“さくら博士”に訊く!桜にまつわる日本とイギリスの心温まる話とは?【ひでたけのやじうま好奇心】

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今週末は、お花見シーズン。
今日は、“さくら博士”と呼ばれている桜の専門家、富山県中央植物園の大原隆明(おおはら・たかあき)さんに、桜にまつわるちょっと意外なお話をいろいろとお伺いします。

先週、東京でもソメイヨシノの「開花宣言」が出ましたが…
ニッポンの代表的な桜といえば、やはり、「ソメイヨシノ」ですよね。
たくさん植えられたのには、理由があるのでしょうか?

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ソメイヨシノは1つ1つの花が比較的大きく、かつ花つきが非常に良いので、樹全体が花に包まれるような豪華さがあります。さらに、こんもりと傘のような美しい樹形になり、成長も早いなど、園芸的に優れた点が多いので一気に普及したと考えられます。

また、江戸時代以前に花見の対象の中心であったヤマザクラは種子で増やされたので、株ごとに花の様子や時期が異なっていますが、ソメイヨシノは接木により増やされるクローンなので全株が非常に均質で一気に咲き揃います。
なお、ソメイヨシノが誕生したのは1700年代の江戸中期といわれますが、全国に普及したのは明治時代中期以降です。これは日清、日露の戦勝記念として植えられたものがきっかけといわれています。

実は「野生の桜」というのも、結構あるのだそうですね?
(※東京ですと、どういう場所で、観賞することができますか?)

大原)13種の(野生の)サクラが日本全国に自生しています。イシヅチザクラのように分布がごく限られたものから、ヤマザクラやカスミザクラのように分布が広いものまで多種多様です。
じつは東京都は野生種が多く見られる都道府県のひとつで、10種(ヤマザクラ、オオヤマザクラ、カスミザクラ、オオシマザクラ(野生化)、マメザクラ、タカネザクラ、チョウジザクラ、エドヒガン、ヤブザクラ、ホシザクラ)が分布します。
その大半は多摩地区の山地にみられるものですが、ちょっと街を離れた雑木林でもヤマザクラやオオシマザクラが自生しています。
八王子や町田の雑木林には、世界中でも東京・神奈川にしかないヤブザクラやホシザクラが自生し、ソメイヨシノがまだつぼみの3月中旬から花を楽しむことができます。

一般的には、ポカポカと暖かくなってくる3月~4月にかけて咲く桜ですが… 気温と桜の関係について、おもしろい話があるそうですね?

大原)サクラの開花時期は「ほぼ」温度によって決まります。ただし、冬が暖かいほど早く咲く、というわけではありません。
サクラの花芽は前年の夏にできてそのまま休眠していますが、休眠を打破するためにはある程度の寒い期間が必要で、休眠が打破されてスイッチが入ってしまえば、あとは暖かいほど早く咲くというプロセスになっています。
つまり、冬のなかばまでが寒く、冬の後半から早春に気温が高い年は花が早く咲きます。なので、温暖化が進むと単純に早く咲くようになる、というわけではなく、むしろ花芽が動くスイッチが入るのが遅れるため、開花が遅れてしまうこともあります。

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いまのところ確実に温暖化による影響といいきれる状況ではありませんが、暖冬により桜前線が通常とは異なる動きをする年が増えている傾向はあります。
桜前線は四国南部か九州中部に上陸し徐々に北上するのが通常ですが、極端な暖冬の場合には南日本ではスイッチが入るのが遅れるため、より北方の関東や東海などの方が早く開花することもあります。

たとえば2007年は東京、2011年は静岡、2016年は名古屋と福岡に桜前線が上陸しています。また、2007年は八丈島では休眠打破スイッチがきれいに入らなかったため、だらだらと開花が続き、満開を観測できなかったという事態が起こっています。
今後、現在より温暖化が進行した場合には、桜前線は沖縄と同じように北から南へ、山から低地へと進みさらに一斉にきれいに咲くサクラらしい風情が楽しめなくなるかもしれません。

桜は日本人にとって特別な花というイメージですが…
現在のように桜の開花を気にしたり、花見をしたりする文化はいつごろからなのでしょうか?

