勝負の世界の厳しさを、自ら示しているといえば、元関脇の豊ノ島でしょう。今場所3連敗後に2連勝。
昨日も、立ち合いでなりふり構わず張り差しから白星をもぎ取りました。
「相手の動きを止められるのなら、どんなことでもする。死にもの狂いです」
と言います。
「これまでは変なプライドがあった。だから、どうしても受け身になる。やはり相撲は攻めが大事だ」
と勝負に徹しています。
昨年の名古屋場所前のけいこで左アキレス腱を断裂。全休で十両へ陥落して、秋場所も全休を余儀なくされました。
一気に幕下となって、4場所目。天国から地獄、幕下では給料も出ません。
33歳という年齢からも当然、引退の2文字が見え隠れしました。ところが、今年1月31日、4歳年長で弟弟子の間垣親方(元小結、時天空)が、悪性リンパ腫で急逝。
「けんかみたいな、けいこをして2人で三役にあがった。相撲をとりたくてもとれない。その分まで頑張って、もう一度、関取に戻る」
と誓ったわけです。
優勝決定戦まで駒を進めた力士が、幕下へ陥落したのは04年の北勝力以来、2人目。
169センチの小兵ながら、最高位は東関脇で、三賞10回、4つの金星と優勝次点が5回もある実力者でした。
そんな過去の実績もあって、今場所も豊ノ島の取り組みがあれば、支度部屋には報道陣が足を運びます。
加えて、その囲み取材には、一門を超え、親方衆も首を突っ込んでくるといった具合です。
九重親方(元大関、千代大海)が、2勝目をあげた一番を、
「今日は素晴らしい相撲だった」。
さらに、荒磯親方(元幕内、玉飛鳥)は3連敗の直後、
「受け身で勝とうとしている。それでいいのか」
とカツを入れたそうです。そして、豊ノ島は、
「大関から陥落して、関脇のあんまり星が上がっていない、琴なんとかさんからも言われた」
と明かしました。
琴なんとかさんとは、琴奨菊のこと。中学生からのライバルで、同期入門の間柄だけに、放ってはおけない。
これも豊ノ島の人柄がそうさせているのです。
家族の応援もエネルギーの源です。豊ノ島よりも身長が高い、沙帆(すなほ)夫人は、
「顔から弱気がにじみ出ている。そんな顔を見たくはない」
とピシャリ。今日は取り組みがありません。が、こうなると、勝ち越しの条件、残り2戦2勝は絶対です。
5月23日(火) 高嶋ひでたけのあさラジ!「スポーツ人間模様」