督・脚本:熊谷まどか
出演:つみきみほ、田島令子、眞島秀和、木乃江祐希 ほか
©2016 埼玉県/SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ
公式サイト http://hanasuinu.com/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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