大原)サクラの語源は、サ神(農耕神)のクラ(依り代)といわれ、冬の間深山にいた農耕神が春になって里山に降りてきたときにサクラに宿って花が咲くと考えられていたようです。
それを目安に山に入ってサクラの木の下で酒や歌、踊りをささげたのが花見の由来という説が強く、それを採用するなら、はるか古代よりに日本人はサクラの開花を気にして花見を行っていたといえます。

純粋にサクラの花を愛でるという行為も相当古くから行われていたと考えられ、少なくとも奈良時代の万葉集には山のサクラを愛でる歌はもちろん、越中国府(富山県)の邸内に植えられたサクラを詠んだ大伴家持の歌があることから、すでに1300年ほど前にはサクラを栽培して観賞することが行われていたと考えられます。

現在のような花見が庶民に普及したのは江戸時代からといわれ、特に8代将軍吉宗が隅田川や飛鳥山にサクラを植え、花見の環境を整えたことが大きく寄与したとされています。

我々一般人は、桜というと満開の時しか楽しみ方を知りませんが、咲いてない時の見どころがあれば、教えてください。

大原)サクラの種類、とくに野生種の種類を見分けるのは、意外かも知れませんが、花よりも葉を使うほうが分かりやすいのです。サクラの枝には、1年に何十cmも成長して葉芽がつく「長枝(ちょうし)」と、1cm以内しか成長せず花芽がつく「短枝(たんし)」がありますが、この短枝につく葉は形などの特徴が安定していて、この葉が1枚あれば種類を見分けることができます。
とくに、葉柄に生える毛、葉の裏面の色、縁のギザギザ(鋸歯:きょし)の形に注目するのが種類を見分けるポイントです。もし山でお気に入りのサクラをみつけて確実に種類が知りたいと思ったら、葉の時期にもういちど見に行って、葉を観察するとばっちりです。
じつはサクラはやたらに雑種ができることでも有名なのですが、葉を見ると「これは○○と△△の間にできたヤツだな」なんていうような、オタク心満載の推理ゲームも楽しめます。
あと、葉の時期の楽しみといえば、5月の若葉の時期にオススメしたい、「葉の塩漬けを作っての自家製桜餅作り」や、「紅葉観賞」でしょうか。山のサクラは結構きれいに紅葉するものが多く、秋の風情も楽しめます。

最近は訪日外国人の方も、桜を楽しまれたりするようですが…
海外で、日本人のように桜を観賞したりする文化ってあるのでしょうか?

大原)日本のようにサクラの木の下でどんちゃん騒ぎ、というようなお花見は海外ではないようです。
海外の代表的なサクラの名所としてはアメリカ・ワシントンD.C.にあるポトマック川がよく知られており、ここでは1935年から「全米桜まつり」が開催され、毎年70万人以上の人が集まるそうですが、木の下に座り込んでの飲食はないそうです。

この他にも、日本から友好の証しとして世界各地にサクラが寄贈され、あちこちに名所が誕生してきていると聞いています。
また、サクラ自体はヨーロッパでも人気が高く、公園や庭園に植えられています。
中でもイギリスはサクラ好きの国で、昔に日本から導入したサクラや、それを元に独自に育種した「オカメ」などの品種があちこちに植えられています。
一昨年の夏に渡英した時にも、植物園や公園はもちろん、ホテルや家庭の小さな庭や高速道路のサービスエリアまで、いたるところでサクラが見られたのが印象的でした。

イギリスで栽培されている中には、かつて日本から導入したものの、本家本元の日本では絶えてしまっているものもあります。その中で有名なものは「タイハク(太白)」という品種で、ジャガイモに挿した穂木が1932年にシベリア鉄道に乗って逆輸入され、日本でも復活したという逸話があります。

なんともロマンがありますね…。
シベリア鉄道に乗ってはるばる逆輸入された桜があるとは知りませんでした。
「さくら博士」富山県中央植物園の大原隆明さんにお話を伺いました!

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3月29日(水) 高嶋ひでたけのあさラジ!三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より

高嶋ひでたけのあさラジ!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00


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